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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
3章 夢を紡ぐ2人編
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109話 ボスとの連戦

 ダンジョンでの朝も、アスカの行動は変わらない。エコに挨拶をすることから始める。訓練は素振りをした後、気力を体内に巡らせての高速な素振り、最後には剣を光らせる魔法の訓練をしていた。そろそろアスカに新しい魔法を教えることにしよう。


 今朝の僕の訓練はアスカとは別メニューにしてもらった。スティレットでの攻撃に慣れておきたかったからだ。魔法の手での攻撃と大差はないつもりでいるけど、精度の点で少し不安がある。戦闘中にアスカに迷惑をかけるのは論外だからね。33階層のボスは赤いボスということもあって、リングと毒が有効かの確認をするつもりでいる。ただ、その後のボスは昆虫型のボスが続くので、リングで縛ることができない。毒の魔法の効果の確認だけになる。




 朝食を済ませ、野営の後片付けを済ませれば、いよいよ33階層に向けて出発。今日も2人で飛び箱に乗り込んだ。昨日設置しておいた筒を通り抜ければ、そこはもう33階層。すぐにサーチでボスを確認。今回はすぐに見つかった。


 サーチの結果は階層の中央辺りにボスがいた。念のため、ボスの背中の方まで回り込んだ。位置につくと僕はさっそくリングを出しボスの上半身を縛る。ボスは火を吹いているようだが、何せ背中側にいるので様子が分かりにくい。今回はリングをもう1つ使って、ボスの足も縛ってみた。立たせたままの状態で、毒の魔法を詠唱。しばらくするともがいていたボスがバランスを崩し地面に倒れた。さらに待っていると、光の粒となり消えていった。



「時間は変わらないような気がするけど、アスカはどう感じた?」


「私も同じ時間に感じました。白いボスにも同じように毒が効いてくれるといいのですけど」



 戦利品とリングを回収してから筒の設置に向かう。設置が終わったところで、次の階層へ移動を始めた。移動しならが、アスカとボス戦の認識を合わせる。



「アスカ、昆虫型のボスは毒の魔法を詠唱してから観察するだけになる。それでいいかな?」


「昆虫型のボスとは戦ってみたいです。旦那様は頭を凍らせてから触角を潰してください。その後に毒の魔法もお願いします。私は足を潰していきますから」


「クラン連合のときは、足を凍らせていたけど、今回はいらないの?」


「はい、今回は不要だと思います。旦那様は魔法の後は、顔面をスティレットの連続攻撃でお願いします」


「了解」



 昆虫型のボスと戦うため、地上に降りることになる。僕が顔面を凍らせる魔法で戦闘を開始。毒の魔法も詠唱したことろでアスカを確認する。アスカはもう1本目の足を砕き落として、2本目の足に取り掛かっている。これには僕が驚いた。アスカの気力によるサポートは、とんでもない威力を生み出しているようだ。僕も負けじとスティレットの連続攻撃。魔力が潤沢になったことと、すでに存在している剣を飛ばすだけの魔法なので、魔法の消費は微々たるものだった。これならいくらでも続けていられそうだ。


 アスカが左側の足をすべて砕き落としたころ、毒の効果が発揮されたのか、ボスが光の粒となって消え、討伐が完了する。戦利品を拾って僕のそばへ戻ってきたアスカ。驚いたことに、汗すらかいていない。



「アスカの身体能力強化は、凄まじい破壊力だね」


「気力の流し方と、体の使い方にだんだんと慣れてきました。これからどんどん効率をよくしていきます」



 アスカの成長もあって、昆虫型のボスは似たような討伐を繰り返し、筒の設置と合わせてすべて終了となった。昼食前にボス戦を4戦もこなして、アスカはさぞ疲れているだろう。37階層に設置した筒の近くに移動してから、昼食の準備を始めた。2人でテーブルとイスを用意して料理を温める。アスカのスタミナ回復も考えて、ちょっと贅沢なボリュームのあるお肉を煮込んだシチューにした。このシチューは王宮でご馳走になった料理をまねしたものだ。アスカに初披露のシチューは好評で、お腹も空いていたからだろうか、アスカはお替りもしていた。僕はデザートを出したり、お茶をいれたりして、長い時間をかけて昼食をいただいた。



「旦那様、そんなに気をつかっていただかなくても、それほど疲れてはいませんよ」


「でも、ボス戦を4戦だよ、疲れていないことはないでしょ」


「いいえ、気力の使い方に慣れてきて、余分な気力の消費が抑えられるようになりました。ですので思ったほど疲れてはいないのです」


「次はいよいよ38階層のボスだよ。準備しすぎるってことはない」


「でも、旦那様も38階層のボス戦を前に、ぜんぜん焦りがありません。リングに絶対の自信があるのではないですか?」


「ボスと戦っても、アスカの剣はびくともしていなかったからね。だからリングもきっと大丈夫」


「それなら、何の問題もありません。私も旦那様に怪我を負わせたボスを絶対に許さないので、必ず確実に討伐します」



 アスカに疲れが残っていないようで安心した。それにアスカはとても落ち着いている。1度剣を合わせている敵なので、今のアスカには勝てる自信があるのかもしれない。僕も負ける気はしていない。でも、不安がないかと言えば嘘になる。アスカが死を覚悟して耐えている姿を、僕はいまだに鮮明に覚えているからだ。僕もアスカもこの手でボスを討伐して、あの苦戦を過去の話しにしてしまいたい。そしてアスカにも冒険者レベル17になって欲しい。やはりアスカこそが王国最強であるべきだからだ。もうすぐそれは現実になるだろうけど。


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