表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
3章 夢を紡ぐ2人編
272/336

124話 王妃様からの依頼

 僕とアスカとヒメミさんが王妃様とお会いする部屋の前に到着。すでにお部屋の前には女性が待っていてくれた。僕は王妃様へお見せする品ですと伝えて、39階層と40階層のボスの戦利品と、魔道具のランタンをお渡しした。受け取ってくれた女性は横のワゴンにこれらの品を乗せていく。すべて渡し終えたところで、ヒメミさんに部屋の中へ案内された。


 王宮にしては小さめの部屋だった。親しい人たちが打ち合わせでもするような気軽でありながら事務的な雰囲気のある部屋だ。ヒメミさんにこちらへと言われ、席に案内される。もちろん、王妃様にご挨拶をするまでは席に座ることはない。しばらく立ったまま待っていると、王妃様ご到着ですと案内の声が響く。僕とアスカは臣下の礼でお待ちする。


 王妃様が入室されて、席に着かれる。僕はお決まりのご挨拶をしたところで、王妃様に席に座るように言われ、これでようやくイスに腰かけた。



「急に呼び出して、ごめんなさいね。王都の外に出かけていたと聞きましたが、慌てて戻ってきたのですか?」


「本日、王宮へ伺う際に使用した魔道具に乗って帰ってきました。この魔道具は走る馬よりも4倍程度は早く移動できるので、倉庫街の先から王都に帰ってくるのはすぐでした」


「不思議な魔道具を作ったのですね。それに今日は見せてもらえる品があるとも聞きました。まずは説明をしてもらいましょうか」



 僕は39階層と40階層のボスを討伐したときの戦利品を国王陛下に献上したい件と、魔法士でなくても使える魔道具のランタンを作ったのでお見せしたいとお伝えした。王妃様は戦利品については、あまり興味を示されなかったけど、ランタンには驚きの表情で興味を持たれていた。


 僕はランタンの使い方について説明すると、王妃様はレバーをひねって明かりをつけたり消したりされたり、取り出した魔力石を不思議なものを見るようにじっくり観察されていた。



「グラン、これらの品は私に預からせてください。国王陛下にお見せします。ランタンは試作品と言っていたので1度返しますが、もう1つ同じものを作って、できたところで国王陛下に献上しに王宮へ来なさい」


「かしこまりました」



 これで僕たちからの報告は終わりで、これからは王妃様からの本題だ。王妃様がお話しを始められる。



「魁のリサから、冒険者ギルドを通して嘆願書が提出されました。その内容は冒険者ギルドの中に魔法士組合を作りたいとの要望です。魔法士の待遇改善を目的としているようですが、情報の共有や魔法や魔道具の開発。ポーションの製造もしたいと書かれていました。特に問題はないと思っていたのですが、魔法に携わる貴族や魔法士協会が異を唱え出したのです。きっと自分たちの立場や利権を守ろうとしているのでしょう。それで先日のような不届き者が王宮や王城内で、情報を得ようと躍起になっています」


「王妃様、冒険者の中で魔法士協会と関わりがある者がいるとは思えませんし、我々に何をお望みですか?」


「先日、グランは屋根裏に潜む伯爵を見つけました。何かしらの魔法でしょ?力を貸して欲しいのです。ただ、ここから先の話しは他言はなりません」



 僕とアスカは姿勢を正して王妃様のお話しを待つ。緊張してきた……



「グラン、私はあなたをアグリさんの息子と思って信じています。信じていいわね?」


「はい、母の親友である王妃様を裏切ることは、決してありません」


「分かりました。これからエコからのみグランだけが見られるように、王家に伝わる王国魔法の魔法書の閲覧許可を与えます。この魔法書の存在は絶対に口外してはなりません。ただ、こっそり使うのは許可してあげます。私はこの本の一部の魔法しか使えませんでした。そして今回使いたいのは、思考を読み取る魔法。私は使えませんでした」


「ああ、思考を読む魔法ですね。私も詠唱はしたことがありませんが、知ってはいました。でも、王国魔法だったとは驚きです」


「グランはその魔法をどのようにして知ったのですか?」


「外部記憶装置で読みました。古代の言語で書かれている本なので人目につかなかったのでしょうか?」


「先ほども言いましたが、王国魔法として一般には存在を公言していません。グランも存在は口外しないでください」


「それはかまいませんが、王国魔法の魔法書に書かれている魔法が使えなくなるのは、困ってしまいます。私が読んだ本には28種類の魔法が書かれていたので、その多くが使えなくなるのはダンジョン攻略で痛手です」


