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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
4章 大陸に生きる者編
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15話 無駄遣い夫婦

 神殿を後にした馬車の中、ナイアさんとスピナさんは神殿での出来事を聞いてよいのか悪いのかという雰囲気。もちろん、僕とアスカはその雰囲気を無視です。


 アスカなどは、「旦那様、お腹すきましたね」だもの(笑)




 門の前で馬車が止まり、門が開けられるのを待つ。再び馬車が動き出したので、アスカと2人で外をみた。面白いことに僕たちが庶民街で住んでいたお屋敷に雰囲気が似ている。大陸で庶民向けのお屋敷のフォーマットがあるのかもしれない。


 馬車が止まったところで、僕が先に降りてアスカをエスコート。ナイアさんとスピナさんは商会の人にエスコートされていた。4人が玄関前に揃ったところで、商会の代表と思われる人が臣下の礼で挨拶をしてくれた。



「グラン公爵様、奥方様。ようこそおいでくださいました。フラテル商会のアークと申します。以降お見知りおきを」


「メリオス王国の公爵のグランです。隣にいるのが妻のアスカです。メリオス王国式のご挨拶をありがとうございます。メリオス王国に来られたことがあるのですね」


「はい、公爵様。前回、私が訪れたときには、まだグラン様は公爵になられたばかりの頃でした」


「そうでしたか。次回はメリオス王国に来られたら、ぜひ王宮を訪ねてください。今日、お世話になるお礼をしますので」


「ありがたきお言葉をありがとうございます。メリオス王国ではマイル商会のマイルさんにお世話になっています。ですので、公爵様のことも、奥方様のことも、お話しをお伺いしております。今日の昼食は卵料理も用意させてありますので、お楽しみください」


「お心遣いをありがとうございます。本日はよろしくお願いします」




 すぐに食堂に案内された。もちろん、僕たちが上座に座らされる。ただ、王宮とは違って段差はないので、目線が同じで落ち着く。


 すぐにシャンパンが注がれて、乾杯の準備が整う。僕は今日の席の用意のお礼と、これからのお付き合いをお願いして乾杯した。


 料理はオードブルから始まるコース料理だ。少しずつ、いろいろ食べられて楽しみだ。赤ワインを注がれたので、マイルさんからの情報をしっかり活用しているようだ。


 食事が始まったところで、僕とアスカが見たい商品について尋ねられた。それについて、まずは僕が質問した。



「アークさん、私も妻もフィル王国で国外への持ち出し禁止や、外国人の閲覧禁止などの知識がありません。法に触れそうなときは、遠慮なく教えてください」


「かしこまりました。ただ公爵様、そのようなものは、こちらの建物で扱っておりませんので、この建物の中のものは自由にお選びいただけます」


「それは助かります。では、私が最も興味があるのが書籍です。私が持っていない本はぜひ、購入したいです。また、魔法士なので魔道具を見れたら嬉しいです」


「かしこまりました。奥方様はいかがでしょう?」


「生地を見せてください。フィル王国の皆さんは柄の生地の服をお召で、とても素敵です。メリオス王国は無地の生地に刺しゅうをすることが多いので、柄の生地でぜひお洋服を作ってみたいです。それと娘たちへのお土産を見たいです。これはアークさんのおすすめを見せていただけると嬉しいです」


「かしこまりました」


「ところでアークさん、マイルさんとお取引があると言うことは、マイルさんにお願いすると、アークさんの商会の商品が購入可能ということですか?」


「はい、購入可能です。ただ、とてもお高いお買い物となってしまいます」


「なるほど、商人さんは命がけですから、しかたないですね。ただ、お取り扱いの商品はざっとでも一通り見ておきたいです。アスカもそれでいいかな?」


「はい、旦那様、私もどんな商品があるのか楽しみです」




 食事が終わると、僕たちの無茶振りに嫌な顔もせず、アークさんはずっと付き合ってくれた。やはり商品を見てしまうと、僕もアスカもあれもこれもと買い求めてしまう。たまにはいいですよね、無駄遣い(笑)


 最初に登場したご要望の商品は本だった。壁にずらりと並べられた本棚に本がずらりと並んでいた。僕はアスカにも協力してもらって、すべての本の背表紙を順に見てまわる。エコがその中で未登録の本を教えてくれる。これだけの本の中で、エコに登録されていない本は7冊だけだった。時間もないので、7冊は購入してしまうことにした。


