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8話 中等部と司書

 文字を書くための金属ペンと絵を描くための金属ペンの2本のペンを手に入れたことで、私の中に文化大革命が起こった!


 花壇の手入れと観察日記は毎日続けていた。だが金属ペンで書く文字は安定していて字の練習は早々に終了した。字の練習の観点が抜けると予習復習のペースが上がり、余った時間で絵を描くことになった。そして夕食を終えると読書三昧の生活。そんなとても穏やかな生活を2年過ごして私は無事に中等部生へと進級した。




 中等部に進級したということは学習内容は高等部のものになった。日課の花壇のお世話の消化が厳しくなってきた。そこでフィーネさんにも手のかからない花を植える方向を考えていることを相談した。フィーネさんはお屋敷の庭師に相談して季節毎にお勧めの花を教えてくれるとのこと。教えられた花ならば学校が休みの日に花壇の手入れをすれ程度で十分な花ばかりだそうだ。


 こうして時間の確保はできたものの、さらに問題が発覚!高等部の教科ではお金が必要な調合の授業が始まった。調合の授業ももちろん素材は学校が準備してくれるのだが、調合の自由研究の課題ではどうしても自分で素材を準備する必要が出てくる。思い返せば学生寮の高等部の先輩たちがあくせく写本のアルバイトをしていたのはこのためか!と思い知らされた。


 考えても考えても妙案は浮かばない……私は思い切って先生方に相談することにした。翌朝、フレデリカ先生に相談すると、お昼休みにお昼ご飯を食べながらお話ししましょうと時間をとってもらえた。


 昼休みにお弁当箱持参で教員室を訪れると、フレデリカ先生が手招きしてくれて会議室に招き入れてくれた。会議室にはメリル先生も来てくれていた。フレデリカ先生は3人分の紅茶を入れながら、「アグリさん、相談内容を説明してくれますか」と言われお金に困っていることを打ち明けた。



「私も写本のお仕事をいただくことはできませんか?」



 フレデリカ先生は「困ったことに写本のアルバイトは高等部の寮生と決まりがあるの……」と教えてくれた。



 3人で頭を抱えていたが、しばらくしてメリル先生にいいアイデアが浮かんだ。



「アグリさんは確か一般図書室には足しげく通っていたわよね!なら、一般図書室の司書の助手はどうかしら?」


「メリル先生、良いお考えです。図書室の大がかりな整理や大掃除の時に寮生にアルバイトを依頼した前例もあるので可能と思います!」とフレデリカ先生も賛同。



 メリル先生が学校長と司書担当の先生方に相談してみるとのことで、結果は放課後に教員室へ聞きに来て欲しいと言われ了解した……




 そして放課後、教員室に向かうまでもなく、フレデリカ先生が教室に結果を伝えにきてくれた。



「アグリさん、司書の助手の件は校長先生の許可が出たのですが、1点問題がありまして……」


「先生、問題とは?」


「実はアルバイト代が写本に比べてとても安いのです……」


「先生、そのアルバイト代で調合の自由研究の素材は買えそうですか?」


「はい、素材程度なら十分購入可能ですよ」


「それなら何の問題もありません。司書の助手をぜひやらせてください」



 私の意志を確認して、早速、フレデリカ先生と私は一般図書室へ向かい、今日の司書担当のマルタ先生に挨拶をした。



「アグリさんならしょっちゅう図書室に来てくれていたし、本を大切に扱ってくれていたから、司書を任せるのも安心です」と歓迎してくれた。


「今日は私とアグリさん2人で司書の仕事をして、明日からアグリさん1人でお願いすることにしましょう」



 マルタ先生は机の引き出しから腕章を取り出した。



「先生方は付けていないのだけど、アグリさんは学生だから司書の仕事中はこの腕章を付けることにしましょう」



 私は腕章を受け取った。そして腕章を付けると仕事開始!って気分になって良いかも。フレデリカ先生が戻られ、マルタ先生と並んで受付カウンターに座ると、マルタ先生は司書の仕事の説明を始めてくれた。



