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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
3章 夢を紡ぐ2人編
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130話 アスカの覚醒

 僕とアスカがダンジョンへ行くとセリエさんに伝えると、セリエさんは怪訝な表情です。まぁ、当然ですよね、引っ越しを控えているのになぜこの時期にって。僕は王宮に引っ越してしまうとしばらくダンジョンでの実験に行けなくなるからと苦しい言い訳をしておいた。横にいるアスカがすまなそうにしている。ただ、セリエさんはお2人がいない間に不用品の片づけや大掃除をしておきますと、前向きに考えてくれた。


 3人で夕食を済ませ、僕とアスカは早々にお風呂に入り、自室へ向かった。ベッドで横になると、アスカが僕に謝罪をし始めた。



「旦那様、無理を言って本当にごめんなさい」


「ううん、気にすることないよ。アスカがどうしても試しておきたいことなら、僕は全面的に協力する。今まで僕ばかりがわがままを言って、アスカを連れまわしていたからね」


「ありがとうございます。旦那様に新しい私の戦い方をお見せできたらと思っています」


「うん、楽しみにしているよ。明日に備えて今夜はもう眠ろう」



 僕とアスカはぴとりとくっついたまま、幸せな眠りにつくのでした。




 ダンジョンへ行く日の朝は、アスカの希望通りにいつものペースでスタート。訓練と入浴、朝食をいただいた後の、のんびりな出発です。今日はいつもダンジョンへ向かうときの服や装備。きっとこの格好でダンジョンに行くのは最後になるだろう。


 飛び箱をゆっくり進めてダンジョンの門で一度降りる。守衛の皆さんに挨拶をしながら通り過ぎ、そのまま歩いてダンジョン入口へ。もうほとんど人はいなかった。ダンジョン内に入ったところで再び飛び箱に乗る。トンネルをくぐって下層へ進んでいく。



「アスカ、何階層へ行けばいいかな?」


「30階層のボスと戦うつもりです」


「いきなり30階層のボスで大丈夫?」


「はい、私の想定している戦い方を試すのに、ちょうどいい相手です。それと旦那様。今回は私の細剣は旦那様にお預けして、旦那様の作られた魔道具の細剣を2本で戦うつもりでいます」


「うん、剣のことは了解。でも、アスカが剣を2本使うなんて、初めて聞いたよ」


「はい、私も初めてです」



 初めて尽くしで本当に大丈夫かな?僕は心配になってくるけど、アスカは全然平常心といった感じ。アスカを信じるしかないか……




 僕たちは飛び箱に乗ってトンネルを通り過ぎ30階層まで進んでしまった。途中の魔獣は僕が魔法の糸で討伐しながら進んだので、毒の魔法で討伐するより時間がかからなかった。昼食の時間を少し過ぎていたけど、アスカは食事の前にボスと戦うと言った。もちろん僕に異存はないので、30階層の中央へ向かいながらボスを探す。中央付近に近づくと、31階層の入り口近くにボスがいるようだ。アスカに伝えてボスに認識されない距離まで近づき飛び箱を降りた。アスカの剣を預かりリュックにしまい、代わりに僕の作った魔法の細剣2本をアスカに渡した。アスカはベルトの左右に剣の鞘を取り付け、何度か剣を抜いたり鞘に納めたりを繰り返していた。



「旦那様、準備完了です。いってきます」


「アスカ、僕は何をすればいいかな?」


「私が無理だと感じれば、旦那様のところに戻ってきます。その時は旦那様が討伐してください」


「うん、了解。アスカ、くれぐれも気を付けてね」



 アスカがゆっくりボスに向かって歩き始める。歩きながら両手で剣を抜く。剣は抜いたものの構えるでもなく、リラックスした状態でただボスに向かって歩き続けていた。そのうちにボスがアスカに気付き、右手で剣を振ってきた。アスカは動じることなく、迫ってくる剣を簡単に自分の剣で叩き返してしまう。ボスは体勢を崩したけどアスカは攻撃にでない。ボスは体勢を戻し、今度は得意の2刀による回転切りの体勢をとった。アスカは尚も自然体で剣を構えることすらしない。アスカがとった行動は数歩後ろに下がったくらいだった。ボスが刀を振り始める。アスカがさらに1歩下がる。どうもアスカはボスの剣がぎりぎり届かない距離まで下がったようだ。そしてアスカに向かってくる2本の剣に対して、ついにアスカが右手を突き出す。


 カカンと金属と金属のぶつかる音が響き渡る。僕はヒヤッとしながらその様子を見ていたけど、驚いたことに弾き飛ばされたのはボスの方だった。アスカは力を入れるでもない右手の剣で、ボスの渾身の2刀の回転切りを跳ね返してしまったのだ。僕はもう何が起こっているのかまったく分からなくなっていた。


 ボスが体勢を崩したところで、アスカはボスの懐まで駆け寄り、タタンとリズムよく右手の細剣を2度突き出した。そして、あっさりとボスは光の粒となってまばゆく光り、その姿は消え失せた。


 僕がその場でポカンとしていると、アスカは剣を収めて戦利品を回収して、僕のところに歩いてきた。アスカは息が乱れるでもなく、汗をかくでもなく、戦う前と変わらない姿で戻ってきた。僕はアスカから戦利品を受け取りリュックに片づけたけど、そんなことよりアスカに説明してほしくてしかたがない。



「アスカ、どんな技を使ったの?」


「旦那様に教えていただいた、飛行魔法と分解魔法です」


「……」


「ええとですね、剣を受けるときに私の細剣に飛行魔法を使いました。細剣はその場にあり続けると念じました。そして、突きは1度目で分解魔法による小さな穴を開けて、2度目の突きで貫いたのです」


「ええと、アスカの説明で理解はできた。魔法に関しては僕でも同じことができそうだけど、体の動きは絶対真似できない。アスカにしかできない討伐法だね」


「ありがとうございます。旦那様から魔法を教えていただいたので、このような戦い方ができるようになりました」



 僕は目の前で見せられた光景に、なんだから体の力が入らない感じ。トンネルの近くまで移動して、まずは昼食を食べて冷静さを取り戻した方がいいみたいです。


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