27話 3つ目のダンジョン
3度目の会議で発表されたのは、2度目のメンバーと変更がないこと。2度目のときのわだかまりはもうない。そしてこの人選は功を奏することになる。
前回は東へ向けて飛び箱を飛ばしたが、今回は西側へ向けて出発をする。王都より西は比較的人の住む場所が少ないらしく、ダンジョンの攻略もあまり積極的には行われていないとのことだ。それでもダンジョンの入り口近くには王国軍の駐屯地が存在する。ただ、兵の数でも他の駐屯地と比べると少ないらしい。
飛び箱を下降させダンジョン入り口近くの開けた場所に着陸する。王国軍の皆さんが出迎えてくれた。少し遅い時間だったが駐屯地の食堂で昼食をご馳走になる。ここでも士官用の食事を提供してくれた。僕とアスカは元々庶民の出なので、この食事でも十分なのだが、お貴族の皆さんにはあまり口に合わなかったようだ。
食事を終え、駐屯地の皆さんにお礼を言いながらダンジョンの中にはいる。僕は思わずしかめっ面をしてしまう。魔力が濃いのだ。今までに3カ所のダンジョンに入ったが、ここは特別様子がおかしい。ただ、第1階層で危険もないだろうとは思い、いつものように飛び箱を用意した。
飛び箱を天井近くまで上昇させ階層の中央へ向かう。まずは魔獣を対象にサーチ。うーん、魔獣の数は少し多いくらいかな。特に異常はないようだ。僕は魔弾を使って階層内の魔獣を倒して進む。違和感は感じながらも特に支障はない。ただ、時間がかかっていることで魔獣の数が多いのは間違いがないようだ。
明らかに魔獣の数が多いと感じたのは18階層辺りから。サーチで見ても光っている数が多い。国王軍が魔獣を狩っているのはこの辺までなのかもしれない。それでも支障なく魔獣を倒してすすむ。
アスカにボス討伐をお願いする25階層に到着する。この階層も魔獣が多いので、まずは魔獣を一掃する。ボスを避けるようにしながら魔獣を倒し終えたところで、飛び箱を着陸させてアスカと地上へ。アスカは剣を抜き突きを放てば一瞬でボスを倒してしまう。時間はかかってもこの討伐方法で進むことにした。
28階層で3日目の野営をすることにした。この頃にはもう、ダンジョン経験者の人は魔獣の多さを感じていたようだ。僕がガラナ軍団長に聞いてみると、王国軍の確実な討伐対象階層が15階層まで。その後は余裕があれば下層階を目指すことになっているそうで、駐屯地の皆さんは任務をしっかり遂行しているのが分かる。このダンジョンは攻略を主にせずダンジョンの警戒を目的にしているので、遺体や魔道具の発見はない。その点は気持ちがとても楽でいい。もうここまでくると、人はこの先には足を踏み入れたことがないのだろう。
気分が沈み気味なのも嫌なので、シャワーを終えた後に皆でお酒を飲むことにした。フィル王国の皆さんにメリオス王国のダンジョン内の野営はこれほど快適なのかと質問された。その質問にはアスカが答えてくれて、水を飲むのも苦労するほどと答えると、どの国も一緒だと共感していた。公爵になるような人はやはり特別なのだとも言われた。元孤児の庶民としては耳が痛いです。
翌日も魔獣の多さに閉口しながら魔獣を狩りつつ先に進む。進むペースは上がらないが、安全第一に進んでいるのだと納得しながら同じ討伐を繰り返した。ただ悪いことばかりでもなかった。これだけ大量の魔獣もボスも倒して進んできた影響か、ダンジョンから感じていた魔力の濃さが薄れてきたような気がする。ダンジョンだってあれだけの魔獣を生み出すとなると、大量の魔力が必要なのかもしれない。
4日目の野営は35階層。いよいよ明日は38階層のボスと戦うことになる。また、スピナさんにお願いして、シャナ王妃様への報告で魔獣の数が多くて進みは遅れ気味だが、皆が無事に任務を遂行していると伝えてもらった。僕は皆さんにこのダンジョンに入った時から魔力の濃さを感じていたこと。ここまでの討伐でその魔力の濃さが薄れてきたことを伝えた。そして今回は39階層のボスまでを倒そうかと考えていることを伝える。理由は単純で魔獣がいるのが39階層までだからだ。そのことを話すかどうか迷ったけど、アスカは気にせず話してくださいって感じだった。僕は正直に魔獣がいるのは39階層までで、40階層から下はボスのみが存在していると思われることを話した。なので濃い魔力の影響を抑える目的なら39階層までの討伐が効果が高いだろうと伝えた。
僕の迷いにはガラナ軍団長が倒してくださいと発言することで解消した。王国軍でも、ダンジョン近くの地上でも魔獣が増えているのではないかと疑われていたとのこと。魔力の濃さの影響の可能性があり、討伐をすることで魔力を抑えられる可能性があるのなら、ぜひ討伐をしてほしいとお願いされた。もちろん僕もアスカも了解しましたと返事をした。
5日目となった。討伐は今日で終わるだろう。皆で飛び箱に乗り込んで、36階層に進む。変わらぬ手順で階層を進んでいく。目標の38階層に到着。魔獣を一掃してボスのみを残している。僕はフィル王国を代表する剣士と魔法士がいるのだからと思い、戦ってみますか?と聞いてみた。フィル王国の皆さんはぜひと言ったけど、戦えるわけはないわよねって感じだった。僕はリュックから久しぶりにミスリルのリングを取り出して、ボスを中心に大きく広げる。いつものように肘の下あたりでリングを縮めてボスの身動きを封じる。念のため足もリングで縛る。ボスはしばらくもがいた後、バランスを崩して倒れてしまう。この状態でもう安全でしょう。皆さんと飛び箱を降りてボスのそばへ。アスカが最大の警戒をしてくれているので、皆さんには剣を振るなり魔法をかけるなりしてもらった。皆さんが何をしたことろで、ボスは傷の1つも付けることができなかった。皆さんがあきらめたところでアスカに討伐を頼む。アスカはいつもの調子で2度の突きでボスを倒してしまう。他国からも世界最強の剣士と認識されているアスカの強さを、きっと強く実感されたでしょう。僕の奥さんは最高です!
39階層もリングを使おうと思ったけど、皆さんがもういいですと言うので、アスカにボスを倒してもらった。もちろん2度突くだけで終了です。
39階層からは2日間で地上に戻った。地上に出たのは夕方だったので、駐屯地に泊めてもらうことになった。翌朝、駐屯地のお見送りを受けながら、僕たちは王都に帰還しるのでした。




