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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
4章 大陸に生きる者編
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24話 永久機関

 次のダンジョン遠征までは休暇となった。ただ、僕たちは他国にいるので自由に屋敷の外を行動するわけにもいかない。もちろん、僕はアークさんの商会で購入した魔道具の研究、アスカは娘たちの帽子を編むことで時間を潰すことはできた。何もできないのも寂しいので、僕はダメもとで図書館などの本の閲覧が可能な場所に行きたいとの要望を出してみた。ナイアさんが王宮に問い合わせてくれた結果、あっさり閲覧の許可をいただけてしまった。僕はアスカにも付き合ってもらって、まずは王宮の図書館に行ってみることにした。


 図書館は新しい立派な建物だったが、蔵書の量はメリオス王国とそれほど変わらなかった。僕とアスカは手分けして、背表紙をざっと見て回った。エコが未登録ですと教えてくれた本を手に取り。席へ移動する。僕もアスカも本を読むのではなく、本を見るだけだ。ページをペラペラとめくっていき、最後のページまで見終えれば読書終了。もちろんしっかり見えていなかったページには、エコに見直しをお願いされた。ただ、エコに未登録と言われた本はそれほどなくて、夕方までにはすべての本の確認を終えた。


 翌日は魔法士団の事務所に行って、本の閲覧室を訪れた。こちらは蔵書の数も少なかったし、エコにお願いされた本もなかった。こうしてみると、アークさんの商会がいかに本の在庫が豊富だったかがうかがえる。


 その後はダンジョンに行く前に、食料の調達にアークさんのところへ行ければ十分なので、部屋に引きこもって休暇を過ごすことになった。




 僕がアークさんのお店で手に入れた水時計は、やはりとても興味深い魔道具だった。そして僕の仮説についてエコに話しを聞いてもらうことにした。



『エコに聞きたいことがあるんだけどいいかな。僕の作ったダイヤモンドの杖は、杖の中に魔力が蓄えられて、魔力が満たされると魔力の吸収?が止まる。そんな感じかな?』


『仕組みとしては違いますが。動きとしては正しいです』


『エコ、僕は考えたんだ。杖に魔方陣を組み込めば、いつまでも動き続ける魔道具になるんじゃないかと。地面にでも差しておけば永遠に動き続けてくれそうだ』


『……グラン、アスカ、創造主様がお話しになります』



 ええっ、僕は何もしてないよ。何かまずいことでもしてたのかな?



『創造主様、こんにちは。グランです。今日はどのようなご用件でしょうか?』


『エコリアスに永久機関について問い合わせをしたとか。グランとアスカの目的は何ですか?』


『創造主様、永久機関とは何ですか?』


『外部からのエネルギー供給を受けることなく、動き続けられる装置のことです』


『エネルギー?魔力のことですか?』


『魔力もエネルギーの一種です』


『創造主様、永久機関は創造主様がお話しをされるほど、恐ろしいものなのでしょうか?もちろん創造主様が危険と言われれば、永久機関については一生触れないことをお約束します』


『グランとアスカは永久機関で何をするつもりなのですか?』


『できたらいいなと考えたものが2つあります。1つはダンジョンで水を生み出す魔道具が作れればと思いました。フィル王国に来て水時計という魔道具を見つけました。魔力を与えると水滴が落ちる時計だったので、これを参考にすればダンジョンで水の供給を受けられる魔道具が作れそうだと考えました。そして、杖の魔力でこれを動かせられれば、魔法が使えない人でも水の供給を受けられるだろうと考えたのです』


『わかりました。では、もう1つは?』


『創造主様、これも私の仮説なのですが、魔獣やボスを生み出すためには多くの魔力が必要ではないかと考えています。そもそも魔獣やボスを形成しているのは魔力と思われますし、内部の石に傷をつけるとその体を維持できないのは、魔力供給が不足してしまうからではないでしょうか?ダンジョン内には膨大な魔力が蓄えられています。下層の魔力を取り除くのは無理かもしれませんが、上層の魔力だけでも使い尽くすことができれば、魔獣やボスは下層にとどまり続け上層には来ない……いや、来れない可能性があります。可能性があれば試してみたいです。もちろん創造主様のお許しをいただければのお話しですが。今回、フィル王国のダンジョンに初めて入ってみましたが、亡くなられた方はひどい有様でそのまま放置されています。ダンジョンは地獄と言っても過言ではありません。私やアスカの両親は魔獣に殺されましたが、最近は地上で魔獣を見かけることは少なくなったと感じます。ダンジョンの攻略が順調だからからではないでしょうか?すみません、長々とお話ししてしまって。でも、私は娘たちや将来の孫たちのためにも、穏やかに生きていける世界を残せる努力は続けたいと思います』


『グランは大陸の平穏のために利用することを考えているのですか……エコリアス、あなたの意見は?』


『グランとアスカです。心配には及ばないかと。私が2人のそばにおりますし』


『毎回、それで誤魔化されているような……まあ、いいでしょう。2人には大陸への貢献を期待しています。特別に許可しましょう。グランとアスカのみです。しかし、これで許可を出すのは3つめです。特別視し過ぎでしょか?』


『創造主様、それだけ2人に期待されているのです。そして、2人はその期待に応えようと、しっかり努力しています。現在は大陸にとってかなり危険な状態だと推測します。もう少し2人に力を貸してもいいと思いますが……』


『2人のことは、しばらくエコリアスに任せることにします。エコリアスの判断で2人に知恵と力を授けることも許します。ただ、何かあればエコリアスの責任にもなってしまいますよ』


『かしこまりました』


『グラン、アスカ、大陸のことを頼みます』



 僕とアスカの意識が戻ったことで、僕たちは居間のソファーに座っていた。



「アスカ、心配させてしまってごめんね。それにしても、最近は創造主様に呼ばれてしまうことが多い。僕は良くないものを作り続けているのかな?」


「旦那様が本当に危険な物を作ったときには、創造主様が止めてくださると考えてはいかがですか?エコも創造主様も見守ってくれていると前向きに考ええて、どんどん思い付きを形にされればいいと思いますよ」



 僕とアスカが話していると、エコも会話に参加してきた。



『そうです、アスカの言う通りです。グランは思いついた物をどんどん作ってみてください。この世に何を作り出したところで、悪人は悪いことに使うことを考えてしまうのです。それを恐れて何も作らないことこそ、何もしないことと同じになってしまいます』



『ありがとう、エコ。これからもエコに相談しながらいろいろ作ってみる。それと、エコ。最近の創造主様は大陸?というお言葉を口にされるけど、僕たちが生きているこの大陸のことだよね?僕とアスカがこの大陸の助けになるようなことをすることができるの?』


『そうですね……きっともう少し先に進めば、グランとアスカはこの大陸のことを知ることができるでしょう。そして、その知ったことへの対処に、今までのグランとアスカの経験を生かすことができるでしょう。創造主様は心配をされていましたが、私はグランの作ろうとしている、杖と魔法陣による魔道具を楽しみにしているのです』



 エコが応援してくれたことで、僕は研究を続けることにした。きっと危ないことならエコが怒ってくれるでしょう……怒ってね(汗)


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