「28種類ですか!王国魔法の魔法書にはそれほど多くの魔法は書かれていませんでした。その本を私も読むことができるのですか?」


「それにはお答えできません。外部記憶装置で閲覧できる権限があるようです。私も外部記憶装置で閲覧を拒否された文献があり、国王陛下の許可を得れば閲覧可能かと質問したところ、国王陛下でも閲覧権限がないとのことでした」


「国王陛下が閲覧できない本をグランは閲覧できるのですか?」


「私にもどこまでお話ししていいのか判断ができません。ただ王妃様、外部記憶装置が王国の技術で作ることができると思われますか?お察しください」


「分かりました。この話しはなかったことにしましょう。ですが思考を読む魔法の詠唱はお願いします」


「詠唱したことがない魔法ですがやってみましょう。先日捕まえた伯爵様の思考を読むのですね」


「そうです。最低でも肯定か否定かは読めると助かります。そして尋問中の私とグランの会話はロイヤルプレースとエコで行います。グランはアグリさんのブレスレットはつけていてください」


「王妃様、もうブレスレットは私には不要になりました。エコから直接思念が送られてくるそうなので」


「?……分かりました。では、試してみましょう」



 王妃様が会話を終えるとエコから声がかかる。



『ロイヤルプレースのフィーネさんと繋がりました。お話しください』


『王妃様、問題ないようです。私は思考を読む魔法について本で確認してみます』


『ええ、そうして。会話終了』



 ここで王妃様との会話が終了する。僕は早速魔法書を読んでみることにした。



『エコ、この間見せてくれた魔法書を見せてほしいのだけど。知りたいのは思考読の魔法』


『了解です』



 エコが該当ページを見せてくれる。すでに現代語訳のページとして見せてくれていた。



『エコ、詠唱文を音読して』


『アリューソー』


『ありがとう、エコ。次はロイヤルプレースのフィーネさんと話したい』


『ロイヤルプレースのフィーネさんと繋がりました。お話しください』


『王妃様、魔法書は読みました。魔法が使えるかの確認してみましょう』


『そうですね、これから侍女に紅茶を持ってこさせますから、何を入れて飲むのがおすすめですかと尋ねてみたらどうかしら?』


『分かりました。それと王妃様、王妃様のことは母がエコに登録したので、エコの中ではフィーネさんで登録されています。フィーネさんとお呼びしてしまうことがあるかもしれません。ご了承ください』


『ここでの会話は普段どおりでいいわよ。私もそうする。たまには昔に戻った気持ちで話したいもの』


『分かりました。では、ここではフィーネさんとお呼びします』


『そうして。それじゃ侍女を呼ぶわね。会話終了』



 会話が終わると、王妃様がヒメミさんを呼んで侍女にお茶を届けるように指示をする。お茶が届くまでの間に、僕はエコを通してアスカにも状況を伝えておいた。エコには別に頼んで、アスカにも僕と王妃様の会話を聞けるようにお願いしておいた。


 しばらく待つと侍女がきて、お茶を入れてくれる。僕は魔法を詠唱した。



『アリューソー』



 すると、お茶を入れている侍女が考えたことが聞こえてきた。



『お菓子もお持ちした方が良かったかしら?ヒメミさん、若い女性もいたなら教えてくれればよかったのに!』



 お茶を入れ終わったところで、僕が侍女に向かって質問をする。



「このお茶は何を入れて飲むのがおすすめですか?」


『あら、そんな質問をされる人は珍しい。ここは王妃様のお好みでいいわね』


「今回お持ちしているグラニュー糖が合います。香りを損なわない上品な甘さです」


「ありがとうございます。では、グラニュー糖でいただいてみます」


『エコ、ロイヤルプレースのフィーネさんと話したい』


『ロイヤルプレースのフィーネさんと繋がりました。お話しください』


『フィーネさん、思考が読めました。フィーネさんのお好みをおすすめしてくれました』


『さすが、グランね。お茶を飲み終えたら出発しましょう。会話終了』



 人の思考を読むなんて緊張する。怖いことを考えている人の思考を読むのは嫌だな……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