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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
4章 大陸に生きる者編
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3話 フィル王国の情報収集

 神殿に伺った翌日、午前中に商会の皆さんが集まってくれた。父上も部屋に来てくれたので、父上にも商会の皆さんとの打ち合わせに参加してもらった。


 会議室の正面に僕とアスカ、右手に父上、左手に商会の皆さん、奥の席にメティスさんとアドラ料理長、お茶の支度が終わったところでヒメミさんにも座ってもらう。



「今日はお忙しい中を集まっていただき、ありがとうございす。私とアスカがフィル王国に行くことになりました。目的はフィル王国内のダンジョン攻略の支援です。ただ、せっかく隣国にお伺いできる機会なので、王国のためになりそうな物や情報を持ち帰りたいと思っています。ですがあいにく、私にもアスカにもフィル王国の情報がなく、王国も貿易相手の情報に偏っています。そこで商会の皆さんからは商会のつながりや庶民としての情報、父上には冒険者としての情報があればと思い参加をお願いしました。また、アドラ料理長には食文化の交流についてもご意見を聞かせて欲しいです。食材の点では商会の皆さんのお知恵もお借りできますから」



 僕の話しを聞いて、さっそく手を挙げてくれたのはライザさんだった。



「商会の代表としてお伝えします。私のところのファプロ商会もガデンさんのガブリエル商会もフィル王国との直接取引はなく、マイルさんのマイル商会から仕入れています。今日はマイルさんが中心にお話しをさせてもらいます」


「了解しました。ただ、ライザさんの商会もガデンさんの商会もマイルさんの商会を通して輸出もされているのですよね?」



 僕のこの疑問にはマイルさんが答えてくれた。



「残念ながら我が王国は、フィル王国からもルディア共和国からも人口も少ない南端の小国との印象が強いです。ただ、温暖な気候に恵まれ農業や畜産に力を入れている印象を持たれています。なので、我がメリオス王国からの輸出品のほとんどが穀物や加工肉となります」



 僕としてはライザさんの作る服飾品もガデンさんの作る武器や防具、金属加工品は1級品の印象なのだけど、他国はもっと優れているということ?僕が見聞きしてきたことを商会の皆さんにお伝えすることで、王国の利益にはなりそうだな。



「公爵様、マイル商会と取引のあるフィル王国の商会には紹介状をご用意することが可能です。用意いたしましょうか?」


「マイルさん、それはとても助かります。念のためルディア共和国の商会の紹介状もお願いしたいです。フィル王国の商会を通じて、連絡が取れる可能性もありますから」


「かしこまりました」


「次は父上、軍事的な面とダンジョン攻略について知っていることがあれば教えてください」


「俺が知っているのは兄上から聞かせていただいた話しだけなのだが、軍人としての数はフィル王国は倍以上、ルディア共和国は4~5倍もいると言われている。国土が広いこともあるが、魔獣が支配している国境に近いのも要因だろう。我が王国と違い、他国はダンジョンが複数存在するとも聞いている。冒険者の数も多いのだろう」


「王国から提供したダンジョン攻略の情報で、他国も37階層のボスまでは討伐したと聞きました。どの国も38階層のボスには苦戦中ですか?」


「ああ、グランとアスカのような特別な能力を持つ人間はいない。何人がかりでも、38階層のボスの討伐は難しいな」


「国王陛下のお話しによると、フィル王国で38階層の攻略に失敗し、多くの人員も装備も失われる結果となったようです。私の予想ではご遺体の埋葬や遺品の回収はもちろんですが、特別な装備や武器の回収も目的ではないかと予想しています」


「我が王国で採れるミスリスは、他国にはない優れた金属とも聞いたことがある。一方で、魔道具などは他国の方が多く所有しているようだ。それだけ遺物の回収が進んでいるのだろう」



 なるほど、以前の人類が作った魔道具の類は、遺物として出土すると聞いてはいたけど、広い国土なのだから埋葬されている遺物も多いってことなのかな?でも、僕とアスカは40階層のボスを倒したのに、他国は魔道具を駆使しても38階層のボスを倒せない……分解魔法は無理でも、毒の魔法くらいは詠唱できる人がいそうなものだけど。ダンジョン内での戦闘のスタイルは国ごとにまちまちってことなのかな?




 長いこと皆さんとお話しした結果、僕とアスカの制服は他国へ行っても立派な身なりとして恥ずかしくないこと。アスカの剣も僕の杖も1級品で身分に相応しいこと。マイルさんからはダンジョンの攻略に行かれるのなら、ソーセージやベーコン、塩漬け肉も燻製肉も持っていくと喜ばれるはずだとアドバイスをいただいた。父上からは僕が魔法で作ったアスカのミスリルの細剣とダイヤモンドで作った杖を献上するのがいいと言われた。そして最後にヒメミさんに白結晶石のブレスレットを他国の王妃様に献上することをフィーネ伯母上と検討してみて欲しいと言われた。王国内では王宮関係者や離れた領地との通信手段に、ブレスレットが使われることが増えてきた。王妃様同士が直接お話しできるのは、両国にとってもいいのではないかとの提案だ。このヒメミさんの意見には僕も賛成。僕はとても良い提案だと思い、アスカにフィーネ伯母上と話して確認をしてもらった。アスカはすぐにエコにお願いしてフィーネ伯母上と話しをしてくれた。フィーネ伯母上はあっさり許可をくれたようだ。


 僕は最後に皆さんに貴重な意見を聞かせてもらえたことに感謝を伝え、しばらく王都から離れるので、後のことをお願いしますとアスカと2人で頭を下げた。皆さんは恐縮しながらもお任せくださいと請け負ってくれた。小さい娘たちを残していく僕たちには、やはりどうしても皆さんに娘たちのことを頼むしかないからね。


 こうして会議は終了し、商会の皆さんは帰っていかれた。父上は僕たちが準備で忙しくなるからと出発までは王宮に残ってくれることになった。僕たちの出発に合わせて、娘たちを父上の屋敷に連れ帰ってくれるそうだ。父上には感謝です。


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