 次のご要望商品は魔道具。生活に役立ちそうなものと聞いてみると、商会の人たちがそれらしい魔道後を取り揃えてきてくれた。面白い物では、魔力を送ると発熱する板。固形燃料が無くても物が温められるかも。それと、棒状のものがいくつか。水にいれるとお湯になる棒。水に入れると冷たくなる棒。水分を取り除いてくれる棒もあった。これは全部購入する。きっとお高いでしょうけど。


 そして僕の心をつかんで離さない1つの魔道具を目にした。名前は水時計。手に触れ魔力を込めると。ガラスの球の中に1滴、また1滴と水滴が落ちる。そして、ガラスの球の中が水で満たされると球の中の水が消えてなくなる。魔力を込めてから水が満たされるまで、正確に3分かかる。だから時計と名がつけられているのだろう。他の人からは、はっきり言って何の役にも立たない大きいばかりのガラクタ魔道具に見えるだろう。でも僕にはこの世界をがらりと変えることができるほどの魔道具に見えていたのだ。もちろん購入を即決です!


 続いてはアスカのご要望の生地が置かれている場所に到着。ここは僕には分からないので、アスカの後ろをついていくだけ。アスカは柄を確認したり手触りや厚みなどを気にしながら、気になった生地をどんどん選択していった。いくつもの候補が残って、アスカはどれにするか迷っていたので、僕は候補を全部でお願いした。アスカには贅沢し過ぎとこっそり言われたけど、僕もこっそりもう買えないかもしれないから、気になった物は買ってと言った。アスカも僕の意見を聞いて迷ったあげく、すべて買う気になった。




 一通り見て回ったところで、お昼をいただいた部屋に戻る。机が並び替えられていて、娘たちへのお土産の一画と、僕たちが選んだ商品の一画があった。僕たちは娘たちのお土産を見て、あれもこれもと商品を選んだ。娘たちのお土産は2つずつ購入すると伝えて買い物は終了。合計額を聞いて、僕もアスカも苦笑いだけど、たまには贅沢もいいでしょ。


 アークさんはリュックのことも知っているようで、商品をしまってくださっていいですと言ってくれた。僕は物置を出して、商品を次から次へと箱にいれていった。


 僕はアークさんへのお礼として、珍しいものをお見せすることにした。アスカに耳打ちして、38階層から40下層のボスの戦利品を机の上に並べた。



「アークさん、フィル王国ではまだ手に入らないでしょう。ダンジョンの38階層から40階層のボスの戦利品です。マイルさんのところで買い取ってもらっているので、興味があればマイルさんに相談してください」



 アークさんも商会の皆さんも食い入るように商品を眺めていた。最初は珍しそうに見ていた皆さんが、だんだん苦しそうな表情をしている。



「アークさん、皆さん、私は何か失礼なことをしてしまいましたか?」


「公爵様、ある意味ではそうなります。これらの品をどうしても欲しくなりました。ただ、マイルさんにお願いしても、手に入れることはできないでしょう」


「それはどうしてです?」


「マイル商会では販売できないと思います。これらの商品を無事にこちらに納品することはできないからです。途中で何かあったら、マイル商会もフラテル商会も破産します」


「なるほど……では、今日お世話になったお礼に差し上げます。アスカもそれでいいね」



 アスカももちろんと、こくりと頷く。ただ、今度はアークさんがブルブル震えながらダメダメって感じです。



「公爵様、さすがにいただけません。これらの品がいったいどれほどの金額になるかご存じですか?」


「知っているつもりですけど……メリオス王国ならマイルさんにお願いすれば、購入可能ですから」


「公爵様、その10倍でもフィル王国では注文が殺到するでしょう」


「それなら、なおさらアークさんへのお礼になって、いいではないですか。アークさんは欲しいんですよね、これらの品が」


「はい、欲しいです。どうしても、欲しいです」


「はい、だから差し上げます」


「……」




 けっきょく、落としどころとしては、物々交換となりました。僕とアスカは、アークさんに悪いことをしたと思っていましたが、アークさんも公爵様に損をさせたと気にされていました。


 まぁ、買い物が無事に済んだことは良かったのですけどね。


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