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5話 お花が好き!

 こうして学生としての私の日常が始まった。朝食を済ませると教室に向かい、午前の授業を受け、昼食は学生寮前の中庭で1人で済ませる。午後の授業を受け、学生寮へ戻る前に一般図書室で本を借り、夕食前まで予習復習を兼ねた文字の練習、夕食、就寝前まで読書――これが私の1日となった。


 そんなある日、突然クラス内でテストを受けることになった。初めてのテストで緊張したけれど、問題は難なく答えることができた。周りの皆さんも特に失敗したような表情でもなく、テストを順調に終えたようだった。




 そして翌朝、クラスにフレデリカ先生が現れ、お話しを始められた。



「昨日のテストは1年生の終わりに実施する予定の進級テストでした。皆さん全員が90点以上の点数を取られていたので余裕で合格でした」



 貴族の皆さんはともかく、一般生徒の私ですら十分な教育を受けて入学してきていることに教員側が驚いたようだ(実は貴族の皆さんもクラスに一般生徒が入ると聞いて、一般生徒に負けるわけにはいかないと十分な準備をしてきたらしい……)



「よって明日からは授業内容を変更します。まだどのような授業を行うかは教員で審議中です。ですので、本日もテストを受けていただきます!」



 フレデリカ先生の号令によってテストが始まった――




「ここまでです!」



 フレデリカ先生の号令でテストは終了。今回も特に問題なく回答した私と、周りの皆さんも同様な雰囲気。明日からはどんな授業になるのかな……



「明日は1年生の教科書は不要です。新しい教科書を支給しますので、鞄には教科書は入れずに登校してください。それではさようなら」



 フレデリカ先生の挨拶で解散となった。




 翌朝登校すると、フレデリカ先生とメリル先生が生徒たちが使用している机の上に本を積んでいた。



「おはようございます、フレデリカ先生、メリル先生」



 2人の先生と挨拶をして教室に入っていくと、先生方からも「おはよう、アグリさん」と挨拶が返ってきた。いつもの席に着席すると、本の数が多いし1冊1冊も分厚くなっている。これは中等部1年の教科書では?と疑問に思った。皆が教室に入ってきて、挨拶を交わしながら着席していく。本を置き終えたメリル先生が教室を出ていく。その後、フレデリカ先生が話しを始める。



「まず、皆さんに謝罪から。教科書は揃えたのですが、用意できたのは卒業生が使用していた古いものです。新しい教科書は準備ができたところで皆さんにお配りします。しばらくは我慢してくださいませ。ただし、悪いことばかりではないのですよ……本の表紙を開いてみてください」



 フレデリカ先生に促され、皆が教科書を開いてみた。すると表紙の裏には『学生時代は替えがきかない大切な時間です。しっかり勉学に励んでください』『学生時代の勉強が白魔法士になってからの基本となってくれています。勉学は決して無駄にはなりません!』等々、卒業生からの励ましのメッセージがすべての教科書に書かれていた。皆にとって古い教科書は大切な教科書となった。



「それと昨日のテスト結果についてもお話しします。昨日のテストは初等部2年生が受ける進級テストでした。また、皆さんは90点以上の点数でした。よって初等の教育は免状することとし、今日から中等部の授業を行います。ここで注意事項があります。皆さんは初等部の教育は免除ですが、初等部1年生に変わりはありません。また、卒業も7年後で変更はありません。では残りの2年間は何をするのかというと、より高度な白魔法学を学んでもらいます。教員になれるほどの高度な教育なので覚悟してくださいませ」



 『う~ん、これではリサさんと一緒に勉強できてしまう!』と心の中で叫んだ私でした(笑)


 ――この2年分の学習過程圧縮が、後の私に影響するとは今の私には想像もしていませんでした――




 入学して1月ほどたった朝、朝食を食べ終えてトレイを片付け、ヒビキさんからお弁当箱を受け取るタイミングで声をかけられた。



「アグリさん、お花は好きかい?」


「はい、大好きです。村にいた頃は孤児院の花壇のお世話は私の仕事でした!」


「そう、それなら安心だね」



 渡されたお弁当箱の上に小さな麻の袋を乗せられた。



「食材を仕入れている業者さんからのお裾分けで花の種らしい。私は興味がないので詳しくは分からないけど、この時期に種をまくと夏に花を咲かせるらしいよ」


「ありがとうございます。授業が終わったら早速種まきしておきます!」



 こうして花の種を受け取り、学校へ行く支度を整え、教室へと向かった。




 昼休みになり、食事そっちのけで教員室へ向かった。部屋を見渡すとメリル先生がいたので声をかける。



「メリル先生、ご相談があります。学生寮の花壇に花の種をまきたいと考えているのですが……花の種は今朝ヒビキさんにいただいたものです」


「花壇の使用は問題ないですよ。ただし、花も生き物ですから最後まで面倒をみてあげてくださいね」


「はい、私が卒業するまでしっかりお世話をします」


「よろしい、では許可します。そうそう、ちょっとついてきてくださいな」



 メリル先生は教員室から出て行ったので私も慌ててついっていった。向かった先は玄関を挟んで反対側の備品室。ここに入るのは初めてだった。



「アグリさんも一緒に探して!」



 先生に言われたけれど、お目当ての物はすぐに見つかった。



「スコップにジョーロにはさみ……こんな物でも役に立つ?」


「はい、ありがたく使わせてもらいます!」


「もう使う人はいないと思うから、学生寮で管理してもらってかまいません」



 メリル先生のご厚意で道具を手に入れ、私は道具を抱えて教室に戻った。


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