35話 キツカお兄様との挑戦3
休日の朝食の席でお父様が皆に告げる。
「キツカとアグリは食事を終えた後、実験に使う物を持ってここに集合してくれ。スミスも同行して欲しい」
そして食後に各自が荷物を持ち食堂に集合し地下へ向かった。私たちが前回行った魔法検知の部屋の隣の部屋に外部記憶装置があるらしい。キツカお兄様に私の外部記憶装置を手渡すと、キツカお兄様もお父様も驚かれた。
「こんなに小さい外部記憶装置が存在していたのか!」
ただ、私の外部記憶装置は小型すぎていて調査がしにくいとのことで、しばらく使わないこととなりました。エコ、ごめんね。
そしてキツカお兄様が、早速調査を始める。
「まず、アグリに当家の外部記憶装置を使ってみてほしい」
私は外部記憶装置に手を置いて、思念を送ってみる。
『初めまして、アグリです。あなたのお名前は?』……『はい、グリスです』
私は手を離し、結果を報告。
「ちゃんと使えました、グリスって名前なのですね」
お父様もお兄様も?って顔をされた。
「あれ?この子の名前、ご存じなかったのですか?」
「外部記憶装置に名前がついていることを知らなかった……」
「そうなのですか、私の外部記憶装置の名前がエコで、魔法学校の高等図書室になるのがレックスなのですよ」
キツカお兄様は外部記憶装置のカバーを外し、中の機械を確認している。私も初めて見たけど、いろいろな色の石が、何種類かの金属に挟まれたり、乗せられたりしている。これであれだけ賢い魔道具になっているとは信じられない……そうそう、私も試してみたいことがあったのです!私はエコを膝の上にのせ、白い杖の石の部分をエコのいつも私が手を乗せる場所に置いた。そして私の手は石の上に置いた。私の手はエコに直接は触れていない。
『エコ、聞こえる?アグリです』……『はい、聞こえます』
おおっ、もしかしたらと思ってやってみたら聞こえた!おまけに、しばらくするとエコに声をかけられる。
『アグリはこの石で登録しますか?』
そう尋ねられた。私はあわてて返事をする。
『登録は待って』……『はい、登録をキャンセルしました』
『エコ、私と石を登録したいときはどうすればいいの?』……『石とアグリで登録したいと言ってください』
『この石と誰かで登録されたことがる?』……『はい、ベースと登録されています』
ベース?私はお父様に尋ねた。
「お父様、ベース様ってお方をご存じですか?」
お父様は私の尋ねた名前を聞いて驚かれた。
「ベースはアグリに貸した杖の持ち主だった人だよ」
「キツカお兄様、石と個人を紐づけて登録することができるようです……。杖の石もベース様と登録されているそうです」
私の話しを聞いて、お父様とキツカお兄様は悩みだした、個人と石をペアで登録するメリットとは……?難しい話しはお2人にお任せした。
もうお亡くなりになられている人の登録なら、私と登録してしまっても問題ないわね!私は再び石をエコの上に置いた。
『エコ、私と石を登録してください?』……『はい、登録しました』
『エコ、私と石を登録すると、何ができるようになるの?』……『はい、触れずに遠隔対話できます』
『エコ、遠隔対話したときに、エコは魔力をどこから得てるの?』……『はい、送られてきた思念からです』
『エコ、思念から魔力を得る方法はあるの?』……『はい、思念の波で振動させ、その振動でサイファ石を振動することで魔力を得ます』
サイファ石?振動?うーん、お父様とキツカお兄様に丸投げしましょう、そうしましょう!(笑)
「お父様、お兄様、思念でサイファ石を振動させることで魔力が発生するそうです」
2人はまた、私の話しを聞いて驚かれた。
「アグリ、それをどこから見つけたんだ!」
「エコに聞いて教えてもらっただけですよ」
「父上、なぜこの技術が普及しなかったのでしょうか?」
「それは簡単だ、サイファ石が無いからだよ。サイファ石は魔獣には必要不可欠なもので、見つければ必ず食べられてしまうから」
「技術は確立しても、材料がなくなってしまったと……」
私は疑問に思ったことをお2人に聞いてみた。
「でもお父様、魔獣がサイファ石を食べるなら、体に蓄積されたり、排せつ物に混じったりしているのではないですか?」
「アグリ、すまない。私もそこまでくわしくない。ただ、王国があきらめているのだから、何か問題があるのだろう」
ここで実験は手詰まりとなり終了となった。キツカお兄様は片付けを始める。
「キツカお兄様のお持ちの白結晶石で、どのくらいの値段なのですか?」
「少なくともゴルの単位だよ」
あぁ、それは私にはとても手が出ない。フィーネさんとのおしゃべりはあきらめるしかないか……私の落ち込んだ様子にキツカお兄様が気づいた。
「おっと、すまないアグリ。そもそもの君の希望のことを忘れていた!父上、白石のブレスレットはフィーネに持たせてやってください。お願いします」
「急にどうしたんだ、キツカ?フィーネに持たせることで何かあるのか?」
「はい、父上。フィーネとアグリの親友の絆には白結晶石がどうしても必要なのです」
「まぁ、王家に嫁ぐときには持たせようと思っていたので、今持たせてもかまわないが」
「父上、感謝いたします。僕の石はアグリにプレゼントする。母上に頼んでブレスレットにしてアグリに渡そう。アグリ、後はフィーネといろいろ試してみなさい」
「はい、キツカお兄様、お助けくださりありがとうございました。お父様も私のわがままにお付き合いくださり、ありがとうございました」
こうして親子の共同実験は無事終了したのでした……




