34話 ルディア共和国の情報収集
僕とアスカはお部屋の皆さんに集まってもらう。もちろん娘たちもアスカと手をつないで僕の話しを聞こうとしている。
「国王陛下からのご命令で、今度はルディア共和国へ行くことになりました。出発は3日後です。皆さんには準備をお願いします」
皆さんは帰ってきたばかりなのにって雰囲気でした。娘たちは何?って感じです。ちゃんと理解させてあげないとね。皆さんに解散してもらった後、僕とアスカはまず父上と話しをしに父上の屋敷へ行くことにした。
2人でグランとアスカですと玄関先で声をかける。セリエさんが出迎えてくれて屋敷の中へ招き入れてくれた。父上も部屋から降りてきてくれて。3人で話しを始める。
「父上、国王陛下のご命令で今度はルディア共和国へ行ってきます。3日に出発します。また、娘たちのことをお願いしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「ああ、孫のことは任せておけ。それにしても立て続けだな」
「フィル王国でのダンジョン攻略について話しを聞きたいそうです。フィル王国はルディア共和国とはお付き合いがあるようなので、38階層のボスを倒したのがルディア共和国の国王陛下に伝わったようです」
「まぁ、2人にとっては見分を広め他国の人と親交を深める良い機会でもある。こちらのことは心配せず、実り多い旅にしなさい」
その後、父上と娘たちをどうするかを話していると、アスカが父上に別荘に連れて行ってはどうかと提案する。セイラさんとセリエさんも連れて、ガンズさんとマルスさんに護衛もお願いできる。馬車は僕たちが手配すればいい。娘たちも喜ぶだろう。いい考えだ。
「お前たちの別荘を借りるとするか。思い切ってミライの皆にも声をかけて合宿というのもいいかもしれん。大勢と一緒に剣を振るのは娘たちにも刺激になるだろう」
父上が王宮に来てくれて、僕たちが出発と同時に娘たちを連れて屋敷に戻る段取りは前回と同じ。後のことは父上にお任せさえてもらった。
父上のお屋敷の後は、マイルさんのお店に向かう。今日は驚かせないように貴族街の入り口から入店しますかね。貴族街の門を通り、壁際に飛び箱を進める。僕たちに気付くと皆さんが会釈をしてくれる。最初は緊張していたが、今ではもう慣れた。マイルさんのお店の近くのケーキ屋さんで新作のケーキが発売されていた。もちろんアスカと寄り道です。ついでに他のケーキもいくつか購入して、物置の中に入れてしまう。再び飛び箱に乗り込み、マイルさんのお店に向かった。
僕たちが店内に入ると、マイルさんの娘さんのミズルさんが店内にいた。ミズルさんは主に王宮やお貴族様の担当をしている。なので、貴族街から入店するとお会いすることが多かった。マイルさんはお店にいるようなので、マイルさんとお話しさせてもらうことにした。ミズルさんは僕たちを応接室に案内してくれた。
マイルさんがお茶とケーキを持った店員さんと一緒に部屋に入ってきた。僕たちはルディア共和国に行くことになったと説明をした。
「マイルさん、ルディア共和国でお取引のある商会についてもう少しお話しをお聞きしたいのですが」
「お話しするのはかまいませんが、ルディア共和国とのお取引はあまりないのです。かなり遠いですから。私が1度お伺いし、ルディア共和国から当店に来られた商会も1店だけです。ビアンカ商会のビアンカさん。大きな商会でやり手の女性店主です。フラテル商会のアークさんとのお付き合いもあるので、公爵様ご夫妻がフラテル商会さんとお取引をしたことも含めて、新しい紹介状をご用意しましょう」
マイルさんはミズルさんを呼んでビアンカ商会への紹介状を用意するよう指示してくれた。紹介状で書きあがるまで、マイルさんからルディア共和国のことを伺った。
「とにかく大国です。メリオス王国が南の田舎の小国と思われるのも当然というくらい立派な王都です。人口も多く活気があります。共和国制にしてどうなるかと思われていましたが、人口が増えたことを良い方向に向けられたのは、ルディア国王陛下の政治手腕によるものでしょう」
「何かこちらから持ち込んで喜ばれそうなものはありますか?」
「国王陛下と王妃様にはミスリルの剣とダイヤモンドの杖がよいでしょう。国王陛下は剣士でもあり、王妃様はルディア共和国屈指の魔法士と聞いております。後は特にメリオス王国にあってルディア共和国にない物は思いつきません。ただ、お2人で自慢の品を持ち込まれるのがいいと思います」
「自慢の品ですか?どういうことでしょう?」
「例えば、お2人が好んで飲まれている赤ワイン。ルディア共和国ではそれほど飲まれているお酒ではなかったので、メリオス国王陛下も飲まれているワインですと言えば皆さん興味を持たれるでしょう」
「なるほど。マイルさん、フラテル商会を通じて販売予定のお茶なんかも喜ばれますかね?」
「ええ、お茶もいいですね。フィル王国でも好評だったのなら、ルディア共和国でも評価を得られるのは間違いないです。お茶ならご婦人にも喜ばれます」
「男性には赤ワイン、女性には紅茶……お子さん向けにも何か考えて、皆さんが喜ばれるようなものを持ち込むようにしてみます。お茶については倉庫街で仕入れさせてもらいますね」
僕はここのところマイルさんにお世話になってばかりなので、ダイヤモンドのプレートをお渡しする。マイルさんは何でしょう?だった。
「マイルさん、フィーネ伯母上が白結晶石のブレスレットを着けているでしょ。あれは魔道具で王国ではあれを使って遠隔の人とも話しをしています。私がこのダイヤモンドのプレートを作成したことで、白結晶石の代替えが可能になり、王宮内で広げる方向に動いています。外部記憶装置とつなげる必要があるのと魔法士でないと使えないのですが、例えばマイルさんがこの店から、倉庫街にいるボタンさんと直接お話ししたりもできるという感じの魔道具です」
「ええっ!そのような便利なものがこの世に存在していたのですか!」
「王宮の1部の人には以前から使われていました。フィーネ伯母上と母で開発したようです。王宮でも便利に使っていますが、他国の商会と話せるようになるのは、大きな商会の皆さんにもメリットが多いでしょうし、商売拡大となれば王国にもメリットになりますから」
「王国とも他国ともお話しを進めていただけると、本当に嬉しく思います」
「ただ、マイルさん。マイル商会は公爵が肩入れしている商会だと思われる覚悟が必要ですよ」
「それこそ公爵家が肩入れしている商会と噂になれば、他国の商会とのお取引もスムーズに進みます。こちらとしてはとてもありがたいことです」
「分かりました。とりあえずはビアンカ商会にマイル商会を頼むと伝えておきましょう。ビアンカさんにもワインとお茶はお土産として渡しておきますね」
マイルさんから紹介状を受け取り、お店を後にした。帰り際にミズルさんから姫様たちにと言われて2つの髪留めをプレゼントされた。僕とアスカはお礼を言ってありがたく頂戴した。きっとダイヤモンドのプレートのお礼なのですよね、さすがはマイルさんです(笑)




