【幕間挿話】その後のグランとアスカ4
――僕とアスカが王宮に引っ越してきてから、次章が始まるまでのお話しです――
王宮での生活に慣れた頃、アスカの体調が優れない日が続いた。僕は心配になりヒメミさんに相談してみた。ヒメミさんは王宮のお医者様であるデリア先生に診察を依頼してくれた。
ヒメミさんの相談を受けたデリア先生はすぐに部屋を訪問してくれた。デリア先生は初老の女性のお医者様だった。デリア先生とヒメミさんがアスカが横になっている部屋に診察に向かってくれる。もちろん、僕は同行はダメと言われて居間で待ちぼうけ(涙)
しばらくして、ヒメミさんが僕を呼びにきてくれた。デリア先生が診察結果を教えてくれる。
「公爵様、おめでとうございます。奥方様はご懐妊です」
?……ご懐妊?……あれ?……もしかして……赤ちゃんできたの!
僕は飛び上がらんばかりに大喜び!部屋にいたアスカも含めた皆さんが、微笑ましい表情で僕の喜び浮かれる姿を見ていた。
僕は早速、フィーネ伯母上に報告。いろいろな人がお祝いを伝えに部屋を訪れてくれた。王宮関係者の訪問が落ち着いたところで、僕は父上のところにも報告に行った。父上が珍しく大喜びしてくれた。もちろんセイラさんとセリエさんもだ。
父上はガルム伯父上と一緒に王宮に顔を出してくれると言ってくれたので、アスカに伝えますと言って父上のお屋敷を後にした。
その後、ガルム伯父上の計らいで、多くの馬車が王宮に大挙して登城してくる。多くの人が着慣れない制服やドレスに身を包み、僕たちの部屋を訪問してくれた。来てくれたのは、元魁メンバーの皆さん、セルスさんにランゼンさん、それにクラン連合でご一緒した、女性の皆さんだった。
久しぶりの皆さんとの再会に大喜びの僕とアスカ。僕はアドラ料理長にお願いして、急遽立食パーティーを開いてもらった。もちろんアスカはノンアルコールだよ!
アスカのお腹は日に日に大きくなっていった。デリア先生はちょくちょくアスカの様子を見にきてくれて、アスカとおしゃべりするとすぐに帰っていかれた。
そんなある日、僕とアスカにデリア先生が話してくれた。
「公爵様、奥方様、たぶんお2人のお子さんは双子です」
僕もアスカも手を取り合って大喜び。いっぺんに家族が2人も増えるのだから!そして、隣にいた父上も大喜びだった。どうして父上が王宮にいるのかと言うと、アスカが僕の護衛ができない間、僕の護衛は父上にお願いしたからだ。父上は引き受けたくなかったようだけど、アスカのお父様なら安心してお任せできます!の一言で断れなくなったようです。妊婦さんファーストです(笑)
アスカは暇さえあると、せっせと赤ちゃんに着せる服を編んでいた。部屋の女性たち、ヒメミさんもリシテさんもテーベさんも皆が時間があれば服や小物を編んでくれた。アスカはまとまった時間を集中して編み物や裁縫に使ったおかげで、かなりの腕前になったようだ。もともと正確に剣を突けるほど器用なのだから、まとまった時間に集中して取り組めば、腕を上げない訳はなかったようだ。
また、アドラ料理長は子供たちに食べさせる離乳食を研究中。気が早いです(笑)
王宮内は僕たちの子供を祝福するムードに溢れていて、服飾職人さんたちがアスカや子供の服を作ってくれたり、王宮画家さんが絵本を作ってくれたり、庭師さんがお花を届けてくれたりと、至れり尽くせりだった。フィーネ伯母上が言われていた、王宮は子供を育てるにはいい場所は本当でした。
そして、いよいよその日がきました。ヒメミさんが大慌てでデリア先生を呼びにいきます。しばらくするとデリア先生がはあはあ息苦しそうに到着。アスカの部屋へ向かいました。僕と父上は並んで無事に生まれてくることを祈ろうとしたところ、2階の部屋から鳴き声が。あれ、随分と早いのね。そして、しばらくして別の鳴き声も聞こえてきた。
「父上、もう生まれたのでしょうか?少々早い気もしますが……」
「アスカは体を鍛えていたから、安産だったのかもしれんな」
僕と父上でそんなやり取りをしていると、ヒメミさんが僕のところに駆けつけてくれた。
「公爵様、お父上様、おめでとうございます。とても可愛らしい双子の女の子の赤ちゃんです」
僕と父上は抱き合いながら大喜びです。
しばらくして、ヒメミさんが僕と父上をアスカのいる部屋に呼びにきてくれた。僕と父上は緊張しながら部屋にはいる。僕と父上の姿を見て、アスカはにっこり笑ってくれたけど、やはり少し疲れた様子だ。
恐る恐るアスカのそばへ行くと、真っ白な布にくるまれた小さな赤ちゃんが並んで寝かされていた。とても穏やかな寝顔をしていた。
僕はもう涙腺が決壊して、ただただ涙が溢れて止まらない。
「アスカ、ありがとう。僕とアスカの家族を生んでくれて」
「はい、旦那様。これからは4人で家族です」
僕はただただ涙を流しながら、うんうんと頷き続けるだけだった。
「お父様、私の可愛い娘たちです。少しはお父様に親孝行ができたでしょうか?」
「ああ、アスカは最高の娘だ。アスカはずっと俺にはもったいないほどの、最高の娘だ」
父上も目に涙をいっぱいに浮かべて、うんうんと頷いていた。
それから僕と父上は、デリア先生とヒメミさんに手助けされながら、無事に娘たちを抱っこさせてもらった。この感動を一生忘れることはないだろう。そして、娘たちが幸せに暮らせるよう、王国の安定と発展を支えていこう。僕はそう心に固く誓うのでした。
娘たちが生まれて数日後、アスカの体力も回復したので、部屋の皆さんに子供をお披露目することにした。
皆さんには食堂に集まってもらって、僕の後に子供を抱いたアスカと父上がついてきて入室する。
「皆さんのおかげで、無事に双子の女の子が生まれました。アスカに抱かれているのが長女のアリス。父上に抱かれているのが次女のアリサです。どうか皆さんも一緒に娘たちの成長を手助けしてやってください。よろしくお願いします」
僕が深々と頭を下げ、アスカと父上は会釈した。皆さんがおめでとうございますと言いながら拍手してくれた。拍手の音に驚いたアリサが泣き出した。拍手が止まり、皆でほっこり笑顔になった。
『母さん、僕にも娘が生まれて、無事に家族が増えたんだよ。母さんもいよいよおばあさんだ(笑)喜んでくれるかな?父上はもう孫にデレデレだよ。これからは家族4人で頑張っていくから、どうか母さんも僕たちを見守ってください』




