第5話 冒険者たちに認められて
アグレットがギルドから追い出されたあと、ラッカさんがぼくに言った。
「さすがだなカイ」
「うん。ラッカさんありがとう」
「いやいや。アグレットのヤツには俺も常々ムカついていたからな」
「そうなんだ」
「動画を見て、お前なら手助けなんていらないと思ったが、やっぱりすごいな」
ラッカさんもぼくの動画を見てくれたんだ!
ぼくはラッカさんにたずねた。
「動画はどうだった?」
「すごかったぜ。マジでビックリしたよ」
「ホント?」
「おう。レッドスライムを一撃で倒したところなんて目を疑ったぜ。おめースゲーな」
「えへへ。あの時はレッドスライムを譲ってくれてありがとう」
「いや、俺たちは逃げ出しただけで、お前に譲ったつもりじゃなかったんだけどな」
逃げ出す? レッドスライム相手に?
ぼくはちょっとキョトンとしてしまった。
うーん、そんなに強い相手じゃなかったけど……
……早めに次の階層に行きたいから、ザコモンスターを相手をするのが面倒だったのかな?
「なんだよ、そのキョトン顔?」
「えーっと、ううん。なんでもないよ」
ぼくはそう言ってごまかした。
なんとなく、余計なことは言わない方が良い気がしたから。
そうこうしていると、他の冒険者達もざわざわとぼくの噂話を始めた。
「やっぱりあの動画のちびっ子か」
「なんだ、動画って? B-Tube?」
「そうそう、この子めちゃくちゃスゲーんだぜ。さっきの蹴りなんて本気じゃないだろ」
「ほら、この動画だよ」
「私、あこあれちゃう!」
うわぁ、うれしいな。
みんなぼくの動画を見てくれてるんだ。
なんか照れちゃうよ。
ちょっとした勇者みたいな扱いだ
……なんてちょっと調子に乗りすぎ?
うれしくて、もうアグレットのことはどうでもいいやって気分だ。
ひげもじゃのオジサン冒険者ぼくに言った。
「おうおう、天才ちびっ子、こっちにこいよ。一緒に飲もうぜ」
「え、えーっと……」
そんなことを言われて、ぼくもちょっと戸惑ってしまう。
するとプリラおねーさんがぼくをかばってくれた。
「ちょっと、子どもにお酒をすすめないでよ」
実はお酒はちょっぴり興味あるけどね。
すると、オジサン冒険者は「がーっはっは」と笑った。
「こりゃすまんかったな。だったらカイ、こっちの肉が美味いぞ」
たしかに美味しそうだけど……
「さっきふくふく亭でご飯を食べたばかりだから」
「そうか残念だ」
せっかくすすめてくれたのに申し訳ないかな。
「ごめんなさい」
「いやいや、気にするな。それより、カイ。俺たちのパーティにはいらないか?」
「え、ホントに?」
ちょっぴり驚いてしまった。
だって、あれだけ探してもぼくをパーティに入れてくれる人は、アグレットたちしかいなかったんだもん。
おもわず頷きそうになったけど……すぐに思い直した。
「うーん、ごめんなさい。しばらくはソロでB-Tuberとして頑張るつもりだから」
お父さんも言っていた。
男なら一度決めたことはやり抜けって。
ここでベテラン冒険者のパーティに入れてもらったら、ちょっと情けないもん。
オジサン冒険者は笑った。
「そりゃそうだ。強さを考えたら足手まといだよな」
言われてぼくはちょっとがっくり。
やっぱりそうだよなぁ。
ぼくの実力じゃは他のパーティに入ったら足手まといだよね。
そんなかんじで、しばらくの間冒険者のみんなにもみくちゃにされてたんだけど。
支部長のおじいちゃんが「コホン」と咳払いした。
「さて、そろそろワシの話を聞いてもらってもいいかのう?」
あ、いけない。
せっかく助けてくれた支部長のおじいちゃんを無視しちゃってた。
「カイくん。ちょっとだけわしの部屋に来てもらえんかの?」
「えーっと、どうして?」
「なに、ちょっとこのジジイとお話しようというだけじゃよ」
プリラおねーさんも小さくうなずいて言った。
「私は別の用事を済ましておくわ。ここで待ち合わせましょう」
「うん、わかった」
プリラおねーさんの用事はふくふく亭で燃料に使う魔石の購入らしい。
ぼくが持ち帰った魔石はそのままじゃ燃料にならない。
冒険者ギルドで加工された魔石が必要なのだ。
こうして、ぼくは支部長おじいちゃんのお部屋に行くことになった。