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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
4章 大陸に生きる者編
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2話 遠征準備

 僕とアスカが国王陛下との会議を終えて部屋に戻り、部屋の皆さんに集まってもらった。今回の国王陛下からの依頼を伝えるためだ。この部屋では年に何度かあることで、特に皆さんも平常心で集まってくれる。1番若い女性のテーベさんが先に食堂に来てくれて、皆さんの分のお茶とお茶菓子を用意してくれていた。



「テーベさん、お茶の支度をありがとう。アドラ料理長の新作のお菓子ですね。楽しみです」



 この部屋の中では身分の上下もなく和気あいあい。娘たちはヒメミさんとリシテさんの膝の上に座らせてもらって、さっそくお菓子に手をだしていた。


 僕もお茶を一口いただいて、話しを始めることにした。



「本日の国王陛下の主催の会議で、私と妻がフィル王国に特使として派遣されることになりました。準備ができ次第出発してほしいとのことです。ただ、私も妻も他国の情報に疎いので、メティスさんに他国についての情報収集をお願いしたいです」


「かしこまりました」


「王宮で持っている情報と別に、取引のある商会の皆さんからも情報を得たいと考えています。メティスさん、商会の皆さんに集まってもらってください」


「かしこまりました」


「次にアドラ料理長。料理の準備をお願いします。ダンジョンへ行くときと同じ支度でお願いします。念のため2カ月分にしておきましょう。チョコレートケーキもお願いしますね、アスカには必需品ですから(笑)」


「公爵様、鍋の準備だけはお願いします。後のことはお任せください」


「よろしくお願いします。それと、決めておかなければいけないのがもう1つ。アリス、アリサ、父と母が遠征の間はどこで過ごしたい?」



 アリスとアリサがお互いに向かい合い、何やらこそこそ話している。2人は公爵家の娘なので、アスカの制服に似たワンピースを着せられている。アリスはアスカの子供の頃にそっくりと言われるほどで、髪は銀色で瞳は深い青色をしている。一方のアリサは顔立ちも姿もアリスそっくりだが、髪の色も瞳の色も僕譲りの黒い色をしている。アリサはそれについてコンプレックスを持っているようだ。そのためか、アリサはどちらかと言えば大人しい。一方のアリスは元気溌剌で人ともよく話す。僕もアスカもおとなしい方なので、これはきっと父上に似たと思う。どちらの娘も王宮ではお人形さんのように可愛いと評判だ。アスカに似ているのだから当たり前だけどね!ユリ姫は妹のように可愛がってくれているし、皇太子様もよく面倒を見てくださる。娘たちはユリ姫様のお部屋にお泊りに行くことも多かった。フィーネ伯母上が面倒を見てくれているようだ。


 2人の結論が出たのか、代表してアリスが話し始めた。



「お父様、お母様、私とアリサはおじい様のところに行きたいです」


「おじい様のところか……もしや2人はダンジョンに行って、日ごろの訓練の成果を確認したいのかな?」


「はい、ダンジョンにも連れて行ってほしいですけど、セイラさんとセリエさんにも会いたいです」



 父上の屋敷に娘を預けると、ダンジョンに連れて行ってくれる。父上がアリスを肩車して、ガンズさんがアリサを肩車してくれるようだ。豪快なガンズさんと大人しいアリサは、相性があまりよくないように思うのだが、小さな頃から不思議とアリサはガンズさんになついていた。それをガンズさんも嬉しく思ってくれたのか、ガンズさんの肩がアリサの指定席になっている(笑)残念ながらマルスさんは荷物持ちで同行です(笑)


 セイラさんとセリエさんは2人を連れて、庶民街を散歩してくれるそうだ。王宮からほとんど出ない2人にとっては、庶民街は驚きの連続のようだ。市場で買ったものを広場で食べたり、お店に並べられた商品から好きな物を選んで購入するのは新鮮な驚きのようだ。もちろん、父上が護衛として同行しているので、安全性も問題がない。


