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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
3章 夢を紡ぐ2人編
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105話 王宮での飲み会?

 僕とアスカにバストンさんがワインを注いでくれる。バストンさんが会釈して離れていったところで、僕もアスカもグラスを手に持つ。2人は小さな声で乾杯と言って、王宮のワインを飲んでみた。バストンさんが自慢するだけあって、とてもおいしい。そんな僕とアスカの姿を見て、バストンさんはにっこり微笑んでくれた。


 国王陛下は王妃様と僕とアスカが戻ってきたので乾杯だ!と言って、乾杯になった。もちろんガツンなしです。



「儂はグランとアスカには、いくつ借りがあるんだ?盗賊団の首領も捕まえたと聞いているし、いくつもダンジョンを踏破してきたし、グランにいたっては世界最強になってしまった」


「国王陛下、冒険者レベルの測定はどういう基準なのですか?私は父上にもアスカにも戦って勝てるとはとても思えません」


「全世界で共通の魔道具だ。間違いはないのだろう。それだけ38階層のボスは強いということだろうな」



 すると、父上が話しにはいる。



「国王陛下、38階層のボスの次の討伐は、数年かかるかもしれません。それほどの強さです」


「王国として、何か協力してやれることはあるか?」



 僕はせっかくなのでお願いしてみることにした。



「国王陛下。私は今回の謁見でお願いしたいことがあったのです。魁にお許しいただいているミスリルの使用を、上級の冒険者レベルの者へもお許しいただきたいのです」


「アスカ、新しいミスリルの剣は、それほどの切れ味であったか?」


「はい、国王陛下。純度の高いものが手に入ったこともあって、素晴らしい剣に仕上がりました。あの剣が冒険者に行き渡れば、確かに戦力の底上げになるのは間違いありません」


「うむ、それならミスリルの使用は許可してやる。ただ、自分たちで手に入れてこい。年々近衛兵団でも入手に苦労をしているそうだ」


「ありがとうございます。ミスリルは皆で努力して集めます」




 王妃様もお酒に口をつけられて落ち着かれたところで、おつまみのオードブルが運ばれてきた。遠めに見ても美しく素晴らしい盛り付けで、食事を済ませているのに、楽しみでしかたない。バストンさんは早速、オードブルをお皿に取り分け始めた。国王陛下が意地悪そうな顔で僕を見る。嫌な予感。



「グラン、キツカを伯爵にする案、シナリオを聞かせてみよ。いいシナリオなら、そのワインを屋敷に届けてやろう」



 僕はガッツポーズで、ワインをいただく気満々になった。皆が僕に注目する。



「ビーズ伯爵様が国王陛下の前でお倒れになったのに驚きました。しかし魔法士はどうしても魔力回復が衰え、それが体の衰えにも直結します。以前から親交のあった王妃様が伯爵様を心配されて、アグリが静養していた国王陛下所有の静養所へ行ってはいかがかと勧めました。伯爵様は迷われたようですが体の衰えには抗えず、静養所に行くことを決心されました。そして伯爵様は余生は家族とひっそり暮らしたいと、伯爵家の家督を譲る決心をされます。なじみの薄い貴族に家督を譲るくらいなら、長年一緒に魔法の研究を続けてくれて、かつ、お世話になった王妃様へのせめてもの恩返しにと、王妃様の兄上のキツカ様をご指名になられた。そして、国王陛下は私の屋敷にワインを届けてくれるのでした。めでたしめでたし……」



 皆が国王陛下を見て判定を待つ。国王陛下は考え込む。



「うーん、無理はないな。フィーネどうだ?」


「私が心優しい王妃様になっているのが気になりますが、確かに無理はありません。関係者が少ないのもいいですし、私の血縁者を伯爵に推薦するあたりは真実味があります」


「よし、甘い採点ではあるが100点満点とし、10年間は毎年100本のワインを送ってやろう」


「ありがとうございます。国王陛下、王妃様」



 僕とアスカは手を取り合って大喜びした。王妃様が僕とアスカに確認した。



「2人はワインで喜んでいるけど、国王陛下からのご褒美はもらったの?」


「はい、王妃様から賜ったローブと上位冒険者のミスリルの使用許可をただきました。もう充分すぎるご褒美です」


「それだけですか?そんなものは褒美になっていません。2人は何か欲しいものはありませんか?」


「今現在、私もアスカもとても幸せに生活しております。もう十分です。そうだろ、アスカ」


「はい、私もとても幸せです」


「分かりました。褒美については私の方でも考えてみます。楽しみに待っていなさい」




 その後はすでに大酔っ払いの男性陣の大騒ぎに、嫌な顔を隠さない王妃様。そして、おいしいおつまみとお酒にニコニコの僕とアスカ。なかなかカオスな状況でした(笑)それでも国王陛下が今夜は会議があるとのことで、そろそろお開きとなった。かなり酔っていたけど大丈夫なのかな?


 王宮を出て伯爵様のお屋敷でお借りした馬と馬車を返し、ようやく貴族街の門を通り過ぎた。セルスさんとランゼンさんは大きなため息を吐いて、無事に庶民街に戻ってこれたことに安堵していた。僕からみれば、国王陛下の前であれだけ酔っぱらえるのなら、怖いものはないと思うのだけど……(笑)庶民街を歩いていると、貴族街の門から一番近い僕たちの屋敷に到着。皆さんと挨拶して、ここでお別れです。


 屋敷の門を開き庭へ入る。空を見上げるときれいな月が出ていた。退院してからバタバタしていたけど、皆さんへの挨拶も終えて、明日からは少しのんびりできるだろう。ただ、これからの生活のことも考えなければならないから、その方向が定まるまでは、気持ちは落ち着かないかも。早く身も心ものんびりしたいものです。


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