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78話 赤ちゃんには快適を

 私とグリムさんは赤ちゃんを助けた家の外に出ると、2人の騎士様が到着されていました。


 2人の騎士様と合流したところで、グリムさんと騎士様はお互いに敬礼したところで、グリムさんが状況報告を始めました。



「近衛兵団第1騎兵連隊所属のグリム1等騎士です。国王陛下のご命令で魔法士のアグリ様を護衛中にこの村から立ち上る煙を見つけました。そして村へ来るとすでにこの状況でした。取り急ぎ、魔獣がいないことだけを確認し、信号弾を上げました。その後、アグリ様のご助力で生存者1名を確保しました」



 するとお年を召した方の騎士様が返事をされました。



「丁寧なご報告を痛み入ります。私はジウト領の領兵団に所属しているウコワ兵団長です。最近魔物の目撃情報が多く、辺りを警戒していたところ、グリム殿の上げられた信号弾を見つけて急行しました。他の者も直に到着すると思います。護衛任務中に恐縮ですが、もうしばらくこの場へおとどまりください」


「アグリ様、ウコワ兵団長の申し出をお受けになりますか?」


「はい、ウコワ兵団長にご協力ください。ただ、ウコワ兵団長。この子のことも心配なのです……私は子育ての経験がないもので、どうしてあげたらよいかお知恵をお貸しください」



 するとウコワ兵団長が私に近づいてきて、赤ちゃんの様子を見ました。



「おしめか、お腹が空いたかのどちらかでしょう。このくらい大きければ離乳食でも大丈夫だと思います。この子を保護した家からそれらを探してみましょう」


「では、ウコワ兵団長。その役目は私とグリムでやりますので、お聞きになりたいことがあれば、あちらの家にきてください」


「はい、了解いたしました」



 そして私とグリムさんはもう1度家に戻ることにしました。




 グリムさんは家に近づくと、「アグリさんはこちらでお待ちください」と言って家の中に入って行きました。そしてしばらくすると、「中へ来てください」と声をかけられました。


 先ほどの小屋のご両親の遺体は見当たらず、どこかへ移動されたのでしょう。屋敷の安全も確認されたようで、さすがは護衛騎士様です。家は平屋の2部屋の家で、村では標準的なつくりです。キッチンとリビングのある部屋は後回しにして、奥の寝室へ入ることにしました。


 部屋には壁に吊るしのタンスと引き出しのあるタンスがあり、グリムさんと手分けして、中を確認しました。上の方の引き出しはご両親のものばかりで、1番下の引き出しに赤ちゃんの物がしまわれていました。おしめに肌着にお洋服……どれも2、3枚でした。そしてもう1つスリングもでてきました。今のは血だらけなので後で交換しましょう。


 グリムさんは吊るしのタンスを確認してくれて、こちらは衣類も形見になりそうな物も、情報もなかったそうです。


 私は部屋を見回すと、ベッドの横にサイドテーブルが置かれているのを見つけました。サイドテーブルの引き出しを開けると、魔石がついているブレスレットなど、魔法関係のものと思われる品が何点かありました。この中身は形見として持ち帰りましょう。


 私たちは再びキッチンに戻って、今度は赤ちゃんの食料をさがしました。これはすぐに見つかって、コルクのふたのついた壺の中に、ニンジンをすりつぶした物と、おイモをすりつぶした物がありました。においをかいでも傷んでないようなので、今日はこれで我慢してもらいましょう。他にキッチンから見つかったのは子供用のおわんとスプーンが2つずつ。


 これで少しは赤ちゃんに快適に眠ってもらえそうです。




「グリムさん、お願いがあります。たらいを見つけてきていただけませんか?」


「何にお使いになるのです?」


「赤ちゃんを洗ってあげたいのです」


「分かりました、しばらくお待ちください」



 グリムさんが探しに行かれたところで、私はエコにおむつのつけ方を教わります。ふむふむ、そんなに難しくない!そしてグリムさんがたらいを持って戻ってこられたところで、魔法の手からお湯を出してたらいをお湯で満たします。赤ちゃんの服を脱がせると、確かにおしっこしていますね。裸にしたら、ゆっくりとたらいに入れて体を洗います。ちなみに男の子でした(笑)



『血がついていたり、泥がついていたり。君も大変だったのよね。でも無事で元気なようだし、本当によかった』



 何度かたらいのお湯を替えながら赤ちゃんをきれいにしました。そして今度は温風を出して乾かします。これで入浴終了です!


 次はおしめです。赤ちゃんを寝かせる場所がないので、寝室のベッドへ移動しました。そして、エコに教わった、三角を作って、間に布を置いて、足の間に履かせて、両端を巻くようにして、端を中に巻き込むようにして完成!上も肌着を着せれば、この季節ならこれで大丈夫でしょう。


 私は無謀にも自分の服を着たまま洗いと乾燥を魔法でしてしまい、私も血を落としたところで、新しいスリングに交換しました。そして赤ちゃんを迎えに行くと、ベッドの上ですやすや眠っていました。お風呂に入ってさっぱりしたのでしょう。私はそっと抱き上げて、ゆっくりスリングの中に包み込みました。



「グリムさん、お待たせしました。赤ちゃんはぐっすりお休みです」


「それは良かったです。それとアグリさん、不思議なことに、父親のリュックに物を入れられないのです?」


「そのリュックからは魔力を感じるので、一族の人だけが使えるのでしょう。グリムさんはリュックが2つになってしまいますが、大丈夫ですか?」


「はい、このリュックは軽いので、馬の横に縛り付けても大丈夫です」


「それを伺って安心しました。では私はおしめを洗ってしまいます。グリムさんはどうされますか?」


「ここにいますので、お気になさらずに」


「では、お言葉に甘えさせていただきます」



 私はたらいの中で赤ちゃんの身に着けていた物を洗いました。そして乾燥も。魔法使いは子育て上手かもしれません(笑)




 赤ちゃんのことが落ち着いたので、グリムさんとウコワ兵団長のところに戻りました。


 状況を伺うと、騎士様は8人に増えていました。その8人が被害者の確認や襲ってきた魔獣の確認、魔獣の侵入経路や逃走経路の確認をしているそうです。



「ウコワ兵団長、他の騎士様も来られたので、私どもはそろそろ先へ向かいたいのですが……」



 ウコワ兵団長は困った顔をされています。でも理由はさっぱり分からないのです。



「ウコワ兵団長、はっきりおっしゃってください。私どもがいないと何かお困りになるのですか?……ああっ、第1発見者の何とやらですね!ウコワ兵団長、あなたの黄色い信号弾をお貸しくださいませ」



 ウコワ兵団長は意味が分かっていない様子ですが、信号弾を手渡してくれました。



「これで第1発見者はウコワ兵団長です。私どもは信号弾など上げておりませんから。そうですね、グリム」


「はい、アグリ様。おっしゃるとおりです」


「私どもはウコワ兵団長が上げられた信号弾を見て、この場に駆け付けただけです。すでにジウト領の領兵団の皆さまがお揃いになっていて、私どもは安心してこの場をお任せして、先へ急いだとご報告なさいませ。よろしいですね」


「はっ、アグリ様のおっしゃる通りにいたします」


「ウコワ兵団長、赤ちゃんのアドバイス助かりました。後はよろしくお願いします」



 こうして私たちは先を急ぐことになりました。赤ちゃんにご飯も寝床も提供したいですもの!


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