121話 魔道具のランタン完成
アスカの剣のお墨付きをもらえたところで、僕は続いてリュックから魔道具のランタンを取り出す。魔力石をはめ込んでいないので光ってはいない。
「ガデンさん、ゲイテさん、これは私が作ってみた魔道具のランタンです。これに魔力を供給させるための魔力石も作ってみました」
「……」
お2人とも何のことやらという顔をされている。1度見てもらわないと理解しずらいかな?僕は左手に持ったランタンに、アスカに頼んで魔力石をはめ込んでもらう。すると白い光が部屋を照らし始める。ガデンさんとゲイテさんは眩しそうにランタンを眺めている。お2人とも眩しくなったのか視線を外されたので、アスカが魔力石を抜き取ってくれた。もちろん、ランタンは光らなくなる。ここでゲイテさんがようやく言葉を発してくれた。
「これをグランさんが作られたのですか?」
「はい、私が1からすべて作ってみました。中の魔方陣はダイヤモンドで作って、外装はミスリルで作っています。この外装も杖の変形です。分解して中もお見せしましょう」
僕は外装部分をナイフででも切ったように、縦にさっと切り開く。ミスリルなのに、柔らかいお餅ののようにぐにゃりと平たく開ける。
「中の魔方陣はとても単純です。魔力を受け取る部分、魔力の出力を一定にする部分、魔力を放出する部分。魔力は魔力石から供給されて、発光石に流され光らせています」
「グランさん、簡単に話されていますが、王国で魔方陣を1から作られた人は、今までにいないと思いますよ」
「私はたまたま紹介された文献を参考に作ってみただけです。でも、ダイヤモンドで魔方陣を作る発想は私のオリジナルのようです。文献に書かれていた材料は手に入りそうもなかったので」
「私も魔方陣のことは多少の知識がありますが、私からはお話しできません。このランタンを国王陛下にお見せして、情報開示をお願いしてみてください」
「分かりました。ちょうど明日、王妃様とお会いするので相談してみます。では、ここからがガデンさんとゲイテさんにお知恵をお借りしたお話しです。このランタンは試作品なので、明かりをつけたり消したりは魔力石をはめたり外したりで行います。不便なので、レバー式か押しボタン式にしたいのですが、私にはその辺の知識がありません。それと、魔力石は魔力が無くなれば消滅する仕組みにするつもりです。なので別の魔力石を買ってきて、簡単にはめ込める仕組みにしたいのです。いかがでしょう?」
僕の質問を聞いて、今まで黙っていたガデンさんが紙とペンを取りに部屋を出て行かれる。ガデンさんと入れ替わるようにケインさんが部屋に入ってきて、新しいお茶とケーキを用意してくれた。僕とアスカが恐縮していると、好きなだけ食べていってください、大事な商談だとガデンから言われましたから、だそうです。あらら、もうガデンさんは商売になるつもりになっているのね(笑)ケインさんが部屋を出て行くと、部屋に残った3人でケーキをご馳走になった。きっと貴族街のお店で買っているよね、このケーキは。お味がもう高級ですから!
ケーキを食べていると、ゲイテさんもケーキを食べながら僕に質問してきた。
「グランさん、この魔道具はグランさんでないと作れないのでは?」
「今のところそうですね。でも、私は一般の人でも作れる……最低でも魔法士さんなら作れる作業工程を考えていきたいと思っています」
「でも、ダイヤモンドの魔方陣は魔法士でも作るのは難しいでしょ?」
「はい、その通りです。なので、この魔方陣を作るための魔方陣とか魔道具を作るつもりです。この魔方陣を作るための魔力も、この魔力石から魔力の供給を受けられれば、一般の人でも作業ができるのではないかと……ただ、王国では一般的でない魔法を複数使うことになります。なので可能なら、ガデンさんとゲイテさん、私とアスカの4人で工房を作って設計と量産化までは進める許可を国王陛下にいただきます。そして、量産化する際には、国王陛下に再度許可を得ようと思っています」
「もしかして、グランさんは別の魔道具も作るおつもりで、魔力石も作られたのですか?」
「はい、そのつもりです。火をつける魔道具とか、水が出る魔道具とか、生活に根付いた魔道具を作っていきたいです」
僕が熱く語っていると、ガデンさんが紙やら部品やら材料やらをたくさん抱えて戻ってきた。
「グランさん、詳しく説明するのは時間がかかるので、今日はこう作れでいいか?」
「はい、それでお願いします」
ガデンさんは紙に書いたり、開いた外装のここの部分に切れ込みを入れてとか、魔力を受ける魔方陣をもう少し小さくしてくれとか、だんだん言葉遣いも職人さんになってきました(汗)僕は言われるままに魔法で形を変えていく。さらにガデンさんが持ってきてくれたいくつかの部品を付けられるようにも変形させた。
最後に外装を魔方陣を包み込むようにくるりと円筒状にして、いくつかの部品を設置してふたを閉めてしまう。これで完成だ。魔力石は横のくぼみから押し込んで設置。レバーをひねると明かりがついて、レバーを戻せば明かりが消える。うん、僕の想像以上にいい感じ!
僕とアスカは完成したランタンを便利便利とキャッキャしながら喜んでいた。その間に、ゲイテさんが僕と話したことをガデンさんに伝えていた。
「グランさん、ゲイテから話しは聞いた。魔道具制作工房を立ち上げたいということも聞いた。なぜ俺とゲイテをパートナーに選んだのだ?」
「これから作ろうとしているのは魔道具です。なので発動する魔法によっては人に危害を加えることができる魔道具も作れるのです。でも、そんなものは作りたくありませんから、情報共有は信用できる人とだけにしたいです。国王陛下にも4人だけが魔道具の開発に関わっているとお伝えして、生産に関しては魔法の知識のない人でも可能なような単純なものにしたいです」
「ゲイテはともかく、俺は魔法の知識はないぞ」
「今回のランタンの外装は、私が作るよりガデンさんが作った方が量産ができます。私が試験的なものを作って、それを元にガデンさんが量産できる仕組みを作って欲しいのです」
「ガブリエル商会の中に工房を作るのか?それとも新たに工房を作るのか?」
「私は特にこだわりはありません。秘密が守れるのならどちらでもいいです。ただ、私もアスカもお金を儲けたいとは思っていません。なるべく安くして多くの人に使ってもらえるようにしていきたい。希望はそれだけです」
僕の横でアスカも頷いていた。まぁ、即答は求めていないので、ガデンさんとゲイテさんでじっくり検討してもらいましょう!




