29話 王都帰還のご挨拶
僕とアスカは無事にメリオス王国へ入国。その足で近衛兵団出張所の訓練場へ向かった。近衛兵団の皆さんが僕たちの到着を待っていてくれたようで、大勢の人が集まってくれていた。
レイナさんとリニアさんとはここでお別れ。近衛兵団の出張所で報告をしてから王都への帰還となるようだ。レイナさんとリニアさんとも固く握手を交わし、また王都でお会いしましょうと言って別れた。
飛び箱に乗り込み、皆さんに手を振りながら飛び箱を飛ばす。エコと方向を調整してくちばしを戻せば出発準備完了です。フィーネ伯母上にもこれから王宮に戻るとメッセージを送ると、王宮の部屋の前の庭に着陸していいと返事が返ってきた。さぁ、王都に帰りましょう!
エコの指示に従い、ゆっくり飛び箱の高度を下げる。近くに人がいないのを確認しながら降りていき無事に着陸。僕はアスカに早く娘たちにと言って先に飛び箱から降ろす。僕は後片付けを済ませてから飛び箱を降り、飛び箱を杖に戻した。僕の後片付けが終わると、部屋の皆さんがお帰りなさいませと出迎えてくれた。娘たちもアスカの手を握りながら真似をしてお辞儀をしていた。父上も来てくれていた。僕は皆に向かって、「ただ今無事に戻りました。留守の間を守っていただき、ありがとうございました」と挨拶を返した。
娘たちを代わる代わるに抱っこした。これをするために、僕もアスカもフィル王国で苦労をしてきたのだ。やっと報われた。僕はアリスを肩車して部屋の玄関へ。アスカはアリサの手を引いていた。その後ろに父上もついてきてくれた。
まずは居間のソファーに腰かけて、お茶をいただくことにした。お茶はリシテさんがいれて、アドラ料理長が新作のお菓子を振舞ってくれた。メティスさんとヒメミさんにもソファーに腰かけてもらい、留守の間の報告をしてもらった。お部屋としては特に報告することはなかったようだ。まずはひと安心。父上からは娘たちをダンジョンに連れて行ったこと。2人は随分と剣の腕が上達していて、ガンズさんもマルスさんもアスカの娘だなと感心してくれていたそうだ。娘たちもおじいさん3人に剣を褒められて自信を深めていたようだ。それに父上は面白いことも教えてくれた。2人の娘は連携しながら戦っていたと。うむ、これは頼もしい。2人同時に立ち合いをしてやるのも訓練に追加しよう。将来は2対2の立ち合いもいいかもしれない。
グリス伯父上とガルム伯父上の屋敷にもそれぞれ連れて行ってくれて、数日お屋敷に滞在させてもらったそうだ。伯父上たちのところにもお土産を届けがてらお礼に伺わなければ。
何よりもずっと娘たちの面倒を見てくれた、父上には心から感謝を述べた。父上が預かってくれたから、僕もアスカも安心して戦ってこれたとお礼を言った。父上は孫娘と過ごせて、楽しかったと笑っていた。父上も随分と歳をとって穏やかになられたようだ。父上にはもう1泊してもらって、明日に僕たち親子が送って帰ることにした。庶民街の皆さんにもお土産を配ってくるのにちょうどいいだろう。
メティスさんに、国王陛下とフィーネ伯母上に帰国の報告をしたいと話すと、すぐに調整に動いてくれた。返事がすぐに返ってきたようで、今夜食事に招かれた。娘たちと父上も連れてこいだそうだ。皇太子様と姫様も参加くださるのかもしれない。
そうと決まれば僕たち家族4人でお風呂にはいることにした。その間にフィル王国で購入してきたお土産を、誰に何を持っていくかの検討をメティスさんとヒメミさんにお願いした。何せ数が多いし、鎧などの大物も数があったので、引き受けてくれたメティスさんがうんざりするほどだった(笑)
4人で湯船に浸かっていると、娘たちは代わる代わるに僕たちが留守の間のことを話してくれた。どこへ行っても楽しかったと話してくれたが、僕とアスカがいないのはやはり寂しいと言っていた。僕とアスカが娘たちを抱っこして、アスカはこれからは4人一緒ですよと安心させていた。
アスカが娘たちをヒメミさんに預け、2人で再び湯舟の中に。僕はアスカの手を握って、旅の間の協力に感謝した。アスカはフィル王国での僕は立派に公爵の勤めを果たしていたと褒めてくれた。しばらく肩を寄せ合ってのんびりお風呂を楽しんだ。
アスカは娘たちを呼んで、お土産を見せるとのこと。僕はフィーネ伯母上に会うのならと、ブレスレット用のダイヤモンドの加工をすることにした。ただ、僕はあまりアクセサリーに詳しくないので、ヒメミさんに協力してもらうことにした。ヒメミさんの話しでは、お仕事をする人も着けるブレスレットなので、じゃらじゃらしない物がいいとのこと。僕はダイヤモンドのプレートを作ってみた。ヒメミさんはわざわざ鎖を用意してくれて。試しにブレスレットを着けてくれた。手を振ってもいい感じのようで、ロイヤルプレースとの会話もちゃんとできるとのことだ。僕は試作品1号をヒメミさんにプレゼントした。ヒメミさんは白結晶石のブレスレットはとても高価な物でいつも神経を使っていたそうだ。もちろんダイヤモンドも高価ではあるけど、僕がダンジョンで採取していることも知っているので、気軽に使わせていただきますとありがたがっていた。ヒメミさんの使用感が上々だったので、僕はとりあえず100個のダイヤモンドのプレートを作り、布の袋にまとめて入れておいた。
メティスさんのところに追加連絡があったようで、国王陛下からは今夜は内輪の食事会にするとのことだ。国王陛下ご家族、宰相様ご夫妻、近衛兵団団長ご夫妻、それに僕たち家族と父上。メティスさんには参加される方々に前もってお土産を届けてもらった。フィーネ伯母上にはダイヤモンドのプレートも届けてもらった。
そろそろ時間となって、新しい飛び箱を用意した。今日は娘たちもいるので、メティスさんとヒメミさんにも給仕をお願いしている。新しい飛び箱は10人乗りだから皆で乗れます。ゆっくり王宮の庭の脇を飛び箱で進むと、僕たちに気付いた王宮の皆さんがお帰りなさいませと声をかけてくれた。僕たち家族は無事に帰ってきましたと手を振った。
メティスさんにここでと言われて飛び箱を止める。飛び箱を片付けて部屋の前に皆で向かう。部屋の前ではバスターさんが待っていてくれて、お互いににっこり笑顔で会釈をした。バスターさんが僕たちの到着を告げてくれる。
「公爵様ご家族とグリム様がお部屋に到着されました」
このメリオス王国風の入場が久しぶりな気がして、帰ってきた気にさせてくれました。




