84話 いざお買い物へ
静養所に到着した翌朝、水色のワンピースにひまわりのブローチもつけて着替えを済ませる。まだ夢の中のグランも着替えさせ、スリングで抱きかかえながら1階へ降りていく。ちょうどグリムさんが剣の稽古をしに外へ出るところでした。
「おはようございます、グリムさん」
「おはようございます、アグリさん。これから剣の稽古に行くので、グランを預かって行きましょう」
「お稽古の邪魔にならなければ、お願いします」
となって、グリムさんにスリングごとグランをお渡ししました。
私は2人を見送って、厨房へ向かいます。朝食は軽く適当に、スープも残っているので助かります。ついでに昼食も用意しておきましょう。村でグランと食事ができる店があるのか分からないので。昼食はホットドッグで我慢してもらいます。グランには……おイモをふかしてつぶしたものでいいかな?それなら私とグリムさんも食べられるから。
朝食はワゴンに乗せて、昼食はバスケットにいれて、食事の準備は完了です。食堂へワゴンを押していくと、ちょうど2人が帰ってきました。
グリムさんは汗だくで、ぜーぜー息をしているのに対して、グランはキャッキャ大喜びです。いったいこの2人は何をしてきたのでしょう?
「はい2人とも、朝食の前にお風呂です!着替えを持ってお風呂に集合です」
3人で3階へ行って、各々が着替えを用意して、また3人でお風呂に向かいました。グリムさんが服を脱いで、私がグランを裸にして、グリムさんに預けました。そしてお風呂場に入った2人に、私が魔法の手からお湯を出して、体を洗い流しました。その後、温風を出して2人の体を乾かして、脱衣所へ行ってもらいます。グランを即席ベッドに寝かせてもらい、私はグランに服を着せ、グリムさんにも服を着てもらいました。そして、2人の着ていた服は洗濯籠に入れました。脱衣所にもグリムさんとグランの着替えを置いておくと便利!そう思い至るのでした。
3人で朝食をとり、グリムさんにグランを預けて、私は洗濯に向かいました。3人分の洗濯物なら、魔法であっという間です。
洗濯物を畳んで、2人のいる居間にもどりました。
「グリムさん、毎朝剣の稽古をされますよね」
「はい、毎日です。雨の日でも雪の日でもです」
「なら、着替えを脱衣所にも置きたいのですが、いかがですか?グランの着替えもそうするつもりです」
「それはかまいませんが、それほど数は持っていません……」
「それは今日買うか、なければ私が作るかすればいいだけです」
「その辺は、アグリさんにお任せします」
「はい、お任せください!」
考えてみると、私のものはここに用意がされていますが、グリムさんとグランのものは何も用意されていません。グリムさんは旅の必要最低限の物だけ持って来ているので、しばらくここで生活するなら、買い物は必要です。今日は忙しくなりそうです!
食事の後は村へ向かうための支度を始めました。自分の支度はないのですが、グランの支度はいろいろあります。着替えも何着か用意して、念のため白湯も用意しました。コップにお椀にスプーン。タオルも何枚か。こうしてみると、私もバッグは必要です。今日は仕方なく布の袋へいれて、グリムさんのリュックに入れてもらいましょう。
そうそう、マリネさんに生地のサンプルとして、コットンのハンカチも持って行きましょう。肌触りは伝わりそうですから。
忘れ物がないかを確認して身支度を終え、玄関へ向かいました。グリムさんは手ぶらでしたが、お願いしてリュックを持ってもらいました。グランの荷物とお昼ご飯をリュックに入れてもらって出発です。
馬に乗せてもらって、ゆっくり馬を歩かせました。静養所の奥は山に囲まれていて、村へ向かって平地が広がっています。静養所は景色としてみると最高の場所に建てられています。とても贅沢です。
「グリムさん、馬に乗るのは難しいですか?」
「いいえ、慣れれば難しくないですよ。馬に乗りたいのですか?」
「村へ買い物に行った帰りに、グランを連れて買った物も持ってとなると大変かなと思いまして」
「確かに馬は便利ですが、生き物なので世話も大変です。食事の量も多いですし」
「なるほど、ではグランが歩けるようになるまでは自分で頑張ることにします。それとも魔法で馬を作ってみようかしら?」
「アグリさん、村人が驚くようなことだけは、ダメですから」
「はい、気をつけます……あら、グランはもう寝てしまっています。馬に乗るとすぐ眠ってしまいます」
「グランには馬の揺れが心地よいのでしょう」
「夜泣きがひどかったら、グリムさんにお預けできますね(笑)」
おしゃべりをしていると、すぐに村へ到着しました。グリムさんは村の厩舎へ馬をあずけて、お金を渡していまいた。
「グリムさん、馬を預けるのもお金が必要なのですか?」
「短い時間なら不要だと思いますけど、今日は馬の餌もお願いしたので」
「静養所には馬の餌は準備されていないのですか?」
「はい、アグリさんお1人だから用意がなかったのでしょう」
「どうしましょう?村へお願いしますか?」
「いいえ、なるべく村まで来るようにしましょう。村人と顔見知りになるためにも」
そんな会話をしている間に、ラクサさんの店に着きました。「おはようございます」と挨拶しんながら店に入ります。ラクサさんとマリネさんが出迎えてくれました。
マリネさんは私のワンピースを見て、「こちらのワンピースも素敵ですね」と褒めてくれました。
「今日はご案内を、よろしくお願いします」
「はい、今日は娘と2人でご案内させていただきます。娘が赤ちゃんの面倒をみたいと言いまして、娘も同行させます」
「マリネさん、ありがとう。今日もよろしくね」
「はい、お任せください」
今日もラムカさんがお茶の準備をしてくれて、皆で席に座りました。




