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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
3章 夢を紡ぐ2人編
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111話 2匹のボス

 翌朝は僕もアスカもたぶん寝坊をしたと思う。ただダンジョン内は常に薄明るいので、時間の感覚が狂いやすい。いつものように朝の訓練をして、お風呂にはいって、それから朝食の支度を始めた。昨夜が軽食だったこともあり、2人はお腹がペコペコ。夕食並のがっつりした食事をすることにした。


 僕は干したブドウのはいったパンをちぎりながら口へ運ぶ。実は僕はドライフルーツのはいったパンが好きなのです。アスカにも話したことがないと思うけど。



「僕たちはどこまで行けるかな?」


「リングが壊されるか、毒の魔法が効かなくなるかではないですか?」


「リングが壊されても、飛び箱にのっている限りは手出しはされないから、毒の魔法が1番重要になるかもしれないか……」



 ダンジョン内とはとても思えない、のんびり穏やかな朝の時間を過ごした僕たち。でも、ダンジョンはそれほど甘くなかったです。この後すぐに、2人を驚かせてくれることになります。




 筒を通り抜けて40階層に降り、40階層の中心に向かう途中でボスの光を発見する。ただ、ボスを発見するまでの間がおかしい。



「アスカ、ボスは発見できたのだけど、ボス以外の魔獣をまったく見かけなかった」


「ダンジョンの奥に密集しているのでしょうか?」


「ボス戦を終えたら、くまなく階層内を見て回ろう」



 僕は念のため、ボスの死角から飛び箱で近付く。接近して判明したけど、驚いたことに普通のボスだ。見た目は大きなミノタウロスで、まさにミノタウロスのボスと言っても過言ではないだろう。



「この階層で、普通のボスが出てくるなんて、かえって不気味だ」


「はい、旦那様。それもミノタウロスのボスのような姿なので、さらに恐ろしさが増します」



 それでもいつもの手順で、ボスをリングで縛り上げる。しばらく様子を見て、リングは大丈夫と確信する。続いて毒の魔法を詠唱。今までのボスと同様にリングから逃れようとするけど、逃げることはできないようだ。しかしまた、僕たちを驚かされることが起こる。ボスが咆哮をあげたのだ。魔獣もボスも、声を発するものなど今までに見たことがなかったからだ。僕は悪い予感がしてサーチで辺りを警戒する。すると遠くからうっすらとだけど、大きな光が近付いてくるのが見えた。僕は慌てて指をさす。



「アスカ、あの方向からボスのようなものが近付いてくる。なんだろう?」



 まだ、肉眼でぼやけてはっきり見えないが、かなりの速度で近付いてくるのは間違いない。僕もアスカも飛び箱から身を乗り出さんばかりに注視していると、もう1体のミノタウロス型のボスが全力疾走で近付いてくる。これほど長い距離を高速で走り続けるボスを見たことがなかった。40階層はとんでもない場所だった。


 僕たちに幸いしたのは、もう1体のボスが到着する前に、縛り上げていたボスが光って消えてくれたこと。僕は大急ぎでリングを魔法で手元に回収して、駆け寄ってくるボスの様子を伺う。


 駆け寄ってきたボスは戦利品が落ちている辺りをぐるぐる歩き回って警戒している。ただ、走ることはしないので、僕はリングで縛り上げることにした。慎重にゆっくりとリングを位置につかせ一気にリングを縮める。縛り上げることは無事に成功した。ただ毒の魔法は使用を控えた。また仲間を呼ぶために咆哮をあげるのだろう。他にもボスがいるのか確認したい。僕はサーチで確認しているけど、縛り上げたボスの魔石以外は1つも見えなかった。



「アスカ、ボスだけでなく、魔獣も見えない。先に階層内を確認してもいいかな?」


「はい、旦那様が確認されたいことは、すべて確認してください。この階層は他とは違うようですから」



 僕もアスカも飛び箱からキョロキョロしながら40階層をくまなく探索する。だが隅々まで探しても、40階層にはボスが2体いるだけだった。筒の設置を終えたところでボスのところに戻ることにした。



「アスカ、ミノタウロスのボスを剣で討伐してみたい。お願いしていいかな?」


「はい、お任せください。私もどれほどのボスか興味がありますから」



 僕とアスカはボスの近くに降りて、すぐに討伐にかかった。アスカはすぐに、顔面への攻撃に取り掛かってくれた。ただダメージを与えられているのかすら分からない。僕は肩口の辺りを分解魔法で穴をあける。穴は問題なくあけられた。



「アスカ、様子はどう?」


「38階層のボスより硬いです。時間がかかると思います」


「悪いけど、そのまま続けてくれる。体力が続く限りでお願い」


「いいえ、旦那様。討伐するまで続けましょう。今日で無理なら、続きは明日にしましょう」


「了解。アスカの無理のない範囲で、このまま攻撃を続けよう」



 アスカには攻撃に集中してもらっていたけど、僕は時折サーチで辺りの確認もした。幸いにも何も見えることはない。



「アスカ、適当なところで切り上げてくれる?アスカの体力が心配だ」


「分かりました。ただ、もう少しだと思います。もう1点が崩れかけていますから」



 僕たちがそんな会話を交わしてからアスカが再び攻撃に戻る。しばらくアスカが攻撃を続けていると、やっとボスの頭部が光って消えてくれた。そしてアスカが止めの魔石への突きを放って、ボスの討伐がようやく終わる。さすがのアスカもぐったりしていた。



「アスカ、お疲れ様。無理をさせてごめん」


「これほど強いボスとは驚きました。このボスにはきっと、どんなクランが挑んでも、1つの傷も与えられず全滅してしまうでしょう」


「うん、リングのお陰で安全だと知っていても、冷や冷やしながらアスカの攻撃を見てたよ」


「旦那様はサーチで確認もされていたのですよね?いかがでしたか?」


「魔獣の1匹すら見かけなかった。この階層には2体のボスしかいなかったと思う」


「この階層で野営をする気にはなれません。恐ろしくて眠ることができません」



 お疲れのアスカには悪いけど、先に39階層まで戻って休憩することにした。アスカにこれほどのプレッシャーを与えるボスなど、考えられない。それでも休憩をとって体力が回復すると、気になるのは41階層だ。僕とアスカは興味には勝てず、見るだけとお互いに言いながら飛び箱で飛び出してしまう。40階層には魔獣1匹すら見えないのは変わらなかった。ただ41階層入り口近くにボスが2体いるのがサーチの魔法で確認できる。41階層への坂道を覗くように確認すると、ボスが2体いることが肉眼でも見えた。僕はサーチでさらに確認すると、ボスと思われる光が他に1体見えて、この階層には少なくともボスが3体はいることになる。



「アスカ、サーチで確認した限りだけど、この階層には少なくてもボスが3体はいるみたい」


「目で見える2匹のボスはミノタウロスのボスですから、他のボスもミノタウロスのボスの可能性が高いですか……」


「うん、何かあれば生きて帰れない。ここはもう恐ろしい場所にしか思えないよ。ねえアスカ、今回はもう39階層に戻らない?」


「はい、旦那様。私もこの階層には恐怖を感じます。まるで人が足を踏み入れるのを拒絶しているように思えてなりません」



 とりあえず、僕たちは安全地帯?に思える39階層まで逃げ戻るのでした。


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