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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
4章 大陸に生きる者編
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11話 フィル国王陛下とシャナ王妃様とのご対面

 僕とアスカが居間に戻ると、近衛兵団の正装をしたレイナさんとリニアさんが立って待っていてくれた。座って待ってればいいのにね(笑)


 僕とアスカがソファーに腰かけ、僕がソファーのひじ掛けをトントンと叩くと、レイナさんは仕方なそうにソファーに腰かけてくれた。リニアさんは初見なので、どういう意味だ?と混乱気味。レイナさんの、「リニアも座れ」の一言でリニアさんも座ってくれた。



「レイナさん、リニアさん、フィル国王陛下とシャナ王妃様への贈り物。どうお渡しすればいいでしょう」


「とりあえずリニアにお預けください。リニアがフィル王国と調整します」



 僕は立ち上がり、すぐに腰から物置を取り出して元の大きさに戻す。突然大きな箱が現れたのには、お2人も近くに控えてくれていたメイドさんたちもびっくり。もちろん僕は気にすることもなく、国王陛下からお預かりした贈り物の箱と、フィーネ伯母上から預かったシャナ王妃様へのブレスレットを取り出した。そうそう、僕からも贈り物をするのでした。僕はリュックからアスカ用に作ってあるミスリルの細剣とダイヤモンドの杖を取り出して、これもリニアさんにお預けした。2人はこれが公爵ご夫妻の剣と杖かとじっくり観察していた。



「リニアさん、これらの品が国王陛下とフィーネ伯母上から預かってきた品です。剣と杖は公爵家からです。フィル王国との調整をお願いします」


「かしこまりました」




 しばらくすると、ナイアさんが僕たちを迎えにきてくれた。お部屋の外の庭には馬車まで用意されていた。庭を通り過ぎるだけなのに大袈裟です(笑)


 僕とアスカとナイアさんの3人は馬車に乗り、レイナさんとリニアさんは馬のようだ。リニアさんはいくつかの贈り物についてフィル王国の人と話してくれたようで、馬車の荷台に積んで運ぶことになったようだ。


 僕の予想した通り、円形の庭の向こう側に行くためだけの馬車だった。馬車が玄関前で止められると、馬車の扉が開かれる。お迎えの人がナイアさんをスコートして降ろした後、僕も馬車から降りる。驚いたことに国王陛下と王妃様までが出迎えに来られている。僕がアスカをエスコートして馬車から降ろすと、お2人に気付いたアスカも驚いていた。


 ナイアさんは僕たちを食事会の会場に案内しようとしたけど、そんなわけにはいかないでしょ!僕とアスカはまずはご挨拶にと言って、ナイアさんに国王陛下の前に案内してもらった。僕とアスカは国王陛下と王妃様の前で、メリオス王国式の臣下の礼をとる。まずはナイアさんが国王陛下に僕とアスカの紹介からご挨拶が始まります。



「国王陛下、王妃様、こちらがメリオス王国公爵のグラン様と奥方のアスカ様です」


「国王陛下、王妃様。わざわざお出迎えをいただき、恐悦至極に存じます。メリオス王国で公爵を務めておりますグランと申します。隣にいるのが妻のアスカです」


「グラン殿、アスカ殿、どうぞお顔をあげてください。今回は我が王国がお2人をお招きしたにもかかわらず、とんだ騒動に巻き込んでしまい、本当に申し訳ない」


「いいえ、国王陛下。王国軍の連携のとれた戦いで、賊を切り伏せていく様子を拝見し、王国軍の練度の高さに驚かされました」


「ご挨拶はこの辺にして、まずは食事を始めましょう」



 驚いたことに、国王陛下と王妃様自らが僕とアスカをエスコートして、部屋まで案内してくれた。これには控えていた王国の要人の皆さんも驚きの様子だった。




 部屋に案内された後は、ナイアさんが僕たちを席まで案内してイスへ座らせてくれた。上座はもちろん国王陛下と王妃様だけど、僕とアスカはそれに次ぐ高位の人の席だった。国王陛下と同じひな壇に席が用意されているので、皆さんを見下ろす感じになっている。


 給仕によって食事の準備がはじめられたが、僕は国王陛下にお願いして、まずは皆さんとご挨拶をさせてもらうことにした。ご挨拶と言っても、お相手が挨拶をして、僕とアスカが会釈を返す程度で時間はそれほどかからない。ご挨拶を受けてみると、確かにフィル王国の要人ばかりだった。その中にナイアさんとスピナさんの姿も見えた。もちろんお2人も僕たちに挨拶してくれた。


