115話 魔道具のランタン
僕はエコに教えてもらった魔道具のランタンを作り始める。まずはダイヤモンドを魔方陣に書かれているとおりの形に変形。中心部分に魔石を配置するのは、ランタンの形を作るうえでは効率が悪い。魔方陣をじっくり観察すると、魔石に接する部分は4本の線として魔方陣につながれている。これならこの4本の線だけ伸ばしてくれば、魔石は中心になくても大丈夫かも!僕はこの4本の線を右端に伸ばす。そして次は発光石の部分。これは別の魔方陣が使われている。魔力を得る魔方陣と同じような形で魔石を中心に描かれている。そして2つの魔方陣は同じく4本の線でつながっている。うーん、これを見る限りは、魔石は魔法陣の中心に置きましょうってことだ。でも、理論的に考えると、魔力を受け取ったり渡したりする部分だけ魔方陣の形にしておけば、他の部分はある程度自由に配置してもいいような気がする。えい、試しに僕の思うままで作ってしまえ!僕は自分なりの魔方陣の形を頭の中で思い浮かべて、その形にダイヤモンドを変形していく。
出来上がった魔方陣は、もう魔方陣とも呼べない形。薄い円状の板3枚を4本の線で支える円柱状の形。円柱状の上の面には、魔力を得るための魔方陣の部分。同様に下の面は魔力を放出する魔方陣の部分。中央の部分がエコが言っていた魔力の出力を一定にする魔方陣。必要な機能は網羅したけど、魔方陣として機能するかはこれから実験だ。
光る部分は発光石を半球状にした。光がきれいに放射されるように配慮したつもり。発光石は割れやすそうな石なので、ダイヤモンドで発光石を被ってしまうことにした。これはダンジョンの天井を真似てみた結果だ。そして一方の魔力を得る部分。これはエコにも話したように、サンストーンと黒魔石を厚さも大きさもコインくらいの形にして、光るまでその層を重ねていくつもりでいる。この層もずれたりしないように、ダイヤモンドの円筒を作って、そこに入れていくことにした。
部品は完成した。でも実験するにも片手では難しい。魔法の手を使うことも考えたけど、魔法の手の魔力が魔方陣に影響する可能性もある。仕方なく外装も先に作ることにした。今は簡単に円筒状にして、円柱の端は少し丸みを帯びた加工を施す。手を切らない配慮と発光石をひっかけて落ちないための配慮だ。円筒の中に発光石、魔方陣の円柱、魔石を入れていくためのダイヤモンドの円筒と詰め込んだ。これで完成です!
「アスカ、これから魔道具の実験をするのだけど、手伝って欲しいんだ。片手では手に負えなくて」
「いいですよ。私は何をすればいいですか?」
「僕が持ってい円筒の上の部分に透明な円筒があるでしょ。そこに赤い石、黒い石と交互に1枚ずつ入れてってくれる」
「それなら簡単ですね」
アスカもベッドの上に座り込んで、僕から受け取ったコインくらいの大きさの赤と黒の石を手に持つ。赤い石を1枚、透明な筒に入れて実験開始です。次の黒い石を入れたところでサーチで確認。魔力は魔石から中心の魔方陣を通って、発光石まで流れているようだ。光らないのは魔力不足だよね。僕はアスカに次々とお願いして、石を入れてもらう。そして5枚目の赤い石を入れたところで発光石が白く光り出した。
「旦那様、まぶしいほどに明るく光ってますが、これで実験は成功ですか?」
「うん、成功!成功なんだけど、ちょっと眩しすぎるね」
僕は魔力を絞る魔方陣を調整して、明るさの調整を始める。少し変更しただけで、明るくなったり暗くなったり微妙な調整だ。それでも試行錯誤していると、このくらいかなという明るさになった。アスカはわざわざカーテンを閉めて部屋を暗くしてくれる。僕は部屋のランタンを降ろして、自分で作ったランタンに替えてみた。
「旦那様、ランタンより明るくて、おまけに明かりも揺らいだりしないので、これなら夜でも本を読んだり編み物をしたりが楽になります」
「うん、火を使っていないから、火事になったりもしない。触っても熱くもないし、これはこれで使いやすいかもしれない」
僕とアスカは単純に夜も明るく過ごせることに喜んでいました。しばらく明かりを眺めていたけど、僕のお腹が鳴ったところで実験終了です(笑)今のところは吊り下げて使うことしか想定していないので、魔力を得る方の石は、単純に上にのせるだけのシンプルな構造のままにしてある。なので明かりを止めるときには、この石を取り除くことになる。この辺の仕組みをどうするかの相談はガデンさんとゲイテさんが適任だろう。ミスリルを手土産に相談しに行こう。
アスカがランタンから5層の魔石の筒を取り出して持ってきてくれた。僕はダイヤモンドでふたをして、円柱の中に5層の魔石が入ったカプセルのようにしてしまう。こういうものの命名はアスカが得意だよね。僕はアスカに質問してみた。
「アスカ、この石がランタンを光らせるための、魔力を発生する石なんだ。何かいい名前を付けたいのだけど……」
「うーん、難しいですね。単純に魔力石ではだめなのですか?」
「まりょくいし……うん、シンプルで覚えやすい。皆もすぐに覚えてくれそうだ。魔力石で決定!」
僕は今回作った魔力石を1魔力と考えることにした。そうすれば、エコに質問すれば、光る魔法の何倍必要かを教えてもらえるからだ。なので、以前教えてもらった分解魔法だと、魔力石を300個並べれば発動できることになる。300魔力ってことだ。まあ、現実的ではないけど、理論としては考えやすいのでこの考え方で進めていこう。
新年明けましておめでとうございます。
旧年中は『名もなき少女から始まった、魔法士の系譜』を読んでいただき、誠にありがとうございました。
2022年も皆さまに読んでいただけるよう努めて参ります。
本年も引き続きよろしくお願いいたします。




