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88話 素材の採取に出発

 お買い物を終え静養所へ戻ると、グランはグリムさんにお預けして、私は料理、掃除、お風呂の準備を片付けました。その間に、近衛兵団の兵士の方が来られて、材料のリストと詳細な地図を提供してくれました。


 私は家事を終えてリビングに向かいます。念のためグランの即席ベッドも用意しました。すると、グランがグリムさんの足にしがみつきながら立っていました。



「グランが頑張って立ったのです。これからどんどん歩き回って目が離せなくなりますよ」



 グリムさんの嬉しそうな満面の笑みです。もう少しグランのお相手をグリムさんにお願いして、私は材料のリストを別の紙に書き写しました。そして書き写した紙の左横にマークを付けていきました。マークは◎、〇、△、□です。


 グランのお相手を交代すると、今度はグリムさんが地図を別の紙に書き写してくれました。それも写し先の紙に合わせて、縮小して書いていました。これには私も驚きです。



「グリムさん、すごい技をお持ちだったのですね」


「いいえ、騎士なら地図を書き写す授業がありますので、誰でも書けます」


「それにしても、これほどの詳細な地図をサイズ違いで書き写すのです。グリムさんも絵の練習をされるべきです!」



 地図の写しにはもうしばらくかかりそうなので、邪魔にならないよう、横にずれてグランと遊ぶことにしました。


 私はグランの両手をとって、「グラン、少し歩いてみましょうか。ゆっくりでいいですからね」そう言って、グランの両手をゆっくり引いてみました。するとグランはゆっくり右足を引きずるように前に出しました。さらに両手を引くと、左足を引きずるように前にだしました。さらにゆっくり引いてみると……転びそうになりました。私がとっさに抱きかかえて無事でした。



「グランは私が思うよりもずっとお兄さんなのですね。ご普通に飯を食べたり、立って歩いたり、もう赤ちゃんは卒業かな?」



 私とグランが遊んでいる間に、グリムさんは地図を書き上げてくれました。おまけに私のリストに書いたマークも該当箇所に書いてくれました。



「アグリさん、明日からこのマークの場所へ順次ご案内します。日帰りをするつもりでいますが、遠いところは野営をすることになるかもしれません」


「はい、よろしくお願いします」



 そのやり取りの間に、グランはもう眠っていました。まだ歩くのは疲れるのですね。おやすみなさい。




 翌朝、私は早めに起きて、朝食と昼食の準備をしました。そしてグリムさんとグラン?が朝の稽古にむかうと、お風呂の支度と掃除を始めます。2人が戻ってくると、お風呂へ向かってもらい、洗濯物を洗い出しました。乾燥まで済ませたところで、2人がお風呂から出てきます。2人のことも乾燥です!


 3人で朝食を済ませ、私は後片付け、グリムさんには支度をしてもらいました。私も最後に動きやすいワンピースに着替えて出発準備完了です。そして、皆の準備が整ったところで、いよいよ出発です。グリムさんは私の荷物を持とうとしてくれましたが、お断りしました。



「そのうちグランと2人ですることになるから訓練です!」



 ただ、これからの私は魔法を駆使する気でいます。本当にグランと2人での採取を想定していたのです。



「グリムさん、今回の採取では魔法を駆使します。醜い姿もお見せすると思いますが、ご了承ください」


「はい、ご心配には及びません。アグリさんの魔法は長く隣で見てきましたから」



 あらら、グリムさん。あまりに醜いものはお見せしていなかったつもりなのですが、大丈夫かな?



「グリムさん、もしも途中で私が意識を失ったら、腰に差している白い杖を左手に握らせてください。そして杖は地面に触れさせてください。それでも意識が戻らなければ、この薬を飲ませてください」



 私は小さなビンに入った赤い液体をグリムさんに3本渡しました。



「はい、もしものときはそのようにします」




 いよいよ出発です。グリムさんの話しでは歩いて1時間程度の距離だそうです!


 結果……私は20分も歩くとバテました(涙)


 まあ、当たり前です。5カ月前は死にそうになっていて、3カ月前は歩けませんでした。無謀過ぎでした。グリムさんにはこれは想定内だったようです。



「休憩をはさみながらゆっくり向かいましょう」



 そう励ましてくれるものの、グリムさんも目的地到着はまだ無理かな?の雰囲気です。


 休憩で息も整い、水分補給もしたので、体力は少々回復しました。でも、このまま出発してもしばらく歩けば同じことが起こります。そしてそれを何度も繰り返すこともできないでしょう。


 何か考えないと……私ができることと言えば魔法しかありません。では魔法をどうやって使えば移動の助けになるか?考えれば考えるほど奥の手しか思い浮かびません。


 私はもう奥の手を使うことにしました……


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