 おまけに父上の屋敷に2人が泊まりに来ていると知れ渡ると、グリス伯父上とガルム伯父上が屋敷に連れてこい!と父上に言ってくるようで、父上とガンズさんが娘を屋敷に連れて行ってくれるそうだ。ここでもマルスさんは荷物持ちのようですが(笑)


 娘たちは多くの刺激を求めて父上の屋敷を選択したのなら、娘たちの意見を尊重してやろう。



「分かった。父上のお屋敷で過ごすことを許可しよう。メティスさん、父上にもお部屋へきていただくように連絡をお願いします。皆さんには私と妻、それに娘たちの支度をお願いします」


「かしこまりました」




 こうして方針が決まり、部屋の皆さんは遠征の準備に取り掛かってくれた。僕も1つ気になることがあるので、アスカに相談してみることにした。



「アスカ、フィル王国の神殿に伺った方がいいか迷っているんだ」


「確かに私たちが導き手となれるかもしれませんね。神殿長にお会いして、創造主様とお話ししてみましょう。久しぶりに庶民街の市場に行って、遠征のための買い物もしてきましょう」



 日用雑貨については、やはり王宮でそろえるものが高級で使い心地がいい。ただ庶民街も食べ物については、王宮では食べられないおいしいものがたくさんある。元庶民ならではの楽しみなのです!


 思い立ったら即行動!となって、昼食を済ませてからアスカと飛び箱の乗り神殿へ向かった。


 神殿に入ると神父様たちが僕とアスカに最上級の礼をつくし、うやうやしく頭を下げる。神殿では公爵という身分よりも導かれた人ということで尊い人扱いをされる。もう慣れましたけどね。僕たちが神殿に来たのを知ってか、神殿長がすぐに顔を出してくれた。



「神殿長、ご無沙汰しております。今日は創造主様にご相談したいことがあり、こちらにお伺いしました。また、その件で神殿長にもご一緒していただきたいのですが、よろしいですか?」


「ええ、もちろんかまいません」



 僕たちは神殿長についていき、祭壇裏の地下の部屋にはいる。書見台の前で導きの書に手をかざす。草原と大きな木の世界にたどり着く。



「創造主様、急にお伺いし申し訳ありません。ご相談があり参上しました」


「いいでしょう、何なりと聞きなさい」


「ありがとうございます。1つ目の質問は、隣国に向かうことになったので、隣国の神殿にも寄ることができると思います。そこで、この神殿にある導きの書のようなものを設置してくることが可能なのですが、いかがいたしましょう?」


「その気遣いは無用です。ただ、機会があれば神殿の神殿長に、ゼリスの神殿には導きの書があることだけ話してあげなさい」


「かしこまりました。では2つ目の質問です。今回の遠征のために、私が使っているリュックの大型のものを作りたいと考えています。また、空を飛ぶ道具に大勢の人を乗せようかと考えています。創造主様のご意見をお聞かせください」


「グランからは悪意は感じませんが……エコリアス、あなたはどう思いますか?」


「はい、創造主様。グランとアスカに悪意はありません。物資の搬送と人の搬送が目的のようです。物資格納装置についてはグランとアスカの使用に限り許可を与えてはいかがでしょう?また、飛び箱については、旅客機のような使用目的なので、こちらも問題ないかと」


「エコリアスは随分と2人のことを信頼しているのですね、いいでしょう。許可を与えましょう。ただし、道に外れるような行いはエコリアスが止めなさい」


「かしこまりました」


「私からは以上です。神殿長、アスカ、お2人はいかがですか?」



 2人ともお話しすることは無いようなので、3人で別れの挨拶をした。頭を上げると神殿の部屋に戻っていた。



「神殿長、お忙しい中、ご対応をありがとうございました」


「他国に行かれるとは驚きました。しかし、創造主様はお2人と話されるときは楽しそうにお話しをされますな」


「私と妻は創造主様から見れば子供のようなものなのでしょう。やんちゃな幼子を導いてしまい、手間ばかり増えて後悔されているかもしれません(笑)」



 僕とアスカが神殿長に別れの挨拶をして神殿の外に出た。そのまま庶民街の市場に向かい大量の買い物をしてから王宮へ帰りました。


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