44話 超高速型飛び箱で港町へ
港町に向かう日の朝、僕とアスカは朝食を済ませると、皆さんが集まるよりも先に庭に出て飛び箱の準備をした。念のためエコにも新型の飛び箱のテストをすることを伝えた。エコにはどれくらいの速度が出ているか教えてくれるとのことだった。ちなみにエコは今回の飛び箱が成功するか失敗するかは教えてくれなかった。またまた創造主様にはお心を痛めさせてしまうような実験になるのかな?ちなみに新型の飛び箱と言っても、今まで使っていたくちばし型の高速タイプの飛び箱です。飛び箱を浮かせるのに反重力の魔法、前進させるのに風の魔法を使うだけです。魔力の消費はかなり少なそうなので、その分を前進するための風魔法に使って、超高速を実現するつもりです。
今回の遠征の同乗者はネレイさんとディリアさん、ツバイスさんとザルツさん、それに僕たちの護衛のラッサさんとメディさんです。スピナさんとフィーリさんは危険の可能性も考えてお留守番をお願いしています。
いよいよ皆で飛び箱に乗り込む。いつもとは違う魔法で上昇を始める。もちろん皆さんには違いは感じられないでしょうけど。エコと方向を決める相談をすると、目標をどうするかとなった。エコの提案ではウータム港に向かうのは?だったウータム港はラール港と取引をしていたルディア共和国の港で、もちろん外部記憶装置も健在。エコにお願いすれば、外部記憶装置を目指して飛ぶことは可能らしい。そのことを皆さんに確認してみると、特に問題はないようだ。もうルディア共和国でも公爵となった僕とアスカに気軽にダメと言える人はいないのかもしれないね。エコにウータム港を目標にしてもらって、方向を調整した。
行先が決まり飛び箱を前進させる。あくまでも徐々に。僕はアスカの手を握って魔力の流れを共感した。アスカは黙って僕の魔力を感じている。僕は加速度を上げていく。エコが高速の飛び箱と同じ速度に達したことを教えてくれた。さらに速度を上げ続ける。エコが2倍の速度に達したと教えてくれる。魔力の消費は気にならないレベル。飛び箱の異常も特に感じない。エコが3倍と教えてくれた速度だと若干飛び箱から風きり音が聞こえてきた。まだ、問題となるレベルではないけどね。さらに速度を上げると、風きり音はどんどん大きくなる。アスカとエコと3人で話し今の速度で飛び箱を飛ばす方法を超高速型、今までの飛び方を高速型と呼ぶことにした。普通の飛び方や街やダンジョンで乗っている飛び箱は普通に飛び箱に乗ると表現を統一した。超高速は3倍までの速度にした。もう超高速で飛ぶとメリオス王国の王都からメリオス王国内のどこへ飛ぶのも1時間以内となるからこれで十分です。
しばらく皆さんに新しい飛び箱の感想を聞きながら飛行を続けていると、エコに速度を落とすように言われる。エコにどうすればいいか聞いてみたら、風の魔法を止めるだけでいいと言われたので風の魔法を止めた。速度は徐々に落ちていき、しまいには停止した。くちばしを跳ね上げて外を見ると立派な港町が見えた。時計を見ると確かに1時間ちょっとで到着している。うーん、すばらしい!皆さんも王都から海に1時間でたどり着いたことを驚かれていた。2時間で往復できるなら、新鮮なお魚を買いに港に来れるかもと考えた僕は食いしん坊でしょうか?
僕はこの後の予定について皆さんに説明する。
「ウータム港には外部記憶装置があったので、最短距離で高速に飛んで来れましたが、ラール港は正確な位置が分かりません。ある程度まで近づいたところで目視による飛行に切り替えます。時間はどのくらいかかるかは未定です」
僕の説明を皆さんが了解してくれたので、いよいよラール港に向けて出発です。エコにラール港の近くでどの辺までなら行けそうか聞いたところ、ラール港にある外部記憶はまだ生きているようだ。ただし、魔力が枯渇しているのか活動はしていないとのこと。他の外部記憶装置に自分の位置だけ伝えるようにしているのかな?まぁ魔力不足で困っているなら、何か力になってあげられそうだ。エコにラール港に向けての案内をお願いして、さっそく飛び箱を発進です。今回の飛行は慣れてもらうためアスカにお願いしているけどね(笑)
ラール港近くまで飛んできたようでエコが声を掛けてくれて、アスカは飛び箱を停止させた。くちばしを跳ね上げて辺りを見回す。上から見てもかなり大規模で立派な港町だったのがうかがえる。港としては良港だったのだろう。片側は高い岬が防波堤のようになっている。もう片側は人工的に埋め立てて防波堤を作ってあった。岬の上には城がそびえ立つ。長い歴史を感じさせる港町だ。
僕は船着場の最も海側の端に降りることにした。アスカは移動と降下を同時に行いながら僕のお願いした場所に飛び箱を降ろしてくれる。僕は辺りをサーチして魔獣どころか生き物もいないことを確認する。無事に地上に着陸したところで、超高速型の飛び箱は杖にしてリュックの中へ。代わりに10人乗りの飛び箱を出して、皆さんにも乗ってもらう。僕は皆さんが乗り込んでくれたところで状況説明を始めた。
「今のところ魔獣も生き物も見えません。念のため低空を飛んで街の中を巡ります。皆さんも街の様子を確認してください。気が付いたことがあれば些細なことでも皆で共有しましょう。国王陛下と王妃様をお招きするのです。安全確実を心がけましょう」
「了解です」
飛び箱を浮かせて高い位置からの街の観察を始める。船着場の近くは倉庫と魚の水揚げ場があった。さらに陸側に進むと大きな道が横に走っており、道を横切ると商店と思われる建物が連なっていた。街の形はいびつではある。それはもう平らな場所にはびっしりと建物を建てた結果だろう。そして建物の奥には壁が立っていてぐるりと港町を取り巻いていた。うん、これなら壁を修復すれば魔獣や獣からは身が守れる。港町の機能回復はそれほど苦労はしないだろう。
僕は皆さんに壁の破損状況を最優先で確認したいと伝えて、壁際に移動した。壁の内側を皆さんと確認しながら移動する。しばらく進むと大きな門があったが現在もしっかり閉ざされたままだった。とりあえずは閉まっていればそれでいい。壁の確認を継続する。さらに進むと壁が二手に分かれた。一方はまっすぐ先に延びている壁。もう一方は左側に湾曲して海の方へ向かう壁。海に向かう壁側に進む。ただ、こちらの壁には壁に面して大きな建物が建てられている。この辺は壁の裏から確認しないと正確なことは分からない。ただ、この建物の壁をぶち抜ける魔獣もボスもいないから問題ないだろう。壁の確認を続けつつ進んだところでエコに声をかけられた。この建物の中に外部記憶装置があると。その建物はこの港町で最も立派な建物でこの街の管理者が住んでいたと思われる。ただ、この港町が広いと言えども、そこは港町。立派な建物にもかかわらず庭はとても狭かった。エコには建物の中は壁の安全を確認してからと伝えた。
ほぼ壁にそってくるりと1周してきて最初の横に通る大きな道に戻った。この道は壁に埋め込まれていいる門に通じていた。また壁は海の直前までしっかりしていた。壁は防波堤へと続いていた。結論から言えばこの港町内は人にも魔獣に立ち入られたことがないという結論になった。皆さんとホッと安堵するのでした。




