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55話 パーティーへご招待!

 フィーネさんも片付けが落ち着いたところで、ミリンダさんと作った封筒を見てもらいました。



「まあ、かわいらしい封筒で素敵ですね」


「封をした方がいいか迷っています、いかがですか?」


「封は不要と思います。すぐに中身を見ていただける方が便利かな。それとアグリさん、余っている招待状とハンカチで予備を作ってくれますか、まだお呼びするか迷っている方がいますので……」


「はい、お作りします」



 私とミリンダさんが手分けして残りを作り始めて、ハンカチがなくなったところで終わりとなりました。



「封筒は箱にいれて、フィーネさんのクローゼット部屋に置いておいていただけますか?フィーネさんがご不在のときでも私が取りに来れるように」


「ええっ、そうしましょう!」



 そろそろ夕食の時間も近いので、3人で部屋を出て、クローゼット部屋へ。クローゼット部屋の棚に封筒を入れた箱を置いて3人で置き場所の認識合わせ。それと、ミリンダさんには空き箱を後で片付けてもらうようにお願いした。



「ねえ、アグリさん。もう屋敷の中の皆さんには招待状をお配りしてはどうです?」



 確かに準備ができたのなら、早くお渡しした方がいいですね。



「はい、そうします」



 私が答えると、ミリンダさんはかわいらしい手さげ袋を出してきてくれて、「これをお使いください」と渡してくれました。


 それから3人でお屋敷にいる人の分を選別、オスバンさんとライザさんの分も私が預かりました。残りは学校関係者向けなので、フィーネさんにお願いしました。そして私は、「初めにお渡しするのはフィーネさんと決めていました。パーティーの準備を手伝ってもらって感謝しています。きっとフィーネさんとの最初で最後のパーティーになってしまいますが、楽しい時間を過ごしたいです」とフィーネさんに封筒をお渡しした。フィーネさんの封筒は他の物より分厚いので、何だろう?という様子でフィーネさんは封筒を開きました。中にはハンカチが2枚と招待状。ハンカチは皆さんと同じ1輪のひまわりの刺しゅうのものと、2輪のひまわりの凝った刺しゅうのものです。



「2輪のひまわりは私とフィーネさんの友情の証です。ひまわりの種まきから始まって、無二の親友にまでなれました。そしてこれからも変わらず親友です」


「はい、私とアグリさんは親友です。何の疑いもなく、いつまでも親友のままです。この2輪のひまわりのようにです!」



 私は思わずフィーネさんを抱きしめてしまう。



「私の大切なフィーネさん、心から大好きなフィーネさん、いつまでも親友です」



 2人で抱き合ったまま泣いていると、ミリンダさんが2人の背中を撫でてくれる。



「楽しいパーティーのご招待を受けて、泣くのはおかしいですよ。お2人とも落ち着いてください」



 ミリンダさんになだめられ、少し落ち着く。ようやく2人が離れたところで、次はミリンダさんへ封筒を渡した。



「ミリンダさんが側で支えてくれたから、私はここまで来ることができました。心から感謝します」



 そしてたまらずミリンダさんを抱きしめた。



「ミリンダさんも大切で大好きです。離れてしまうのが寂しいです」



 そして今度は私とミリンダさん、2人で抱き合ったまま泣いてしまいました。フィーネさんが2人の背中を撫でる。



「今日お別れするのではないのですから、お2人とも落ち着いてください」


「ごめんなさい、フィーネさん。大切なお2人とお別れすることを想像したら、たまらなくなってしまいました。少し落ち着いてきたのでもう大丈夫です」


「アグリさんがこんな調子ですと、家族へ封筒を渡すときにも大変なことになりそうですね。でも今日がお別れの日ではないことは肝に銘じて泣かないでくださいませ」


「はい、頑張ります」



 そして3人で食堂へ向かいました。




 食堂に入ると皆さんお揃いでした。


 私はお父様の側へ行き、「お父様、送別パーティーへのお誘いです。ぜひご参加ください」「ああ、楽しみにしているよ」


 その後も、お母様、お兄様方、グリムさんとクリスさん、そしてお父様の側へ立たれていたスミスへもお渡ししました。そしてスミスさんには質問も。



「お屋敷の皆さんにもお渡ししたいのですが?」


「ご家族のお食事の後は、使用人が全員で食事となります。その席でいかがでしょう?」


「はい、では私は食事の後もリビングでお待ちします」


「承知しました。皆がそろったところでお声がけします」


「はい、よろしくお願いします」



 私が席に着くとそれを待っていたように、皆さんが封筒の中身を確認し始めました。封筒が膨らんでいたので不思議だったようです。



 するとお父様が、「アグリ、これが以前話していた手作りのハンカチだね?」


「はい、お父様。糸から生地を織り、刺しゅうも私がしました。皆さんに私の回復を知っていただきたかったのと、回復までのご助力に感謝を込めてのプレゼントです」


「なるほど……それにしても素晴らしい出来栄えだ」



 お父様がお母様の方を見られて、どうかな?と目配せされた。



「アグリ、本当に立派な品だと思います。これは社交界で使っても恥ずかしくないものですよ」


「お母様、そんなにお褒めいただくと、照れてしまいます……」



 私が照れていると、皆さんに笑われてしまいました。


 お兄様たちもそろって、「これなら立派に売り物になるだろう」と太鼓判を押してくれました。皆さんに喜んでいただいてホッとしました。


 最後にお父様が、「皆がアグリを支えたのもあるが、何より辛いリハビリをめげずに励んでいたアグリの姿を皆が知っている。よく頑張ったな、アグリ」


「はい、お父様。皆さんとこうして普通にお食事もとれるようになりました。頑張ったかいがありました」



 今日の夕食は場の空気の和んだ、穏やかな夕食となりました。




 食事を終えて、居間でフィーネさんと談笑していると、スミスさんが声をかけてくれた。そしてスミスさんが食堂の正面に案内してくれて席に戻る。



「お食事中に失礼します。今日は皆さんに私の送別パーティーへお招きしたく、招待状を持ってまいりました。お1人ずつお渡しして回りますが、皆さんは普通にお食事してください」



 するとスミスさんが目配せしてくれて、シルバ料理長から回ることになりました。



「シルバ料理長、ぜひパーティーにご参加ください」


「はい、お招きいただきありがとうございます。当日のお料理はお任せください」


「はい、お願いします。お料理楽しみにしています」


 そして、隣のシェフに、「私の送別パーティーへ、ぜひご参加ください」と私が伝えたのですが、困った顔をされてシルバ料理長の方を見られていました。


 シルバ料理長は、「アグリ様の送別パーティーのお招きを、何をためらう必要がある!皆で盛大なパーティーにしてこそ、アグリ様への恩返しではないか!」とお叱りになりました。


 皆はビックリされていましたが、納得する様子でもあり、その後は皆さんが快く招待状を受け取ってくれました。


 皆さんへ招待状を配り終え、スミスさんに、「ご配慮ありがとうございました」と伝え、「皆様、お食事中に失礼しました」と挨拶して食堂を出ました。




 リビングで私を待ってくれていたフィーネさんと合流し、「お疲れ様でした」と労ってもらっていると、食堂から「まあ、素敵!」と女性の声がちらほら聞こえてきて、ホッと安堵のため息が出ました。


 今日はあまりにも多くのことがあり過ぎて、もうくたくたです。3人でお風呂に入り、フィーネさんとベッドへ転がり込むとおしゃべりする間もなく、2人で夢の世界でした……


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