18話 フィル王国でのダンジョン攻略開始
翌朝は時間もないので朝の訓練は中止した。僕たちが訓練すると言い出すと、皆さんが付き添う必要があるでしょうからね。アスカと2人でお風呂だけ入って、すぐにダンジョンへ向かう服を着てしまう。僕たちはダンジョンに行くときも、多少飾り気の少ない程度の公爵の制服だ。僕もアスカもこの制服を賜ったことを誇りに思っている。だからなるべくこの制服を着用して行動をしている。他国のダンジョンで戦闘ともなればなおさらだ。
メリオス王国の近衛兵のレイナさんとリニアさんには、公爵様夫妻のいつもの服装で違和感はないのだろうけど、見慣れないナイアさんとスピナさんには、その服装でダンジョンに行くの?の目で見られた。僕もアスカもそんな目で見られるのは慣れているので、気にせず食事をいただいていた。
食事を終えてお茶をいただく。あまりのんびりもしていられないので、すぐに出発準備を始めた。僕は部屋を出る前にメイドさんたちに集まってもらって、しばらく部屋を空けるので留守をお願いしますと頼んだ。メイドさんたちは、かしこまりましたと請け負ってくれた。
6人そろって部屋を出て庭に向かう。すでに多くの人が集まっていた。僕は杖を高速の飛び箱に戻すと、見学の人は驚きの声をあげていた。僕は参加者の皆さんに集まってもらい整列して待機。国王陛下と王妃様も見送りに出てきてくださった。皆でフィル王国式のお辞儀をしながら、僕が代表して国王陛下にご挨拶をする。国王陛下と王妃様から激励のお言葉をいただいて、参加者は飛び箱に乗り込んだ。皆さんが手すりにつかまりながら、見送りに来てくれた皆さんに手を振ったり、いってきますと挨拶しながら飛び箱をゆっくり上昇させる。上昇と共にエコと方角を調整。幸い建物の間を飛んでいけそうなのでそのまま直進することにした。ある程度の高度になったところで、くちばしを元の位置にもどす。皆さんにイスに座ってもらって加速です。
馬で1時間の距離は飛び箱では10分もかからない。あっという間にダンジョン上空に到着する。ダンジョン入り口の広場には王国軍の兵の皆さんと思われる人がいた。上空に飛び箱が現れたからか、広場の端に寄ってくれて、広場の中心を広く空けてくれた。飛び箱をゆっくり降ろして無事に到着。すぐに高速タイプの飛び箱を片付けた。
この大勢の王国軍の皆さんはお見送り?それとも僕たちについてくるつもりかな?まぁ、どちらでもいいか。僕は周りの人は気にせず、飛び箱に乗り込む人たちに話しを始める。
「参加者の皆さんとこれからダンジョンに歩いて入ります。ダンジョンに入ったら、人のいないところで飛び箱を準備します。ダンジョン内も飛び箱で移動します。魔獣やボスの確認と、魔道具を探すために飛行もしますが、ほぼ地上を移動することがほとんどです。ダンジョン内では私と妻の指示に従ってください。指示に従っていただけない場合は、気にせず置いていきますので」
「了解です」
「では皆さん、出発しましょう」
僕とアスカが先頭を歩く。レイナさんとリニアさんには最後方で後方の警戒をお願いしている。フィーリさんにはどんな状況でもスピナさんの護衛を第1に考えて行動してほしいとお願い済みだ。王国軍のお2人と魔法士団のお2人はダンジョン攻略の経験者とのことで、身の安全とスピナさんの安全確保をお願いした。
フィル王国は冒険者という職業がないので、ダンジョンの中は閑散としていた。王国軍以外の人はダンジョンに寄り付かないそうだ。それを知ってすぐに飛び箱を用意してしまった。高速の飛び箱とは違い、むき出しの簡素な飛び箱に戦闘も視野に入れた飛び箱だと認識された。僕とアスカ、レイナさんとリニアさんは決まった位置に座る。残りの人はご自由にと伝えたが、王国軍のお2人はレイナさんとリニアさんに協力してくれて、後方の警戒を手伝ってくれることになった。
準備が整ったところで出発。階層の中心まで飛んで行って、そこでサーチ。サーチの魔法は魔獣とボスの探索目的と、魔道具の探索の2度詠唱した。もちろんこんな上層に魔道具の落し物はない。魔獣もボスも気にする必要もないので、そのまま先に進むことにした。
1日10階層程度のゆっくりペースを予定していたが、10階層などお昼前に到着してしまう。少し早いけど昼食を兼ねて少し長めの休憩をとることにした。僕とアスカが物置からテーブルとイス、調理道具を取り出した。イスとテーブルはレイナさんとリニアさんにお願いした。取り急ぎ水差しに水を満たし、皆さんの分のマグカップだけ置いておいた。
僕とアスカは早速料理開始。と言っても携帯用のかまどでスープと料理を温めるだけ。スープを温める一方でアスカは食器の準備も始めてくれた。フィル王国の事務官の人には、ダンジョンで使うの丈夫な物をとお願いしたのだけど、立派な食器類が用意されてしまった。壊しても知りませんからね!
僕とアスカで人数分の料理の支度を終えた。皆さんにお配りして食事が始まる。もちろんダンジョン経験者の王国軍と王国魔法士団の4人はダンジョン内でこのような食事がとれるとはと喜んでいた。僕も4人の参加者に、王国軍と王国魔法士団は別の部隊を送り込んでいるのかと質問すると、今回は4人だけがダンジョンに入っているとのことだった。参加された方が報告を行い、今後はどうするかを決めることになっているそうだ。4人の感想を聞くと、午前中を過ごしただけで、飛び箱を使わずに後をついてくることは無理と判断されたようだ。適切な判断をしてくれてホッとした。
食事の後片付けを僕とアスカが始めると、皆さんは恐縮していた。メリオス王国でも僕とアスカがやっているのでと伝えて、2人でちゃっちゃと片づけを終えてしまう。時計を確認して、残りの時間は僕もアスカものんびりしながら過ごした。
午後の出発の時間になったので、テーブルとイスも片付けて、皆で飛び箱に乗り込む。この先は念のため魔獣やボスも倒して進むことにした。毎度の最初はサーチの魔法からスタート。最初に魔道具を見つけたのは14階層だった。
僕が魔道具がありましたねと発言したことで、皆さんは興味津々の様子。飛び箱をその場に進めると、かなり古いご遺体と遺品。その中に魔道具の杖があった。ご遺体の処置と遺品の回収については、フィル王国の皆さんに判断してもらった。結果はご遺体は可能な限りその場で埋葬する。遺品は可能な限り回収する。そう方針が決められた。もちろん僕とアスカに異存はないので、全面的に協力した。ただ、ダンジョンは土はあまり深くないので遺体を埋葬するのはなかなか手間がかかる。僕は土で棺を作ってしまうことにした。僕は3体の遺体を収める棺を3つ作った。王国軍のお2人が遺体を丁寧に棺に納める。僕は棺の中に土を満たす。皆で手を合わせてお祈りを捧げ、次の階層へ向かった。




