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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
4章 大陸に生きる者編
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42話 新しい魔法

 僕とアスカは国王陛下ご夫妻と昼食をともにすることになった。せっかくのなので、国王陛下と王妃様への贈り物をこの場でお渡しさせてもらうことにした。ネレイ少佐にそのことを伝えて準備をお願いした。


 急な昼食会だったため、普段から国王陛下と王妃様が召し上がる昼食が僕たちにも出された。たくさんの料理が少しずつお皿に盛られている、見た目も楽しい料理だった。メリオス王国でもこのスタイルの昼食が出てきたことがあったので、貴族の世界では特別な形式ではないのだろう。お肉もお魚も野菜もバランスよく盛られていて、この料理は娘たちの成長にもいい効果がありそうだと、僕はアドラ料理長と検討してみたいと考えた。


 食事が終わり、デザートとお茶が出されるタイミングで、ネレイ少佐が国王陛下と王妃様に耳打ち。お2人が頷かれたので、贈り物をお渡しする機会をいただけそうだ。ワゴンに乗せられた箱と僕からのミスリルの剣とダイヤモンドの杖、それにフィーネ伯母上からのブレスレットもある。


 僕とアスカはイスから立ち、メリオス王国流の臣下の礼。



「ルディア国王陛下、メーリン王妃様、これらの品々はメリオス国王と王妃のフィーネ伯母上から献上するようにと渡されたものです。剣と杖は公爵家の私どもからの献上の品です。どうぞお納めください」


「メリオス国王と王妃殿に心より感謝するとお伝えしてくれ。しかしミスリルの剣とダイヤモンドの杖とは恐れ入った」



 王妃様はブレスレットを心待ちにされていたようで、フィーネ伯母上に心からの感謝をとお言葉をいただいた。王妃様はさっそくブレスレットを着用される。しっかり使えたようだ。王妃様からもお礼のメッセージを送ってくれるとのことだ。




 国王陛下は午後からの政務に向かわれえた。王妃様からはせっかくなので場所を変えてお茶にしましょうとお誘いを受ける。僕もアスカも特に用事はないので、ありがたくお受けすることにした。


 お茶会の席には僕たちの好みが伝わっているのか、数多くのスイーツも用意されていた。3人だけのお茶会なので、王妃様も僕たちも比較的リラックスした気分になっていた。



「公爵殿も38階層や40階層の階層主を倒せるのですよね?魔法ですよね?」


「はい、魔法で倒します。最近は妻に任せてばかりですけど」


「何を詠唱しているのかは聞いてはまずいのでしょうか?」


「大変申し訳ないのですが、お話しするのは難しいです。王妃様なら神殿絡みで止められていますとお伝えすれば、察していただけるでしょうか?」


「なるほど。ではこのお話しはここまで。飛び箱も物置もリュックもあのお方様案件ですか?飛び箱の魔法は聞いてみたかったのですが……」


「飛び箱はお話しすることは大丈夫だと思います。使われると王妃様のお身が危ないことになると思いますので、使用はお控えください。飛び箱は停止の魔法を使用しています。王妃様ならご存じかもしれませんね。アスカがボスの攻撃を受けるときも停止の魔法です。アスカの剣はボスの剣を受ける1瞬だけ使っているようですが、私の飛び箱は常に使い続けているので、普通の魔法士では浮かせることも大変だと思います」


「停止の魔法……昔の本に書かれていたような。私は反重力の魔法を使っているのかと思っていました」


「王妃様、すみません。私は反重力の魔法を知らないどころか、反重力という言葉も初めて聞きました」


「重力とは地面に物が落ちるときに地面から引っ張られる力のことなのです。なのでこの引っ張られる力と逆の方向に同じ力で引っ張ったらどうなるでしょう?物はその場でとどまることになるのです」


「王妃様、その魔法をご存じなのですか?私も古い魔法の本は読んだのですが、反重力の魔法については書かれていませんでした」


「ルディア王国の王国魔法のようです。王国魔法はいくつか書き残されていましたが、どれも古い文献で見つけられるものでした。ただ、反重力については、私も調べましたが他には見つけることができませんでした。見てみますか?」



 この王妃様のお言葉に、僕とアスカは驚いた。だって、ルディア共和国の秘中の秘と言えるほど貴重な魔法でしょ。僕はそのことを王妃様に聞いてみると、王妃様のお答えはあっさりしたものだった。



「公爵殿も奥方殿も何も隠すことなく見せてくれているではないですか。魔法など使える人が使って、世の中を便利にすればいいのです。1人でこっそり使えたところで、それは自己満足でしかありませんから。私たちはお湯を出す魔法が使えますが、お湯を出せる魔法士ですらこの大陸を見渡しても数える程度しか存在しないでしょう。もっと皆に伝えていければいいと思うのですが……」


「王妃様は私に反重力の魔法を教えてもいいとお考えなのですか?」


「ええ、もちろんです。私は誰彼かまわず魔法は教えているのですが、残念ながら人にはぜんぜん伝わらないもののようです」



 うーん、王妃様も僕と同じ悩みを抱えていたのですね。反重力の魔法、教えてもらえるなら教えて欲しいな……僕は恐る恐る王妃様にお話ししてみた。



「王妃様、失礼ながらお手を拝借してもよろしいでしょうか。できれば私と妻で片方ずつお借りしたいのです。それで2人には魔法は伝わると思います」


「それで伝わるのならかまいません」



 王妃様が僕たちに向かって両手を出してくださったので、僕とアスカは手をとらせていただいた。王妃様はテーブルに置かれていたフォークを浮かせてくれた。ふむふむ、確かにこの魔法は初めだ。今までのどの魔法とも違う。ただ、王妃様の魔力の流れを感じたので、もう大丈夫でしょう。僕がアスカを見ると、アスカも頷いた。



「王妃様、ありがとうございました。さっそくお見せしましょう」



 僕とアスカは王妃様と同様にフォークを浮かせてみせた。王妃様は簡単に覚えてしまうのですねと笑っていた。反重力の魔法は応用がきかない。重力の逆の力を与えるだけだ。ただ、魔力の消費はめっぽう少ない。それに重力を受けているすべてのものに効果があるそうで、地上のありとあらゆるものを持ち上げられるようだ。この魔法はかなり使える。ダンジョンでも魔獣やボスを浮かせて、槍でも突けば安全に倒せる。物を移動するのも魔法の手や板に乗せて物を運ぶなんてことは不要になる。ヒョイと持ち上げて、ホイと降ろすだけ。もうボタンさんに担いでもらわなくても大丈夫だ。


 僕が最も効果が高いと思ったのは、高速タイプの飛び箱。反重力は浮かせるだけ。でも浮いているのなら、風の魔法でも使えば前に進む。ヒナノさんの風の剣やチャミさんの風の玉なんて使ったら、とんでもない速度で飛べそうだ。近いうちに試してみよう。



「王妃様、この魔法は素晴らしいです。いろいろ使い道が思い浮かんで、今からワクワクしています」


「反重力の魔法でワクワクできるような使い方があるのですか?やはり公爵殿や奥方殿のように魔法を創造する力も大切なのですね」




 その後のお茶会はお互いの王国の世間話しに終始した。気さくな王妃様によってとても楽しい時間を過ごさせていただきました。


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