「司書の仕事は貸し出し受付、返却受付、返却本を棚に戻す、が日常の業務です」



 私は心の中にメモ。マルタ先生の詳しい説明を待つ。



「では、貸し出し受付の説明から。毎日引き出しの中に入っている受付表に日付を記入して受付カウンターに置いてください。生徒さんが本を借りに来ると受付表に記載して声をかけてくるので、本の背表紙の管理番号と王都民証の名前が記載内容と同じか確認してください。問題がなければ本を渡して貸し出しは1週間と伝えてください。返却期限が休校の場合は翌日が返却期限となります。夏休みなどの長期休校が返却日となる場合は貸し出しはできません。なので短い期間の貸し出しにするのか、貸し出しを諦めてもらうか判断してもらってください。貸し出し受付については問題ありませんね」


「はい」


「次に返却受付。まず返却された本を確認して汚れや傷が無いことをざっと確認してください。その後、生徒さんには確かに受け取りましたと伝えてください。受け取った本は受付カウンター内の司書机に置いてください。受付が落ち着いているときに司書机に置かれた本を受付表から消し込みます。消し込みは横線を引いてくれるだけでいいです。表内の一覧がすべて消し込まれたら一番下の引き出しに入れてください。それと消し込みが終わった本は受付カウンターに乗せてください。希望の本が無い時に受付カウンターの返却本を確認に来る生徒さんもたまにいますので」



 ふむふむ、この作業も問題ない。私がいつも司書の先生にやっていただいていたことなので。本を棚に戻すお仕事はたまにお手伝いをしていたしね(笑)



「最後は返却本を棚に戻すのですが、これは受付カウンターに乗せた本を棚に戻すことです。管理番号は棚番号、棚段番号、列番号、列内番号となっています。該当の場所の棚に戻せば終わりです。本が増えると重いので、受付の混雑具合を見ながらこまめに棚に戻してください」


「残りの細かなルールとしては、図書室を一時的に出るときは受付カウンターに離席中の立て札を置いて行ってください。アグリさんもたまに見かけていたからわかりますね。それと、たまにこの本はいつ返却予定ですかと聞かれることがありますが、分かりませんと答えてもらって結構です。貸し出し管理が管理番号なので司書には分かりませんから。それと最後に期限を過ぎても返却されない本については気にしなくていいです。これは司書の先生が毎朝確認して、朝の教員会議の中で各担任の先生に催促を依頼する決まりになっていますので」



 これでマルタ先生の司書のお仕事の説明は終了。私にも問題なくこなせそうだ。



「何か不明点は?」


「はい、大丈夫です」


「では、司書のお仕事をお願いします。今日は私も受付カウンターにいますが、すべてアグリさんにやってもらいます」


「はい、分かりました!」



 それから私は司書の仕事をこなし、無事に閉館時間となった。一般図書室の鍵を閉め、教員室に向かう道すがら、私はマルタ先生に質問した。



「マルタ先生、司書の仕事中に読書や勉強をしていても問題ないですか?もちろんお仕事は最優先ですけど」


「はい、何の問題もありませんよ。アグリさんが自分で本を借りたいときも、自分で受付業務をしてもらってかまいませんから」


「はい、ありがとうございます」



 教員室に着くと、壁の鍵かけに一般図書室の鍵をかければお仕事は完了!私の姿を見かけたフレデリカ先生が近寄ってきた。



「マルタ先生、アグリさんで問題ありませんでしたか?」


「はい、明日からは安心してお任せできます。アグリさんは不明点や困ったことがあれば司書の先生に気軽に質問してください」



 そう言ってマルタ先生は自席に戻られた。私はフレデリカ先生にお礼を言って教員室を後にした。学生寮に戻るとちょうど夕食の時間となるので、予習復習と絵を描く時間は夕食後となった。新しい生活パターンが始まった。


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