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62話 食いしん坊万歳!

 皆さんへの挨拶を終えたところでフィーネさんと、「お腹空きましたね」となり、2人で料理を取りに向かいました。



「グリス侯爵家の立食パーティーメニューと伺っています。こちらでしか食べることができないのですよね?楽しみにしていたのです!」


「アグリさんが主役のパーティーですから、遠慮せずたくさん食べてくださいませ」



 2人でお皿にいろいろな料理をのせ、グラスにレモネードを注ぎ、空いている壁際へ寄って食べ始めました。



「フィーネさん、おいしすぎて幸せです!」


「はい、アグリさん。私も口の中が幸せすぎます!」



 しばらく2人で黙々と料理をいただきました。




 すると私たちの食べっぷりを見たお父様が近くに来られて、「さすが食べ盛りの娘2人は、見事な食欲だな」と笑われた。


 私とフィーネさんも声を合わせて、「お父様、レディーに対して失礼です!」と反撃です。


「私はこんな食べっぷりを一生見せられるのか?」とレイスお兄様もそばへ来られました。レイスお兄様はフィーネさんの結婚後に、フィーネさんの護衛騎士となることが決まっているので、フィーネさんとは一生おそばでのお付き合いになるのです。



「もう、この家の殿方は女性の接し方がなっていないのです!そんなことでは、レイスお兄様はにいつまでもお相手が見つかりませんよ」


「大丈夫だよ、兄にこんな酷いことをいう妹でも、ちゃんとお嫁にもらってくれる人が現れたのだから……」


「レイスお兄様、フィーネさん、言い争っている余裕はありません。せっかくのお料理が冷めてしまうではありませんか!」



 皆さんが呆れた顔をされていましたが、私は気にもせず、お料理をいただき続けました(笑)




 お父様とレイスお兄様が皇太子様のところへご挨拶に向かわれると、入れ替わるようにキツカお兄様がやってきました。


 キツカお兄様がニコニコしながら左手を振ると、私とフィーネさんがしているのと同じ白い石のブレスレットをしていました。



「キツカお兄様、それは私にプレゼントしてくださったときの石ですか?」


「そうだよ、アグリ。アグリが母上から別の物をいただいたおかげで、自分用を作ることができた」


「では、キツカお兄様も遠隔で外部記憶装置が使えるようになったのですね!」


「それが、残念なのだが反応がない……」


「思念が届いていないのですかね?キツカお兄様、ブレスレットをお借りしてもいいですか」


「もちろん」



 キツカお兄様はそう言って、ブレスレットを渡してくれました。私は自分のブレスレットをフィーネさんに預けて、キツカお兄様のブレスレットを手で握ります。



『エコ、聞こえますか?アグリです』……『はい、聞こえます』


『エコ、グリスのフィーネさんにメッセージを送りたいの』……『はい、送りたいメッセージを送ってください。送り終えたら終了と送ってください』


『フィーネさん、次はデザートを食べましょう!終了』……『はい、メッセージを送りました』



 すると横にいるフィーネさんがビクッとして、そして集中。最後はクスクス笑いだしました。



「アグリさんは食いしん坊さんですね!」



 私はネックレスをキツカお兄様にお返しする。



「このブレスレットでも対話は可能です。キツカお兄様の思念の伝達方法に問題があるかもしれませんね」


「私は魔法士ではないから、思念の強さや量が足りないのかもしれないな……」


「キツカお兄様、魔力など自分の体内の量も増やせれば、外部から集めて取り込むこともできます。努力すれば必ず報われます!」


「いいえ、お兄様。アグリさんの話しを信じてはいけません。アグリさんだからできるのであって、魔法学校に通う私ですらアグリさんのお話しは理解ができないのです!」


「まあ、確かにアグリは規格外だが、アグリができたのなら、別の人間にもできる方法があるはず。私は研究を続けていくよ。アグリも何か分かったら教えてくれ」


「はい、キツカお兄様。私も魔法の探求を続けますから、成果があればお知らせします」




 キツカお兄様が移動されたタイミングで、私とフィーネさんはデザートの前に移動しました。するとその姿を見て、シリルさんとミリンダさんがやってきました。



 シリルさんが「ついにお2人がデザートを取りにきてくださいましたね!」と言って説明を始めてくれた。


「ドライフルーツのケーキにかけるソース類をいくつか用意したのです。今回はケーキに染み込まないように、ソースをジュレにする工夫をしてみました。どうぞご賞味ください」



 そう言われてソースを見ると、チョコレート、ヨーグルト、はちみつのジュレ、オレンジのジュレ、ベリーのジュレ……実に多彩なソースが並べられていました。そしてソースの横には新鮮なカットフルーツもあり、口直しをする配慮もされているようでした。



「頑張りましたね、シリルさん。ドライフルーツのケーキを作ると決まってから、考えたのですか?」


「いいえ、メニューの研究をする中で、ケーキのスポンジに染み込ませて食べてもらうことや、逆にスポンジそのものの食感はそのままにソースを絡める食べ方もいいかなと考えていたものでした。今回は絡める方でお出ししてみました!」


「なるほど、では早速いただいてみます」



 私はお皿にドライフルーツのケーキをのせ、ケーキの半分にベリー色のジュレをかけてみました。そしてプレーンの方をパクリ、『私頑張りました!』と心の中でガッツポーズ!今度はソースのかかっている方をパクリ!



「シリルさん、ケーキの味も食感もそのままに、お味を追加する感じがとても面白いです!」


「そこをご理解いただけて、嬉しいです」



 私がシリルさんと話している横で、フィーネさんはケーキの上に全種類のソースを少しずつかけて、すべてのお味見をするようでした。人のこと食いしん坊って言えないですよ!


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