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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
3章 夢を紡ぐ2人編
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125話 他人の思考を読む

 王妃様の護衛のレイス様を先頭に、王妃様、僕、アスカの順で王宮の地下へ向かう。王妃様が何やら呪文を唱えると、大きな岩の壁が上に上がっていく。そこは小さな光があるものの、足元も見えない地下通路だった。王妃様が光の魔法で辺りを照らしてくれて先に進む。背中の方では岩の壁が降りる音がして、元の位置に戻ったようだ。


 しばらく進むと通路とは違う石の床が使用されている広いフロアへ出る。横に上りと下りの階段があり、レイス様は階段を下りていった。2階分ほどの階段を降りると明かりのついているフロアへ出る。頑丈そうな門の横に、門番が2人立っている。王妃様の姿を見ても、会釈をするだけだった。王妃様はまた、呪文を唱えると門が上がっていく。門番は門の上がっている間は、最大級の警戒をしているようだった。通路を先に進んで行くが、両側は誰もいない牢屋だった。一番奥まで進むと、他の牢屋とは明らかに違う作りの牢屋に到着。石のイスに憔悴しきったビーズ伯爵が座っていた。


 そんな中、エコに声をかけられる。



『ロイヤルプレースのフィーネさんと繋がりました。お話しください』


『フィーネさん、繋がりました。このまま繋げっぱなしにしましょう』


『グラン、魔法をよろしく』



 僕はビーズ伯爵様へ魔法を詠唱。思考を読み始める。



「ビーズ伯爵、このようなことになり、とても残念です。伯爵は、最低位の侯爵家から嫁いできた私にも、色眼鏡で見ることなく接してくれた数少ない人でした。そのようなお優しいお方が、いったいどうしてこのようなことをされたのですか?」


「……」


「ビーズ伯爵にお助けいただいたからこそ、国王陛下のお怒りの中、無理を言ってここまできました。国王陛下は、伯爵家および魔法士協会のされていることに大変なお怒りです。ビーズ伯爵だけにとどまらず、ビーズ伯爵家から一族に至るまで重い罪が及びそうです。国王陛下のご様子では、一族ことごとく命で償わせるお考えをお持ちのようです」



『家族までが斬首されるというのか!それほど国王陛下はお怒りなのか……俺は国王陛下の様子を集めたのと、魔法書の持ち出しに手を貸しただけなのに……』


『フィーネさん、国王陛下の様子を監視して情報を集めていたのと、魔法書の持ち出しを手伝っていたようです』



「ビーズ伯爵、私のお節介が不要なら、私はこのまま引き返します。でも、ご家族や伯爵の命をお助けするには、知っていることだけはお話ししていただく必要があります。どうされますか?」



『命が助かる?本当か!ズールには悪いが、家族を犠牲にしてまで、ズールを守る義理はない』


『フィーネさん、ズールという人が関わっています。知っていることは話してくれそうです』



「王妃様、温情をかけていただき、ありがとうございます。そして昔のことを今でも恩に感じていただけて、嬉しく思います。知っていることはすべてお話しし、罪を償いたいと思います。どうか家族の命をお助けください」


「ビーズ伯爵、こちらこそ、ありがとうございます。私のできるすべてのことをして、伯爵とご家族をお守りすることをお約束します」



 それから王妃様とビーズ伯爵はいろいろな話しをされていた。伯爵家はお子さんが魔力量に恵まれず、魔法に関する知識にも乏しいことから、伯爵家を継がせるのが難しいと判断したそうだ。だが、伯爵家と言えども資産があまりなく、子供たちの将来に残してやれる財産を何とかしてやりたいと考えていたらしい。そんな悩みにつけ込むように、魔法士協会が接近してきて、魔法書の持ち出しが始まったらしい。そして僕たちとの食事会の数日前にズールから連絡があり、国王陛下と魁のメンバーの食事会のときに、魔法士組合の話しがでたら教えて欲しいと頼まれ、金を置いていかれたそうだ。



『フィーネさん、ここまでの証言に嘘はないようです』


『ありがとう、グラン』


『フィーネさん、私からも質問が。伯爵様が使っていた魔法か魔道具は何か聞きたいです』



「ビーズ伯爵、最後に1つだけ教えてください。あの席でビーズ伯爵が使われていた魔法か魔道具は何だったのですか?私は少々嫌な感覚があったもので」


「なるほど、あれは私の見たものと聞いたものを記録する魔道具だと聞いています。王妃様にはあの微弱な魔力も感じ取られていたのですね。さすが王妃様になられるほどの魔法士様です」


「ビーズ伯爵、もうしばらくここで耐えてください。その代わりご家族はご無事でいられるよう全力で手をつくします」


「ありがとうございます。よろしくお願いいたします」



『フィーネさん、魔道具のことも本当のようです』


『ありがとう、グラン。これで、会話を終わりにします。会話終了』




 ビーズ伯爵は王妃様へ、深々と頭を下げていた。僕たちは元来た道をそのまま通り、王宮まで戻った。いよいよ食事かと楽しみにしていると、前を歩く王妃様のそばへ歩み寄る女性がいた。何やらヒソヒソお話ししたことろで、僕たちに話しかける。



「グラン、アスカ、お部屋が変更になりました。国王陛下と宰相が食事を共にしたいそうです」



 あれ、国王陛下に宰相様?宰相様は王国で2番目に偉い王国内の政治を国王陛下と一緒にされている人だったと記憶している。何でそんな偉い人も同席されるのだろう……ちょっと心配です。


 再び王妃様が歩き出されて、僕たちが後ろをついていく。目的の部屋に着いたのか、レイス様が大きな声で王妃様の到着を告げた。レイス様が王妃様に入室の目配せをすると、王妃様は小さく頷かれる。レイス様によって扉が開かれ、いよいよお部屋に入室です。


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