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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
3章 夢を紡ぐ2人編
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110話 今度こそは!

 いよいよ38階層のボスと再戦するために、2人で飛び箱に乗り込む。飛び箱で移動しながら僕はアスカと話して認識を合わせる。まずは上空からリングで縛り上げて、リングが破壊されないかを確認。しばらく様子を観察してから、僕とアスカで一方的に攻撃にでる。白いボスがどれ程の硬さなのかも知りたいので、毒は使わずに剣で倒したい。アスカも討伐方法に了解してくれたところで、僕は上空からサーチしてボスの姿を探し始める。残念だがボスは見えない。階層中央へ飛び箱を移動してもう1度ボスをサーチすると、階層最奥にボスがいるのを見つける。



「アスカ、ボスは階層の奥の方にいるみたい。このまま進むよ」


「はい、旦那様」



 しばらく進むと、肉眼でもボスが見えてきた。僕は魔法の届く範囲ぎりぎりまで近寄り、リングを取り出してボスの頭上へ向かわせる。リングがボスの頭上に到着すると、続いてリングを大きく広げて、ゆっくりとリングの位置を下げていく。肘の下の辺りまで下がったところで、リングを縮めてボスを縛り上げる。ボスはもがいて抜け出そうとするけど、そう簡単に抜け出すことはできないだろう。僕はさらに、もう1つのリングも飛ばして、ボスの足も縛り上げてしまう。バランスを崩したボスは横に倒れてしまった。


 僕とアスカは上空からボスの様子を見守る。どちらのリングも、破壊される気配はなさそうだ。僕もアスカもそろそろ頃合いだと感じ、飛び箱を地上へ降ろし、いよいよ剣によるボスの討伐を始める。



「アスカ、白いボスの硬さを知りたいんだ。後で感想を聞かせて欲しい」


「はい、旦那様。では、私は頭頂部を攻撃します」


「了解。僕は肩口の辺りで魔法の実験をしているので。アスカの攻撃の邪魔になるようなら言って」



 アスカは小走りでボスへ近付き、すぐに剣を抜いた。僕はアスカの攻撃の様子を見ながら肩口に向かい歩いていく。そして僕は杖を握ったままで人差し指だけ立ててボスの肩口に触れる。僕が使った魔法は分解の魔法。前回のようなドバっと魔力を注ぎ込むのではなく、小さな穴を開けるための、魔力の消費を抑えた魔法。あらゆる魔法サポートのお陰か、小さな穴は簡単に開けることができた。これで僕の準備は完了。万が一ボスが暴れ出しても、この穴から糸の攻撃で魔石を簡単に破壊できるだろう。後はアスカの攻撃中にボスのリングが壊されないかどうかと、アスカの体調を気遣いながら攻撃を見守るだけ。


 白いボスはとても硬いようだ。アスカの本気の連続攻撃を受けても、リングから逃れることを優先しているように見受けられる。どれほどの化け物なんだ!それでもアスカもめげずに攻撃を続ける。そして、ようやく頭が砕けて消えた。



「アスカ、首から剣を突き刺して魔石を破壊して」


「はい、旦那様。お任せください」



 アスカは構えてから、手を長く突き出して、ボスの心臓部にある魔石を破壊した。ボスの体が光の粒となって消えていった。アスカはその場でへたり込むように、座り込んだ。さすがのアスカも肩で息をしている。


 魔力も体力も使っていない僕は、アスカの隣に行って並んで腰を下ろした。



「アスカ、38階層のボスは今のクランの戦い方では絶対に勝てないね」


「はい、白いボスは格が違いました。新しい戦い方を見つけ出さないと、普通の冒険者ではこのボスには勝てません」


「このことは僕たちが地上に戻ったら、父上やクランのリーダーたちにお伝えしよう」


「旦那様、ここから先はリングと毒の魔法で討伐を進めていきましょう。もう私の興味は、旦那様の魔法が何階層のボスまで通用するのかに変わりました」


「分かった。もう少し休憩してから筒を設置しよう。それから39階層のボスと戦って筒を設置して、今日は終わりにしよう。アスカも今日は疲れているだろうから」


「はい、こんなに全力で戦い続けたことはなかったと思います。こんな機会を与えてくれた旦那様に、心から感謝しています」


「僕もかたきが取れたような気分になっている。僕たちを苦しめたボスを、アスカの手で倒せてホッとした」




 僕はリュックからレモネードのビンとマグカップを取り出して、魔法で冷やしてからアスカに渡した。アスカもやり切った顔をしながらレモネードをおいしそうに飲んでいた。しばらく2人でおしゃべりしながら小休止。アスカが立ち上がって手を差し伸べてくれて、僕のことも立たせてくれる。



「旦那様、このボスを討伐するのを、私のこれからの目標にしていきたいと思います。きっと前衛も剣を振るだけでは足りないでしょうから」


「うん、僕も普通の魔法士が使用可能な魔法を使って、ここのボスに効果的な攻撃やアシストができるよう研究してみる。そのためにもたまには2人でここにきて、ボスと戦って効果のほどを試してみないといけないね」


「はい、旦那様。しばらくは、ギルドにはここに立ち入らないように進言しましょう。この階層から生きて帰れるのは旦那様だけでしょうから」



 僕とアスカはそんな会話をしながら戦利品を回収する。僕は飛び箱を出して2人で乗り込み筒を設置、39階層を目指すことにした。




 39階層に降りると、39階層のボスはすぐに見つかった。39階層のボスは32階層のボスの白いボスだった。



「この先は白いボスになっていくのかな?毒がきいてくれるとよいのだけど」



 僕はリングを飛ばしてボスを縛る。まずはリングが壊されないかを確認する。



「旦那様、リングは大丈夫のようです。毒の魔法をかけてみましょう」


「了解」



 僕は毒の魔法を詠唱。最初は変化がないけど、だんだんとボスの動きが鈍くなる。そして、ボスが横に倒れる。身動きをしなくなってしばらくすると、光の粒となって消えていった。



「白いボスでも時間は変わらない感じだ」


「はい、私もそう感じました」



 飛び箱を地上に降ろす。僕にはこだわりがないので、念のためアスカに先に降りてもらった。これでアスカの名が歴史に残るのだろう。戦利品を回収してから移動して筒を設置した。その後少し早いけど、筒の近くで野営することにした。アスカは特に5体のボスと剣を振って戦ったことになり、疲れているのは当たり前だ。


 テーブルとイスは出したけど、まずは汗を流そうとなり、浴槽とシートを広げる。2人でお風呂にはいったら、アスカは疲れがどっと出てきたようだ。アスカと軽食だけ食べて、今夜は早々に眠ってしまうことにした。明日は40階層、僕たちはどこまでたどり着けるかな?


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