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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
3章 夢を紡ぐ2人編
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126話 王宮での会食

 僕とアスカはバストンさんに席に案内されたが、その場でまずは臣下の礼で国王陛下と宰相様にご挨拶をした。



「グラン、アスカ、急な食事会の参加を申し訳ない。ただ、2人からはいろいろ聞きださなければならないことが山積みだ。宰相までが同席を望んだので許可を与えた。公式でなく内輪の食事会なので、気軽に過ごしてくれ」



 僕とアスカが再び頭を下げたところで、バストンさんにお席にどうぞと着席を勧められる。僕とアスカが席につくと、バストンさんが直ぐにそばへきてくれた。



「お2人ともお疲れ様でした。お飲み物は何にされますか?新しい赤ワインを仕入れてありますから、お味見してみますか?」


「では私は赤ワインを、アスカは?」


「私も赤ワインをお願いします」


「今回のワインはお2人のお口に合うと思います。ぜひお2人で楽しんでください」


「ありがとうございます」



 バストンさんが注いでくれたワイングラスを手にして、僕とアスカは小さな声で乾杯と言って、王宮のワインを飲んでみた。バストンさんが自慢するだけあって、とてもおいしい。僕とアスカがにんまりしている姿を見て、今回もバストンさんはにっこり微笑んでくれた。


 国王陛下は王妃様とヒソヒソ話しを続けている。今日の報告をしているのだろう。僕は良い機会だと思い、宰相様に質問してみることにした。



「宰相様、ダンジョンのことでいくつか伺いたいのですが、よろしいでしょうか?」


「ええ、かまいません。何なりと聞いてください」


「ありがとうございます。まず、私とアスカでダンジョンの最下層のボスを倒せたとして、ダンジョンの魔獣の発生源を止められたとします。そうなると、冒険者は危険なダンジョンに行く必要がなくなりますが、同時に王国にとっては戦利品の供給が止まることになります。王国は戦利品の供給が止まることでお困りになりますか?」



 僕の質問に宰相様が快く答えてくれた。



「戦利品の供給が止まることは、現在の王国の運営に支障がでるものがあります。代替えの品を研究していますが、今はまだ見つかっていません。もし2人にダンジョンの攻略を完了させる力があったとしても、今はまだその力の使用は控えてください」


「宰相様、ご説明をありがとうございます。では次の質問で、ダンジョン内に建築物を作ってもよろしいでしょうか?」


「ダンジョン内に建築物とはどのようなものを考えていますか?昔もダンジョン内に建造物を作る試みがあったようですが、魔獣に破壊される結果となったようです」


「21階層辺りに、冒険者が休息をとれるオアシスのような場所を作りたいと考えています。当初は水の補給と安心して野営ができる安全地帯を作りたいです。最終的な目的はダンジョン内で宿屋を作りたいと考えています。宰相様のご心配な点は、階層主であるボスでも壊せない素材で作る予定なので破壊される心配はしていません」


「ダンジョン内で宿屋ですか……」


「宰相様はご存じないと思いますが、冒険者はダンジョン内では地面の上に寝転んで眠ります。水の補給がとても難しいので、水筒の水を少しずつ飲んでしのぎます。ですのでダンジョン内に入ってしまうと、体を拭くことすら難しくなります。それは世界最強の冒険者である、アスカでも変わらないのです」


「冒険者とはそれほど過酷な環境でダンジョン攻略を行っていたのですか……」



 やはり宰相様でも冒険者の過酷な状況はご存じなかったようだ。



「グラン、アスカ、許可を与えるので、冒険者の生活改善になるように研究をしてみてください。何か進展があれば報告をお願いします」


「かしこまりました」




 国王陛下と王妃様のお話しが終わったところで、国王陛下に声をかけられた。



「グランとアスカは冒険者レベルが18になったそうだな。おめでとう。だが、38階層のボスに苦戦していた2人が、どんな攻略方法を生み出したのだ?」


「空を飛ぶ魔道具を開発しています。現状は飛ぶことに問題がないようなので試験的に実際に使用しはじめました。私とアスカはこの魔道具を飛び箱と呼んでいます。この飛び箱を使用して、ダンジョンの上空からボスに対して毒の魔法を詠唱しました。毒の魔法の効果は魔獣にもボスにも等しく効果がありました。これによって、39階層と40階層のボスを攻略してきました」


「不思議なものが飛んでいると報告があったのは事実だったということか……」


「はい、飛び箱を使って倉庫街の先の滝まで行ってきましたので。ここでも国王陛下にご報告がありまして、ミスリルの鉱脈と思われる場所を見つけてきました。ただ飛び箱でないとたどり着けない場所なので、王国でミスリルが必要な場合は、私とアスカに採取をご命じください」


「ガデンの店と専属契約をしていると聞いておるが、儂の命なら採りに行ってくれるのか?」


「それはもちろんです。ガデンさんのお店とは独占的に販売する契約です。そもそも国王陛下が治める王国内から採取した素材を、国王陛下に販売するなど恐れ多いです」


「分かった。近衛兵団で困ったときは助けてやってくれ」


「かしこまりました」



 僕はしゃべり過ぎて口の中がカラカラだ。ワインをグビっと飲んで小休止です。今日は僕からの報告が多いのは覚悟をしていたけど、国王陛下と宰相様相手にお話しをするのは、気疲れが半端ないです(涙)


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