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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
3章 夢を紡ぐ2人編
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117話 食事の後は魔法です

 飛び箱に乗った僕たちが倉庫街の上空に到着すると、僕もアスカも身を乗り出すようにしながら倉庫街を眺める。改めて大きな建物が多いことに驚く。おまけに碁盤の目のようにきれいに仕切られている部分がほとんどだ。倉庫のための街というのがよく分かった。僕たちは上空をクルリと1周して、次の目的地の滝へ向かうことにした。



「王都から倉庫街までどのくらいの時間で飛んでこれるのだろう。今度は時計で時間を計りたいな」


「馬に比べると倍以上速そうです。飛び箱なら王国の端から端まで最短距離で飛べそうですね」


「冒険者を辞めても、緊急の手紙を届けるような仕事ができるかもしれないね。国王陛下が便利に使ってくれるかも」



 アスカとおしゃべりしていると、滝にもすぐに到着。ここも上空を1周してから人目のない場所を選んで、地上に降りることにした。



「アスカは疲れていない?体への負担はなかった?」


「はい、私は大丈夫です。旦那様はいかがですか?魔力の消費はどうでしたか?」


「うん、僕も体調は問題ない。魔力の消費も問題ない。昼食の休憩をすれば、朝から晩まで飛び続けることもできるよ」


「旦那様、少し早いですが、お昼ご飯をいただきませんか?以前、お茶を飲んだ場所は滝も見えて人目もない素敵な場所でしたから」


「そうだね、僕もミスリルの採取も始めてみたいからちょうどいい」



 僕たちは飛び箱を地上を走らせて移動する。以前は馬に乗ってきた場所だから、飛び箱での移動も問題なかった。目的地は崖際の開けた場所で、下が岩肌なのでイスやテーブルも置きやすい。ここで昼食を取りながら休憩することにしよう。


 僕はリュックからテーブルとイスを取り出そうとする。アスカが横で手伝いをしてくれそうだったけど、僕は自分でやるから大丈夫と伝えた。アスカにリュックの口にリングを付けてもらったことで、口を開けたままにしておけるようになった。左手だけをリュックに突っ込んで、イスを取り出す。イスは右手の代わりに魔法の手を出して、それで掴んでおいた。



「旦那様、魔法の手を使われるのですか?」


「うん、そろそろ僕も自立した行動がしたいし、これ以上アスカに迷惑かけるのも心苦しい。でも、心配しないで。リハビリは続けるし右腕の回復を諦めたりはしないから」



 僕が大きなことを言っても、アスカは横から手助けしてくれて、テーブルとイスの設置が無事に終わる。料理もかまどと鍋を出して、ちゃんと料理とスープとパンを用意することにした。料理の温めはフライパンでアスカが担当してくれたので、僕はスープを温めながら、テーブルの上にお皿やカップ、パンやジャムも用意した。僕がかまどに戻ってスープを確認すると、アスカが料理の温めが終わったと伝えてきた。僕はテーブルからお皿を2枚持ってアスカのところへ戻ってくる。アスカにお皿を渡すと、料理を盛りつけて僕にお皿を手渡してくれる。左手で受け取ったお皿を、右手の代わりの魔法の手……今は手のひらを大きくしてお盆の代わりにしているけど(笑)……の上にのせてしまう。



「魔法の手は便利なのですね。最近は魔獣の攻撃にしか使っていなかったので、不思議な感じがします」


「母さんは人の手のように巧みに使っていたけど、僕はそこまでは使えない。ただ、手の形を諦めてしまえば、こうやって便利に変形して使うこともできるんだよ」


「他の人が見たら驚くと思うので、魔法の手は私と2人だけのときにしてください。人がいるときは、私がお手伝いをしますから」


「うん、そうさせてもらう」



 料理の切り分けはアスカがしてくれると言ってくれたので、お言葉に甘えた。おまけに1口目はあーんをしてくれたので、得した気分だ(笑)食事をしながら話しをしていると、アスカにお願いをされた。僕に魔法を教えて欲しいとのことだ。もちろん教えるのはかまわないけど、アスカはきっとミスリルの採取の手伝いをしたいのだろう。



「アスカはミスリルの採取をしたいの?」


「はい、もちろんそれもお手伝いしたいですが、私も旦那様から魔法を教わって、私に何が使えて何が使えないのか把握しておきたい気持ちもあります」


「教えるのはかまわないけど、僕がエコから見せてもらった魔法の本があるんだ。その本を一緒に見ながら一緒に勉強しよう。複製の魔法だけは食事を終えたら教えてあげるね」


「ありがとうございます。私でもミスリルが採れればうれしいのですが」




 食事を終えた後、お茶とクッキーを食べようと思ったけど、先にアスカに複製の魔法を教えることにした。お茶の間にアスカの気力が回復できるだろうから。アスカもその意見に同意したので、僕はリュックから最後のミスリルの塊とアスカ用のダイヤモンドの細剣を取り出す。今の僕は片手に現物をのせて、もう片手に複製物を生み出すなんてことをしなくても複製できるようになっていた。でも、アスカには現物を持たせた方が理解しやすいだろう。そうなると、細剣は手に持つことはできないから、今回は腰のベルトに差しておいてもらうことにした。



「アスカ、この魔法はきっと言葉で伝えることは難しいと思うから、何度も僕とやってみて、体で覚えるように進めよう」


「はい、旦那様にお任せします」


「了解。それじゃ左手にミスリルを持って、じっくり見つめてくれる。右手は手のひらを上にするようにして」



 アスカは立ちながら、肘から下を地面に平行にしながら手首をひねって手のひらを上に向ける。僕はアスカの左手の上にミスリルの塊をのせた後、アスカの背後に回り込んでアスカの後ろからピタリと体をくっつける。そして、アスカの手を下から支えるように、僕の手のひらをアスカの手の甲にくっつけた。



「アスカはじっとミスリルを見ていて。僕が魔力をアスカの体に流すから、その魔力を追いかけるように、アスカは自分で気力を動かして」



 アスカが小さくこくりと頷いたので、僕はアスカの左手からミスリルを感じる。それがどんどん具体的なイメージとして頭の中に形作られる。



「アスカ、頭の中にミスリルの形が思い浮かんだかな?」


「はい、頭の中にかなり鮮明なイメージが思い浮かんでいます」


「うん、それならうまくいきそうだ。そのイメージを右手の手のひらに複写するよ」



 僕はアスカの体の中に送った僕の魔力をアスカの右手の手のひらに集めてぼんやりと形を作る。アスカも僕の真似をして気力を手のひらに集めて形を作りどんどんイメージと同じ形にしていく。形ができたところで一気に魔力を流し込み、作った形をどんどん物体化させる。最初は小さな粒だったけど、少しずつイメージの形に近づくよう大きくなっていく。ただ、残念ながらこの場所では、使った魔力では小さなミスリルの塊しか採取することはできなかった。



「アスカ、おめでとう。アスカが採取した初のミスリルの塊だよ」


「でも、旦那様。こんなに小さな塊です」



 アスカは手のひらに現れた小さなミスリルの塊を見て、残念そうな顔をしている。



「うん、確かに小さいね。でも、この小さな塊が取れるということは、この地域のどこかにミスリルの鉱脈があるということ。そして、今回の僕たちの目的はその鉱脈を探しにきたということ。心配しなくても大丈夫だよ」


「はい、必ず鉱脈を探し当てましょう」



 アスカにはこれからも魔法を詠唱して採取を繰り返してもらい、魔法の効率を上げてもらえばいい。剣も魔法も練習あるのみです!


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