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87話 ビーゼ村の近衛兵団

 一通りの商店へのご挨拶と買い物を終えて、ラクサさんのお店に戻ります。その道すがら、私はマリネさんにカノンさんとお話ししたことをお伝えしました。



「マリネさん、結婚式の衣装のことでカノンさんとお話しして、一緒に作業してくれることになりました。今年は準備もできていないので、マリネさんの分だけ用意することとなりました。ですので、マリネさんが衣装を作る気になったらカノンさんのところへ私のワンピースを持って行ってください。それと生地は何種類かの中から選んでもらうことになりますので、ラクサさんやご主人様もご一緒の方が安心かもしれません」


「父は一生に一度のことだから好きにしても良いと許可をくれました。ただ、あまり高価な場合は難しいとも言っていました」


「そうですね、カノンさんもそれを心配されていました。とにかく、無理をなさらず、皆さんの賛同を得てから進めてください」



 そして、ラクサさんのお店に到着。購入した水筒を受け取り、明日から山に探索に行くので静養所は留守が多いことをお伝えしました。届け物があったら、静養所横の倉庫に置いていって欲しいとも伝えました。




 ラクサさんの店を後にして、私はグリムさんに相談です。



「グリムさん、グランのおしめを替えたいのですが、どこかに良い場所はありませんか?」



 グリムさんも迷っていましたが、厩舎の近くに何かあるかな?となって、行ってみることにしました。予想は当たって、馬を走らせる広い場所の横にベンチがいくつかありました。そして近くには井戸もありました。人もいないので、グランのおしめを脱がせ、下半身を洗い、温風で乾かしてしまいました。そしておむつをつけて着替え完了です。井戸脇の下水道近くでおむつの洗濯と乾燥も済ませました。


 さっぱりしてグランも喜んでいるのでお昼ご飯にすることにしました。今日はグランに私1人で食べさせる練習をしました。つぶしたおイモとお水だけではちょっと可哀そうなので、私のホットドッグのパンだけを小さくちぎって、グランの口に入れてみました。


 口の中でもごもごしながら、最後に飲み込めたようで、柔らかいパンなら食べられそうです。


 おイモとパンを交互にあげて、ときどきお水をあげて……しっかり食べてくれました。



「パンを食べてくれると、かなり助かりますね」


「はい、もう私たちと同じもので、食べられそうなものは積極的に食べさせてみます!」




 食事を終えるとグリムさんにお願いをされました。



「アグリさん、近衛兵団の出張所にご同行いただけませんか?」


「はい、グリムさんのご要望でしたら、ご一緒します」



 そして厩舎から馬を出してもらって、近衛兵団の出張所に向かいました。グリムさんは出張所に着くと馬を結んで受付へ向かいました。



「近衛兵団第1騎兵連隊所属のグリム1等騎士です。国王陛下のご命令で魔法士のアグリ様を静養所に護衛してきまいた。所長との面会をお願いします」



 しばらく待つと、所長室に案内されました。ほどなく所長も部屋に現れました。



「グリム久しぶりだな、元気そうでなによりだ。相変わらず修業は欠かさずのようだな、殺気が駄々洩れだ」



 所長は気さくに言って笑われました。グリムさんは敬礼を返します。



「ラーク所長、ご無沙汰をしております。本日は国王陛下のご命令で、魔法士のアグリ様を護衛して静養所へお連れしたご報告に参りました」


「それはご苦労。アグリ様も長旅ご苦労様でした。王都と比べると田舎で驚かれたでしょう?」


「お初にお目にかかります。アグリと申します。静養所の所長として派遣されてまいりました。静養所に住み込みますので、今後ともよろしくお願いいたします……堅苦しいご挨拶はこの辺で。ラーク所長、私はお貴族様ではございませんので、庶民の扱いでお願いします。グリムさんにもそのようにお願いしていますので。それとこの村は、私の生まれ育った村に比べたら、相当大きな村であることに驚きました」


「あはは、アグリさんは気さくなご婦人ですね。今後ともよろしくお願いします。お困りごとがあれば何なりとご相談ください」


「ラーク所長、私はまだ婦人ではありません。この子は道中で親を亡くして孤児になっていたので私が連れてきました」



 私がグランのことをお話しすると、グリムさんが所長に真剣な表情でお話しをされました。



「ラーク所長に面会をお願いしたのは、アグリさんの今後をお願いしたいのと、王国直轄領ではなかったのですが、ここから近い村が襲撃され全滅していたので、そのご報告で伺いました」


「それはご丁寧に。非常に助かる」



 所長はそう言うと、呼び鈴でメルク副所長を呼んで、地図を持ってくるように指示されました。


 メルク副所長と挨拶を交わした後、詳細な地図が広げられました。グリムさんはこの地図の1点を指さします



「この村が2日前に魔獣に襲撃され、アグリさんの保護された子供を除き、村人全員が全滅していました。この子のご両親は魔法士か魔法が使える人だったようで、フライングデーモンと刺し違えて両親とも亡くなっていました。フライングデーモンの襲撃なのでお耳に入れておいた方が良いかと思いまして」


「グリム殿、ご協力に感謝します。この村は巨大な魔法陣に守られていることもあり、襲撃はないのですが。近隣の村では襲撃の報告が数件ありました。ちょうど領地境に近いこともあって、両領主様も討伐隊を送りにくい状況のようです」


「近衛兵団が仲立ちをして、共同の討伐隊を組織するしかないか……話しは変わるが、グリムはいつまで静養所に滞在するのだ?」


「皇太子様からは、アグリさんの生活が安定するまで護衛を続けるよう申し付けられています。明日から山を案内して調合の材料の採取場所をお伝えして回りますので、少なくとも2週間はここにおります」


「採取場所なら資料があったな、写しを作らせて静養所へ届けさせよう。今日はわざわざありがとう」



 これで解散となり、3人は馬に乗り静養所へ戻りました。


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