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61話 皆さんへのご挨拶

 私がパーティー会場内をご挨拶に回ろうとしたところで、フィーネさんが私のそばに来られた。



「皇太子様の扱いはさすがでしたね、アグリさん。アグリさんのユーモアで皆さんが助けられました」


「フィーネさん、ひどいです!せめて皇太子様に招待状をお渡ししていると教えてくれればよかったのに!」


「それでは、サプライズにならないではないですか!」


「いえいえ、サプライズを通り越して、皆さん心臓が止まる思いでしたよ(笑)」


「あはは、確かにアグリさんの言われるとおりですね(笑)さあ、アグリさん。皆さんのところにご挨拶に参りましょう!」


「はい、フィーネさん」




 そして会場を順に巡ってご挨拶を始めましました。


 クラスメイトとは、春休みになる前に会ったきりだったので、ずいぶんと久しぶりでした。一緒に卒業できなくて残念だとも言ってくれました。そんな中、フィーネさんがちょっといたずら心で、「皆さん、我が家の兄3人はまだ独身なのですよ~」の声にクラスメイトは色めき立っていました(笑)




 次の集団に、メリル先生、フレデリカ先生、リサさんがいました。


 メリル先生とフレデリカ先生は、私を卒業させられなかったことをとても気にされていた。そして、フィーネさんとの友情によって、私がここまで回復できたことを喜んでくださった。ただ、フレデリカ先生がとても責任を感じられているのが、少々気がかりでなりません……


 リサさんは現場にいただけに、とても心配してくれていました。また、学生寮が今年度から廃止され、今は校長先生の屋敷の敷地内にあるゲストハウスで寮生3人が住んでいると教えてくれました。いよいよ最上級生で卒業となるので頑張ってくださいとお伝えしました。




 次は、使用人の皆さんと、シェフの皆さんが談笑されている場所へ。



「庶民の私を、侯爵家のご家族のように大切にしていただいて感謝しています。おかげ様で、このように元気な姿に戻ることができました。これから生きていくためのいろいろな教えも授けてくださり、ありがとうございました」



 そう挨拶すると、皆さんが回復を笑顔で祝ってくれたのと対照的に、ミリンダさんとシリルさんは大泣きです。私はお2人を抱きしめて、「私を支え続けてくれて、心から感謝しております」と感謝を伝えた。2人はさらに号泣を続けることになりました……




 その横にはファプロ商会のオスバンさんとライザがいました。



「今日はお越しくださり、ありがとうございました。お2人にはお仕事をお休みしていただくことになり、申し訳ありません」


「いえいえ、アグリさん。侯爵家のパーティーにお招きされるなんて、光栄なことなのです。それにそれだけ私共をご贔屓いただいていたということで、こちらこそ感謝しております」


「アグリ様、これは店主よりご快復祝いの品として預かってまいりました、どうぞお納めください」



 私はオスバンさんから箱を開けて中身を見せられると、中にはひまわりの飾りのついたヘアカフスが入っていました。ライザさんがこの品について話してくれました。



「これからアグリさんはご自分で生活されるから、アクセサリーより実用的な物がいいと思って私が選びました。それともう1つ……」



 今度はライザさんが箱を取り出して、中身をみせてくれました。中身はブローチと同じデザインで小さな飾りのネックレスでした。



「これはリリアからの個人的な贈り物。アグリさんから買い取った服が数日で7着売れたそうで、売値をもう少し上げてもいいかもと嬉しい悲鳴のようです。そのお礼として預かってきました」


「贈り物をいただくなんて……私の方が皆さんにお世話になってばかりでしたのに……」


「いいではありませんか、アグリさん。お互いが感謝しあえる関係なら、末永く続けていけばお互いに幸せです」


「はい、私もこれからもファプロ商会さんとお取引が続けられるよう努力します」



 贈り物を2ついただいて、お礼を述べて次へ移動しました。




 そして次は、皇太子様とグリムさんとクリスさん、それと初めてお見かけした騎士様がいました。



「皇太子様、今日はパーティーにご参加くださり、ありがとうございました。フィーネ様とお2人で私を驚かせるおつもりでしたね!」


「ははは、フィーネは面白いことを思いつく。きっと今までにいなかった皇太子妃、そして王妃となってくれるだろう」


「はい、前回もお話ししましたが、私の大親友のフィーネ様をお選びになる皇太子様に、私は絶大な信頼を寄せております。どうぞお2人力を合わせて、さらによりよい王国にしてくださいませ」


「おいおい、アグリ。今日はそなたのための集まりだ、儂のことはどうでもよい。それよりアグリとフィーネに伝えておくことがある……」



 皇太子様が襟を正されたので、私とフィーネさんは片膝をついて臣下の礼をとり、お言葉を待った。



「2人は明日王宮にて国王陛下との昼食会に参加せよ。馬車を侯爵家へ差し向けるので、それに乗ってこい。グリムとクリスも護衛をしてこい。以上だ」



 私とフィーネさんビックリしながらも姿勢を正した。



「謹んでお受けいたしました」


「堅苦しい話しは、ここまでだ。リング、アグリとは初対面だな?」


「はい、近衛兵団団長のリングと申します。アグリ殿をお守りできなかったことを、心から謝罪いたします」


「お初にお目にかかります。アグリと申します。リング近衛兵団長様は勘違いされています。私はグリム様に命を救っていただいたのです。そしてこうして回復を祝うパーティーを開催できるまで支援もしていただけています。近衛兵団の皆さまに感謝しております」



 私は深々と頭を下げて感謝を表しました。



「リング、アグリを困らせることは言うな、アグリの申す通り目出度い席ではないか」


「はい、これは失礼しました。ところで若い2人はしっかり護衛騎士を務めておりますか?」


「はい、お2人に守っていただいていたおかげで、安心して日常を過ごせておりました。そして、お2人は空き時間をみつけては鍛錬に励まれていました。素人の私が見ても、今までとは比べようもないほどお強くなられました」


「ほうほう、アグリが見ても強くなったのか!それは良いことを聞いた。明日の食事会で見せてもらうとしよう」



 皇太子様がまた、いたずらなお顔となったので、明日は何か企んでいるようです……


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