33話 正式な要請
ガデンさんとエイラさんをお屋敷まで送って、僕たちも王宮のお部屋に戻る。お茶を飲んでいるほど時間がなかったので、娘たちの勉強の様子をこっそり覗いてみた。メティスさんが算数を教えてくれていた。娘たちは2人でああだこうだ言いながら計算式を解いているとのこと。勉強はしっかり進んでいるようだ。
ヒメミさんに娘たちの勉強について聞いてみると、メティスさんがわざわざ問題集を作ってくれて、それを娘たちが解く形式で進めてくれているそうだ。問題集にしておけば、ダンジョンでも別のお屋敷にお泊りに行くでも問題集だけ持っていけば、時間が空けば勉強ができるからだ。なので1日でこれだけと決めず。この期間でこれだけやりましょうがお約束なのだそうだ。メティスさんらしい細かい指導法です(笑)
時間となったのでヒメミさんに案内されながらフィーネ伯母上に指定された部屋に向かった。確かこじんまりした部屋だったと記憶している。ヒメミさんが僕たちの到着を告げて部屋に入ると、国王陛下とフィーネ伯母上が座っていた。僕たちが到着が遅れたことを謝罪し席に着く。すぐにフィーネ伯母上がお話しを始めた。
「グラン、アスカ、急に呼び出してごめんなさい。フィル王国のシャナ様から内々には連絡を受けていたのだけど、今朝にお話しして正式な要請として受けたの。2人にはフィル王国を経由して、ルディア共和国へ行ってもらう。これはルディア共和国がフィル王国を通してメリオス王国に対する正式な要請。要請の内容はフィル王国で行ったダンジョン攻略についての話しを聞かせて欲しいのだとか。帰ってきたばかりで申し訳ないのだけど、ルディア共和国とはほとんどお付き合いをしていなかったから、今回の要請に応じて対話の環境を築いておきたいの」
「分かりました。いつ出発すればいいですか?」
「フィル王国のスピナ様があなたたちの饗応役をしてくれていた人ね?スピナ様と話して予定は決めていいです」
「分かりました。食事会の後にスピナ様にメッセージを送っておきます」
それから4人で食事をしながら、ルディア共和国について聞かせてもらった。もともとはルディア王国だったそうだが、大陸の北が魔獣の住みかとなってしまったため、大勢の人がルディア王国に逃げてきた。幸いルディア王国は大陸でもっとも大きく領地も広かったため、避難民をどんどん受け入れた。ただ、避難民にお願いしたのは、自分たちの住む場所は自分たちで開拓すること。もちろん開拓のための支援はルディア王国もし続けた。そして避難民の生活が落ち着いてきたところで、昔の国のように独立した行政権を持つ領地にしてはどうかとルディア王国が提案。避難民はその提案を受け入れ、領地を祖国のような自治を行う体制にした。ルディア王国と魔獣に滅ぼされた国の独立した領地の集まりでルディア共和国が誕生したそうだ。
この話しを聞くと、ルディア共和国の国王陛下は何と慈悲深い名君であることか。1度お会いしてお話しを聞いてみたい。ルディア国王陛下についてはフィーネ伯母上から、かなり豪快な性格と聞き、メーリン王妃様はルディア共和国屈指の魔法士とも聞かされた。フィル王国以上に魔道具が豊富なのかな?魔道具を買って帰ってくるのが楽しみです。
食事を終えて、国王陛下とフィーネ伯母上には日程を決めたらご報告しますと伝えて、僕たちも部屋へ戻った。
部屋に戻るとすぐにエコにお願いしてスピナさんの都合のいい時にお話ししたいとメッセージを送った。すぐに返事が来て今でもお話し可能ですとのことだ。アスカにも参加してもらって、まずは話しをしてみよう。
「アスカ、スピナさんが今すぐでも話せると返事をくれたから、今からスピナさんと話そうと思う。アスカにも参加してほしいのだけどいいかな?」
「はい、私も問題ありません。執務室でお話ししましょう」
僕とアスカは執務室に行って、2人並んでソファーに座る。念のため紙とペンも用意してメモも取れるように準備した。
『エコ、アスカとスぺイスのスピナさんと3人で話したい。よろしくね』
『了解です……スぺイスのスピナと繋がりました』
『スピナさん、こんにちは。この会話にはアスカも参加しています』
『こんにちは、アスカです。またお話しできて嬉しいです』
『公爵様、奥方様、急な要請で驚きました。私が今回も公爵様ご夫妻の饗応役を担当します。実は私はルディア共和国に行ったことがあり、ルディア国王陛下ともお会いしたことがあるのです。まだ子供の頃でしたけど。どちらとも面識がある私が今回も大抜擢です。お2人とルディア共和国までご一緒します』
『スピナさんがご一緒なら心強いです。私と妻は旅の荷物をほどく前に要請が届いたので、いつでも出発可能なのですが、スピナさんはお支度はいかがですか?』
『私の荷物も公爵様の物置?に入れていただいてもいいですか?』
『ええ、もちろんかまいませんよ』
『では、3日後のお昼ごろに前回出発された王宮のお庭にお越しください。前回お使いいただいたお部屋でお昼を食べてからルディア王国に向かいましょう。今回はフィル王国もルディア共和国も国境での入国手続きは不要とのことで、そのまま飛び箱?で直接飛んできてください』
『了解しました。私たちの護衛のメンバーが決まったら、またご連絡します』
『はい、お待ちしております。こちらも何かあればご連絡します』
これで出発日については確定。フィーネ伯母上に3日後の12時にフィル王国到着予定で王都を出発します。護衛の人選が決まったらご連絡くださいとメッセージを送っておいた。
僕たちもお部屋の皆さんを呼んで、ルディア共和国に行くことをお伝えしないと。帰ってきたばかりなのにと思われるよね。娘たちがどんな反応をするのか心配です(涙)




