第7話 グリーンオーク50匹相手に無双してみた!B-Tuberカイ、バズりまくり♪
第10階層にやってくると、そこはモンスターの間だった。
グリーンオークが10、20、30……ええっと、たぶん50匹以上いるみたいだ。
グリーンオークたちは突然現れたぼくに、石の槍を向けて今にも襲いかかろうとしていた。
「え、ちょ、ちょっと待って! えーっと、第10階層にきたらモンスターの間だったよ。グリーンオークたちがいっぱいいて……って、無理! これはさすがに実況無理っ!!」
B-Tuberになって10回目の冒険で、さすがに実況にも慣れたつもりだった。
でも、50匹相手にしながらマホメラにしゃべるのは難しい。
「ごめん、ちょっとだけ戦いに集中させてっ!」
ぼくは視聴者のみなさんにそう宣言しながら、ショートソードを構えた。
まずは【風刃】を使って、近くにいた5匹ほどのグリーンオークを吹き飛ばした。
グリーンオークは、オーク族の中では力は弱い方だけど、体力はけっこう高い。
【風刃】だけじゃやっつけるまではいかない。
どうしようかな。
【俊足】をつかって一体一体倒して……いや、ダメだ。
前に【俊足】をつかってコボルトの群れをやっつけたとき、マリアさんに言われたことがある。
『いやー、さすがに【俊足】を使うとこのマホメラじゃ追い切れないみたいっすよ』
うん、撮影できない方法を使ったらB-Tuber失格だよね。
そうしないと勝てないなら仕方がないけど、相手はしょせんグリーンオークだし……
……よし、決めた!
ぼくは【フレアソードダンス】を使った。
ちょっと時間がかかったけど、なんとかグリーンオーク50匹以上……たぶん、53匹やっつけた。
ぼくはマホメラに向き直る。
「みんなごめん。全然実況できなかったよ。いまの技は【フレアソードダンス】ってうんだ。【ソードダンス】を踊りながら、【炎】の魔法をまき散らすんだ。実はこれ、ぼくのお父さんのオリジナル技なんだ。技の名付けたのはお母さんなんだって」
実況しながら、今はどこにいるかも分からない両親のことを思い出してしまった。
ちょっぴりしんみりしそうになったけど、ダメダメ。
実況はあかるくいかないとね!
それに、今のぼくには視聴者の皆さんやプリラおねーさんやマリアさんもいるもん。
さびしくなんてないぞ!
「第10階層以降はモンスターの間……モンスターがものすごい数いる広間が出現することがあるんだ。今みたいにオーブでワープした直後に襲われることもあるから、ビックリしないで冷静に対処しないとね!」
ぼくはそう解説してから、グリーンオークが変化した魔石を拾い集めた。
さすがに第10階層のモンスターともなると、魔石の大きさもそれなりだ。
きっといい値段で売れると思う。
プリラおねーさんやマリアさんや、ふくふく亭の従業員さんたちに何かプレゼントを買えるかな?
石の槍も残っているけど、重たいし持って帰るのはちょっと無理だから、放置しておこうっと。
20日前の最初の配信以降、ぼくの動画の再生数は順調に伸びていた。
2本目の動画は第2階層でコボルトを10匹やっつけて、一晩で1000再生を記録した。
3本目、4本目と毎回1階層ずつ先に進むようにして、そのたびに再生数はどんどん増えていった。
3日前にUPした第9階層で宝箱から銀の盾を見つけた動画はついに5万再生を記録した。
5日前にチャンネル登録者数が1万を超えたし、収益もそこそこ上がっている。
登録者数1万を超えたら、B-Tuberとして一人前だってマリアさんが言っていた。
冒険だけじゃなくて、お勉強もしているよ。
プリラおねーさんに、独り立ちするならお勉強も必要だって言われたんだ。
文字の読み書きや算数、それにお買い物の仕方や一般常識なんかをふくふく亭の従業員達から習っている。
グリーンオークたちを倒した後、ぼくは第10階層を探索しながらモンスターをやっつけてまわった。
第10階層まで来ると、他の冒険者さんと出会うことはあんまりない。
モンスターもオーク族やブラックゴブリン、レインボースライムなんかが出てくるようになる。
第9階層までとは別物だ。
油断するわけにはいかない相手も多い。
「ふぅ。それじゃあそろそろ夕方だと思うし、撮影は終わりにするね」
ぼくはマホメラにそう宣言し【脱出】の魔法を使った。
ダンジョンから出たとき、すでに太陽は沈みかけていた。
(ちょっと遅くなっちゃったなぁ)
第10階層まで行って帰ってくると、さすがに時間がかかる。
この先は夕方までに帰るのは難しくなるかなぁ。
ぼくは急いでふくふく亭へ帰った。
「ただいまー」
すると、いつものようにプリラおねーさんが迎えてくれた。
「お帰りなさい、カイくん。キミにお客さんよ」
いつもと違ったのは、プリラおねーさんの横に女の子がいたこと。
僕より背丈が低いし、10歳くらいかな?
初めて見る顔だけど、だれだろう?
女の子は少し興奮した表情でぼくに言った。
「こんにちは! カイくんですよね?」
「うん、そうだけど、キミは?」
「私、イリエナっていいます。お願いします。私とコラボしてください!」
「こ、コラボ?」
勢いよく言ってきた女の子に、ぼくはドギマギすることしかできなかった。