赤の道
ここがどこか分からない。
自分が誰かも分からない。
黒い光に包まれて、足元の赤い光を辿り進む。
どちらへ進めば良いのか想像できない。
だけど、なぜか、こちらが正しいと信じている。
この道の先に、私が行くべき場所が待っている。
「ここ・・・は、いったい?」
赤い光をの道を追いかけて辿り着いた先には、紅色の光を放っているにも関わらず、不思議なくらいに違和感が湧かない鳥居があった。
「いらっしゃい。」
うわぁっ!?
だ、誰?
全然気付かなかった。
「あっ、驚かせちゃったかい?
ようこそ、異杜へ。
君は、どうしてここに来たのか、知っている人なのかな?」
ここは、いと、と言うのか。
それよりも、どうしてここに来たのか、か。
「知らないし、分からない。
ただ、正しいと思った方向に来ただけ。」
「そうか。
君、名前は?」
「・・・分からない。」
「そうか。
じゃあ、歳は?
君はいくつかい?」
年齢か。
大人・・・ではないが、おそらく、子ども・・・でもない。
「・・・たぶん、じゅう・・・さん、くらいだ、と思う。」
「そうか。
それじゃあ、性別は?
君は男かい?
それとも、女かい?」
性別?
今どき、そんなことを聞かれることがあるのか?
私は・・・おそらく女だ。
「・・・女、だと思う。」
「そうか。
しかし、名前が分からないのは困るなあ。
んんー、それじゃあ、君が名前を思い出せるまでの間は、夕凪と呼ぼうか。
君はそれでも良いかい?」
夕凪・・・か。
悪くないな。
「はい。」
「ああ、私のことを皆はみこ、と呼ぶ。
夕凪もみこと呼ぶと良い。」
このひとは、みこさんというのか。
確かに、巫女っぽい格好だ。
みこさんは光沢のある白金色の髪を腰まで流した、とても綺麗なお姉さんだ。
「はい、分かりました。」
「夕凪、君はここ異杜に選ばれたんだ。
異杜へ導かれて、使命を与えられた。
だから、異杜へ辿り着けた。」
使命?
そんなものに覚えはないけど・・・。
「だけど、与えられた使命が分かるまでは、途方もないくらいの長い時間がかかる。
それまでは、異杜でゆっくりと過ごすと良い。
時間はいくらでもある。」
なるほど。
今の段階ではまだ、私に与えられた使命が何か、私には分からない、ということか。
「はい、分かりました。」
「そうだ、夕凪。
異杜の案内はいるかい?」
案内は・・・有るといいな。
「お願いします。」
「そうか。
それじゃあ、寧音、来てくれるかい?」
「はい、どうかされましたか?
みこ様。」
「寧音、この子は夕凪。
新しく異杜に来た子だよ。
夕凪に異杜を案内してくれ。
夕凪、この子は寧音。
君に異杜の案内をしてくれる。」
ねおと呼ばれたのは、綺麗な紺色の髪をハーフアップにした、私と同じくらいの歳の少女だ。
「夕凪・・・ですか。
私は寧音です。
よろしくお願いします。」
「夕凪です。
こちらこそ、よろしくお願いします。
ねおさん。」
「寧音でいいです。
夕凪、あなたも『異杜に導かれた者』、なのでしょう?
であれば、私とあなたは同格です。」
彼女を寧音と呼ぶべきなのは分かった。
でも、同格というのはどういうことだろう?
「夕凪、寧音。
それでは、またね。」
「はい。」
私が、瞬きをした一瞬の隙に、みこさんは消えてしまっていた。
「えっと、みこさんは、いったいどこへ・・・。」
すると突然、寧音の眉間に皺が寄った。
「みこ様。
みこ様と呼びなさい、夕凪。
みこ様は、とても偉い方なのよ。
私たちとは、違うの。」
寧音の声に怒気が混ざっている。
怒っているのは間違いない。
「ごめんなさい。
知らなかったんだ。
みこ様・・・だね。」
「そうよ。
気を付けなさい。」
もしかしなくても、さっき寧音が言っていた、格、という言葉の意味は、こういうことなのだろう。
しかし、みこ様はあの一瞬で、いったい、どこへ行ってしまったのだろうか。
不思議だ。
「早く、ついてきなさい。
置いて行くわよ。」
「あっ、待ってくれ。
今行くから。」
どうやら、のんびりと思考しているような時間は、今は無さそうだ。




