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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
4章 大陸に生きる者編
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7話 フィル王国に入国

 僕は国境門へ向かう飛行を始めたところで、エコにお願いして国境門の近くの近衛兵団の出張所に、先に出向いてくれているレイナさんにメッセージを送った。1時間ほどで国境門に到着予定ですと。すぐに了解しましたの返事のメッセージが返ってきた。




 飛行は順調で予定通り1時間ほど飛んだところで、エコに速度を落とすように言われる。徐々に速度を落として、ここと言われたところで上空で停止した。くちばしの先端部分を跳ね上げ、外が見えるようにする。手すりにつかまりながら下を確認すると、近衛兵団の出張所の訓練場が確認できた。訓練場の様子を確認しながら徐々に高度を下げていく。だんだん高度が下がっていくと、さらに大勢の近衛兵団の皆さんがお出迎えに出てきてくれたようだ。


 しばらくゆっくり降下を続け無事に着陸完了。跳ね上げたくちばしを元に戻し、後ろの出入り口を開ける。出迎えのために歩み寄ってきたのはレイナさんとリニアさんだった。



「今回同行してくれるのはレイナさんとリニアさんなのですね。それは私も妻も心強いです」


「公爵様と奥方様に同行できるとは護衛の極みです」



 お2人は臣下の礼になり、堅苦しい挨拶を始めてしまう。



「レイナさん、リニアさん、公式の場でなければ朝の訓練のときのように話しましょう。これからずっと4人の旅ですから」


「お言葉に甘えさせていただきます」



 お2人は立ち上がって僕たちを出張所の中へ招いてくれた。食堂へ案内されて少し早めの昼食を4人で食べ始める。僕たちが来るということで、今日の出張所の昼食は過去最高の豪華な昼食のようで、近衛兵団の皆さんも昼食を楽しみにしているそうだ。


 食事をしながら今後のことを聞かせてもらった。まず、王国側の門で出国手続き。門を通り過ぎると、壁の中が広いフロアになっていて、今度はフィル王国の入国手続きをするそうだ。手続きを終え門を通過すれば、もうそこはフィル王国。フィル王国では僕たちの案内役の人が待っていてくれるとのこと。後のことはその案内役の人の指示に従うことになるらしい。こちらからは僕たちの飛び箱で移動するため、馬や馬車の準備は不要と伝えている。また、フィル王国からの要望で、王都近くで飛び箱は降りて、そこから先は馬車に乗って王宮まで向かうことになっている。いきなり飛び箱で王都に乗り付けられても、王都の皆さんがパニックになるかもしれないからね。僕とアスカが段取りについて了解と伝えた。


 僕たちが食事をしていると、1人の兵士がレイナさんのところに歩み寄り、何やら伝言をしている。レイナさんは話し終えたところで、僕たちにも説明してくれた。13時に僕たちが出入国の手続きを始めるとフィル王国の担当者に伝えてくれ、フィル王国からも了解を得たようだ。それまでもう少し時間があるようで、わざわざレイナさんが厨房へ行って、お茶とデザートを用意してきてくれた。僕とアスカが甘いものに目がないのは王宮内でも有名で、わざわざ準備をしてくれていたのかも。もちろんお礼を言って、おいしくご馳走になりました。




 そろそろ時間となり、出張所を出て門へ向かう。門の前は王都の門の近くと似ていて、広い円形の広場になっていた。その円を取り囲むように宿や店が立ち並んでいる。どの宿も店も大きな店構えで、人の大来が多いことがうかがえた。壁へ近づくと大きな門が2つ。片側の門は列を作って待っている人たちがいたが、僕たちはお貴族様用と思われる誰も並んでいない門の前にたどり着いた。レイナさんが先頭に立ち守衛に僕たちの到着を伝えてくれた。手続きと言っても王都民証を着けている人は通り過ぎるだけでいいようだ。僕とアスカはご苦労様ですと挨拶しながら門を通してもらった。


 レイナさんが説明してくれていたとおり、壁の中はがらんとした広いフロア。庶民の人たちのフロアとは壁で仕切られているので、こちらのフロアにはほとんど人がいない。ただ、貴族専用と思っていたこちらのフロアにも庶民の人もいた。庶民と言っても身なりも立派な人たちなので、大きな商会の人たちなのだろう。皆さんは僕たちの姿を見かけると、臣下の礼をとったり、右手を胸の前に当てて深々頭を下げる挨拶をしてきた。右手を前に当ててのお辞儀がフィル王国の正式な礼なのかな?さすがにフィル王国側の守衛さんは礼はしないまでも、会釈をしてくれた。警戒任務中で礼を尽くせないのは当たり前です。フィル王国側の門も王都民証を着用していれば通過するだけ。僕たちはあっさりフィル王国に入国できました。




 僕たちが門を出ると、1人の女性がフィル王国式の礼をして待っていてくれた。レイナさんを先頭にその人の元へ歩いていく。僕たちが立ち止まったところで、その女性が挨拶をしてくれた。



「グラン公爵様、奥方様、フィル王国へようこそおいでくださいました。私はグラン公爵様ご夫妻のご案内を務めます、スピナと申します」


「公爵のグランです。隣は妻のアスカです。ご案内をお願いします」



 僕たちのために馬車が用意されていたけど、きっと近くの広い場所まで行くだけだと思い、このまま歩きたいとお願いした。馬車の乗り降りの方が時間がかかりそうだからね。


 皆でぞろぞろ歩いて、すぐ近くのフィル王国の兵舎の広場に到着。フィル王国側の人たちとの挨拶を済ませ、僕とアスカが飛び箱の準備をする。公爵夫妻自らがリュックを背負い、公爵夫人が手助けしながら公爵がリュックから荷物を出す。フィル王国の人からは変な公爵だと思われているよね(笑)僕が杖を飛び箱に戻すと、周りの人は驚きの声。後ろの出入り口とくちばしを上げて準備完了。



「スピナさん、フィル王国側の同乗者はどなたですか?」


「私の護衛のフィーリという護衛騎士の1人だけです」


「分かりました。アスカ、イスを6つとテーブルは1つでいいかな?」


「そうですね、それほど時間はかからないと思いますから、お食事をとることもないでしょう」



 僕とアスカが先に飛び箱の中へ入り、イスとテーブルを用意する。アスカはテーブルの上にお茶とお茶菓子も出してくれた。準備が整ったところで、皆さんを呼びに飛び箱の外へ。皆さんに声をかけて再び飛び箱の中へ戻ります。まずは手すりにつかまってもらい、外の人たちにお礼といってきますの挨拶をしてもらう。皆さんは慣れていないのか笑顔も手を振るのもぎこちないです(笑)


 飛び箱がゆっくり上昇を始めると、初めて空を飛ぶ4人はしっかり手すりをつかんで緊張のご様子。僕とアスカは手を振るのを終えて、皆さんをイスへ案内する。くちばしを降ろしてエコと目的地の方向を合わせる。さすがのにエコでも行ったことのない広場までは案内が難しいようなので、近くまで飛んだら後は目視で確認しながら飛ぶことにした。



「では皆さん、出発します」



 僕の掛け声で徐々に速度を上げ、いよいよフィル王国の王都へ向けて出発です。


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