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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
4章 大陸に生きる者編
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30話 帰還報告の食事会

 食事会の会場には、国王陛下ご家族までが僕たちを迎えてくれた。これにはアスカ共々恐縮してしまう。娘たちは皇太子様と姫様の姿を見つけて、すぐにそばへ行きたがった、ご挨拶をしてからですとアスカに叱られていた。国王陛下が今夜は公爵家族のための会だから無礼講でよいと言ってくださり、娘たちはお2人のところへ行ってしまった。フィーネ伯母上がせっかくだからと子供たちだけの席を用意するよう指示してくれて、ヒメミさんもすぐに席の用意に動いてくれた。


 バストンさんに席に案内してもらい、僕、アスカ、父上の順に席に着いた。すぐにシャンパンが配られて乾杯する。まずは皆さまからお土産のお礼を言われた。さすがに他国の街を自由に買い物とはいかなかったので、マイルさんの商会と取引のあるフラテル商会で買い物をしたことを伝えた。国王陛下も宰相様もフラテル商会のことはご存じだった。


 まずは公務のお話しからとなり、フィル国王陛下のことをお話しした。穏やかな性格の国王陛下で、その人柄が王国の気風のように感じたことを伝えた。シャナ王妃様とフィーネ伯母上はすでにネックレスを通じて何度も話しをしているそうだ。お互いに良き話し相手ができたと喜んでいた。僕は良い機会だと思い、リュックから紙とペンを取り出す。報告を続けながらフィル国王陛下とシャナ王妃様の顔のアップの絵と、晩餐会の服装の全身のお姿の絵を描き始めた。


 ダンジョンは3カ所あり、王都に最も近いダンジョンでダンジョンの攻略が行われていて、他のダンジョンは見張り程度の討伐を行っているだけだったと報告した。特に3つ目のダンジョンはあまり魔獣の討伐が行われていないためか、ダンジョン内の魔力が強く魔獣の数が多かった。そのことから、魔獣の討伐は続けないと、魔獣がダンジョンの外まで出てきてしまう可能性がありそうだと僕の推測もお伝えした。この話しには父上も補足してくれた。先代の国王陛下の時代に、ダンジョン内の魔獣の数が増えたことがあり、近衛兵団と冒険者が協力してダンジョン攻略を行ったことを話してくれた。それからは近衛兵団が20階層までは魔獣とボスの討伐を行うようになり、ダンジョンの外の魔獣も激減したそうだ。うむ、父上のお話しとも辻褄が合うようです。38階層のボスに対して過剰とも思えるほどの無謀な攻略を推し進めていたことと、僕やアスカの魔法や戦い方を知ろうと必死になっていたことも伝えた。これは王国軍や魔法士団の一部に功績を上げたい人たちがいると思われ、内部統制はメリオス王国ほど取れてないことも話した。最もメリオス王国とて、魔法関連の貴族や機関で随分と不正が横行していたのだけどね。


 武器職人と話す機会があったので、アスカのミスリルの剣を見せると、ミスリルほど固い金属はフィル王国にはないと教えられたことを伝える。ただ、複数の金属を混ぜ合わせた合金を作ることによって、固い金属を作っていたことも話す。冒険者が使用している金属よりも合金は軽くて固いようなので、合金の研究を王国内でも進めて欲しいとお願いした。今回のお土産で持ち帰った剣や鎧はその合金で作られているものだとも伝えた。




 僕は話しながら描き終えた4枚の絵を、アスカに見せる。



「完璧な絵ですよ、旦那様」



 アスカのお墨付きをもらったところで、バストンさんに絵を渡し、国王陛下にお渡しをお願いする。僕の描く絵はとてもリアルな写実的な絵なので、お2人の表情も雰囲気も伝わることだろう。国王陛下から順に皆さまが絵を手にされ、ほうほうこんな国王と王妃かと興味深そうだった。


 フィーネ伯母上からはフィル王国の生活ぶりについて聞かれた。まず、お借りした部屋も王宮内のお部屋も玄関が広く、玄関の中にもソファーが置かれているのに驚いたことを話した。実に合理的で、簡単な話しは玄関のソファーで済ませてしまう。長い話しになる場合や親しい人は部屋の中に招くといった使い方をしていたと伝えた。皆さんがそれは便利だと興味を持たれた。貴族の生活ぶりはそれほど変わらず、かえってメリオス王国とほとんど同じなことに驚いたことも話した。フィル王国で目を引いたのが、服は柄の生地が多かったこと。メリオス王国のように無地の生地に刺しゅうをするのではなく、最初から柄が入っているので、見た目が華やかだったことを伝え、お土産でお配りした布を確認してほしいとお願いした。アスカからは柄の布に刺繍を施すと、とてもエレガントになるだろうと話しをして、フィーネ伯母上が試してみましょうと請け負ってくれた。


 食事は小麦や肉をメリオス王国からも購入しているとも聞き、かえって食べている食材はメリオス王国より多彩だったと伝えた。魚やコメも食べる食文化で、肉やパンも食べていたと話した。お酒は白ワインでした!と話すと皆さんに笑われた。メリオス王国からは輸入が多いと商会の人が話していたので、フィル王国からの輸入を増やした方が公平感が出ていいと感じたことも伝えた。ちなみに僕はマイル商会に頼んでフィル王国のお茶を独占購入するつもりだと話した。このお茶を公爵家主催のお茶会でお出しする名物のお茶にするのだと自慢する。皆さんはずるいって顔をされたけど、現地に行った人の役得です(笑)


 そして最後に重要なお知らせ。フィル王国の魔道具の普及はとてつもない数だったと伝えた。日常に魔道具が使われていて、フラテル商会でも普通に販売されていたし、購入して持ち帰ってきたことも話す。この王国でも魔道具を積極的に利用し、困窮している魔法士の働く場に活用した方がいいと力説した。フィーネ伯母上に献上したダイヤモンドのブレスレットを普及させ、より王国全土に情報網を広げる重要性も説いた。




 ここで皇太子様が声をかけてくださった。娘たちが眠そうだと。国王陛下も僕たちが疲れているだろうからと、今夜はお開きとなった。皇太子様と姫様に娘たちの面倒を見てくれたことに感謝を伝えると、皇太子様と姫様からも珍しいお土産をありがとうとお礼を言われた。


 帰り際にリュックから白ワインを2本出して、バストンさんとバスターさんにお土産ですと手渡した。もちろんお2人にはお味の感想を聞かせてくださいねとお願いしておいた。


 娘たちはアスカとヒメミさんに抱っこされて気持ちよさそうだ。部屋に戻ったら父上と飲みなおそう。やはりメリオス王国の夜は穏やかで幸せいっぱいだ。


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