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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
4章 大陸に生きる者編
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36話 幸せの光景

 倉庫街へ行った翌日は、のんびり部屋で過ごすことにした。僕はフィル王国で手に入れた魔道具を1つ1つ使ってみた。どれも魔力をある程度消費するので、そこそこの魔法士でないと使えないかもしれない。ヒメミさんを呼んで一緒に見てもらいヒメミさんにも使ってみてもらったけど、ヒメミさんが使えたのは発熱する板だけだった。魔道具を使うのもコツがいるようです。ただ、これらの魔道具は使えると便利なものばかりなので、落ち着いたら魔力石と組み合わせて誰でも使える魔道具にしたい。


 アスカは部屋の女性たちにフィル王国で購入した生地をお土産にどうぞとお誘いして、誰はこの柄がいいとか、誰はこの色がいいとか楽しそうにおしゃべりしていた。もちろん娘たちも何か作ってもらえるだろう。




 僕たちがのんびり過ごしていると、部屋を訪ねてくる人がいた。2人の女性の近衛兵だった。玄関先で挨拶をされそうになったので、部屋の中でと言って部屋に入ってもらった。応接室に来てもらい、アスカにも参加してもらう。お2人は今回のルディア共和国への遠征で、僕たちの護衛役を務めてくれるラッサさんとメディさんだった。お2人とも剣と杖を携帯されているので、魔法士さんのようです。僕が前回も魔法士でしたねと尋ねると、最近の近衛兵団は僕たちがダンジョンで土の魔法で壁を作ったり、足元を泥にして倒したり、土の塊を投げたりが、要人警護には適していると判断されて、護衛。最近の近衛兵団では護衛の兵士の数が少人数の場合は魔法士が派遣されることが多くなっていると教えてくれた。もちろんお2人とも剣を振っても一流なのでしょう。国外へ出る公爵の護衛を任されるくらいだから。


 僕は公的な場所では公爵扱いを受け入れるけど、部屋などでは知人のようにふるまってくださいとお願いした。前回のレイナさんとリニアさんにも、食事を一緒にとり、居間で一緒にソファーに座って話したりお茶を飲んだりしてもらったと伝えた。お2人はレイナさんからそのことを聞いていたらしく、努力しますと言ってくれた。努力……するものかな?


 お2人には荷物は好きに用意してもらってかまわないとも伝えた。僕の物置のことも聞いているようで、荷物はお願いしたいと頼まれたのでもちろん了解ですと返事をした。お2人は明朝お部屋の前に伺いますと言いわれたので、僕は9時集合でお願いした。お互いに明日からは協力して頑張りましょうと励ましあってお別れした。




 お昼近くに父上も部屋にきてくれたので、皆でのんびり昼食を食べる。娘たちもだんだん食事の量も増えてきた。元気に成長してくれて嬉しい限りだ。午後は娘たちと遊ぶつもりでいたので、王宮の庭の散歩をして、花壇や温室の見学もさせてもらった。もぎたての果物もご馳走になった。池では魚が泳ぐ姿を眺め、カエルの姿を見つけてキャーキャー言いながら逃げていた(笑)僕はこの幸せな光景がとても嬉しく感謝の気持ちでいっぱいになる。



「アスカ、ありがとう。思い描いていた幸せの景色が、僕の目の前にある」


「そうですね、私たちはこの景色のために出会い、結婚したのかもしれません」



 僕がアスカの手を握っていると、娘たちはその姿を見て、お父様とお母様はいつも仲良しですねって笑っていた。うん、この幸せがいつまでも続くよう、僕はしっかり働くからね。


 散歩から戻り、いつものようにのんびり4人でお風呂に入る。娘たちが先にお風呂からあがれば、残るアスカと2人だけでまたのんびりした。


 お風呂からあがり、しばらく居間ですごしていると夕食の準備が整ったと声をかけられる。今夜はアドラ料理長が気合を入れたコースをご馳走しますと言ってくれたので、皆でとても楽しみにしていたのだ。もちろんお部屋の皆さんと一緒にとはいかないので、お部屋の皆さんには交代で食べてくださいとお願いしておいた。


 父上はビールの樽を用意してビールを飲む気満々です。僕たちも1杯だけビールをいただいて、その後は赤ワインです。娘たちは散歩のときにいただいたフルーツをジュースにしてもらって飲んでいた。アドラ料理長の渾身のコース料理はどれもおいしく、もちろんデザートは新作だった。ふんわり柔らかいチョコレートケーキの中はトロトロのチョコレートソースが入っていた。チョコレート好きの僕とアスカのために考えてくれたのだろう。最高に贅沢でおいしい料理でした。アドラ料理長、ごちそうさまでした。


 食事が終わればすぐに自室へ向かった。4人でベッドの上に寝転んで、歌を歌ったり、アスカが物語を聞かせたりした。いつのまにか2人は夢の中だった。僕とアスカもおやすみと言って目を閉じた。




 翌朝も朝の訓練とお風呂。朝食を食べてからお茶をいただく。そろそろ出発の時間となり父上に娘たちを預けて、僕とアスカは最後の支度をする。部屋から出ると部屋の皆さんが玄関前で集まってくれていた。僕とアスカが並んで立ち、留守のお部屋をお願いしますと言うと、かしこまりましたと請け負ってもらえる。メティスさんが扉を開いて庭に出る。多くの人が見送りに来てくれていた。僕は杖を高速の飛び箱に変形。出入り口とくちばしを開く。飛び箱の中に物置を置いて、テーブルとイスを用意する。ラッサさんとメディさんの荷物は物置の中に片付けた。これで準備完了です。


 僕たち4人で再び飛び箱の外へ出て整列。僕たちの前に国王陛下とフィーネ伯母上が立たれた。皆が臣下の礼でお言葉を待ち、国王陛下とフィーネ伯母上の激励のお言葉を賜る。皆が立ち上がり、飛び箱へ向かう。娘たちは父上とヒメミさんに手を繋がれながら手を振ってくれていた。僕とアスカも手を振り返し、飛び箱の中に乗り込んだ。


 ラッサさんとメディさんは飛び箱初搭乗なので、手すりにつかまりにっこり笑顔で手を振るようにと言うと、ぎこちない笑顔で手を振っていた。


 フィーネ伯母上が大きな声で「グラン、アスカ、任務をお願いします」と笑顔で手を振ってくれた。「フィーネ伯母上、お任せください」と答えた。


 父上には「しっかり勤めを果たしてこい、娘たちのことは俺がしっかり守ってやる」と言われた。「頑張ってきます。娘たちをよろしくお願いします」と答えた。


 お部屋の皆さんには「お留守の間のことはお任せください」と言われた。「留守の間の部屋をお願いします」と答えた。


 そして最後にアリスとアリサ。小さな手をいっぱい振りながら大きな声を出していた。



「お父様、お母様、いってらっしゃい」



 僕たちは目に涙をいっぱいにしながら答えた。



「2人とも、皆さんのいうことを聞いて元気に過ごしなさい。遠く離れていても、いつも2人のことを思っています」



 徐々に高度を上げてどんどん皆さんの姿が小さくなっていく。エコと方向を調整してくちばしを戻す。ゆっくりと速度を上げながら前進を始めた。数日ぶりのフィル王国王宮を目指します。


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