 皆さんとの挨拶が終わったところで、国王陛下の乾杯のご挨拶で食事が始まった。今回は名の通りに食事会としてくれたようで、皆さんとの距離も近いし、食事をしながらお話しもできた。最初はフィル王国の皆さんから質問されることが多かった。まずは飛び箱。国境門から2時間程度で王都に到着したことに驚かれていた。改良を重ねてどんどん速度を上げてきたことをお話しした。賊と戦っていた時に乗っていた飛び箱についても聞かれたので、普段はこちらに乗っていると伝えた。ダンジョンの中でもこれで移動しいているので、フィル王国のダンジョン内でも移動はこれを使うと話しておいた。


 他の話題となると、やはりダンジョンの攻略のことで、40階層のボスも倒したのかと聞かれた。今のところメリオス王国での38階層以下のボスは僕とアスカしか倒せないと答えた。皆さんはまだ半信半疑のようだけどね。


 僕からも質問をした。今回僕たちを呼んだ目的はダンジョンで38階層のボスを倒すことなのかと。遺体や遺品の回収が目的となると、大勢の人を連れていく必要がある。さすがにご遺体を物置に入れて運ぶのは不謹慎だと思うので。僕の質問には皆さんが答えにくそうにしていた。答えてくれたのは国王陛下だった。



「グラン殿とアスカ殿には38階層の階層主を倒してもらうのが第1の依頼です。第2の依頼は王国が冒険者に貸し与えている魔道具の回収の支援です。何度かの38階層の階層主との戦いで、多くの冒険者が倒され、装備していた魔道具はすべて置き去りになっています。これらの魔道具は王国の宝であり、どうしても回収したいものなのです」



 国王陛下のお話しの続きはガラテ王国軍軍団総長が聞かせてくれた。フィル王国は魔道具はすべて王国が管理をしていて、王国軍が王国から貸し与えられて使用している。メリオス王国のように冒険者と呼ばれるダンジョンでの戦闘をする職業はなく、ダンジョン攻略も王国軍が行っている。王国で管理している魔道具には、すべて王国管理のメダルが張り付けられていて、このメダルで管理がされている。


ちなみにガラテ王国軍軍団総長は賊と一緒に戦った第3王国軍のガラナ軍団長のお父様のようだ。


 僕がそのメダルには魔法的な何かが付与されているのか質問すると、この質問にはリベルテ魔法士団団長が答えてくれた。メダルには魔力の付与がされていて、誰に貸し与えられている物かが分かるようになってるそうだ。それなら探すのは簡単かもしれない。僕は参考までにそのメダルを見せて欲しいとお願いすると、この席で一番お若いスピナさんが私の杖をどうぞと貸してくれた。僕は横に控えてくれているレイナさんからその杖を渡される。


 もちろん確認するのはサーチの魔法。メダルを見るとちゃんと光っていた。ただ、そのままのサーチだとメダルかどうかの判断ができない。エコと相談すると、このメダルはフィル王国で少量出土する珍しい魔力を持つ鉱石から作られているそうだ。それなら簡単。この鉱石だけを見たいと思えばメダルだけが見えるようになった。僕がこれなら探せそうですと伝えると、皆さんはにわかに信じられない様子。僕がこのお部屋で魔道具をお持ちなのは……と次から次へとお名前をあげたことで、僕が魔道具を認識できると信じてくれたようだ。




 僕は38階層までのボスも魔獣も、僕とアスカの2人だけで充分倒せること。魔道具の回収も1階層から38階層までの階層をすべて確認してくることが可能なこと。ただ、魔道具の回収はフィル王国からも確認係をつけて欲しいこと。可能なら少人数でダンジョンに向かった方が時間がかからないが、僕とアスカが戦うところを見たいのであれば、ついてきてもらうのはかまわないこと。それに、フィル王国のダンジョンは3カ所あると聞いているので、すべてのダンジョンから魔道具の回収をすることも問題ないこと。これらをすべてお伝えした。


 もちろんフィル王国の関係者で検討して、計画を立ててくださいとお願いした。国王陛下が王国側で計画を立てるので、それまでは王都内で過ごしてほしいとお願いされた。


 長い食事会は誰も食事に手をつけられず、話しをするばかりの残念な会になってしまった。ただ、フィル王国の皆さんは今後の方針を明確に決められそうだと前向きにはなっていた。フィル王国にとって僕たちの来訪が良いきっかけとなって安心した。


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