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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
3章 夢を紡ぐ2人編
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100話 アスカも魔法士?

 アスカはベッドの横にイスを置いて、とても穏やかな表情をしながら編み物をしている。きっと赤ちゃんがこの服を着たらって想像しながら編み物をしているのだろう。それでも僕は、アスカのそんな穏やかな時間に割り込むように、アスカに話しかけてしまう。今の僕は少し興奮し過ぎなのかもね(笑)



「ねえ、アスカ。アスカが魔法が使えたり、エコと話せたりしたら嬉しい?」



 僕の突拍子もない発言に、アスカは驚いた様子。



「どうされたのですか、旦那様?」


「突然ごめんね。エコと話していたら、アスカも魔法が使えたり、エコと話せる可能性があるって教えてもらったんだ」


「私が魔法?いくら何でもそれは難しいと思います……」


「アスカ、まずはやってみない?」


「それはかまいませんが、私は何をすればいいのかすら分かりません」



 僕はリュックからダイヤモンドの杖を出して、アスカの細剣と同じ形に変更して、できあがった剣をアスカに渡す。アスカは受け取るとダイヤモンドの細剣をまじまじと眺めていた。



「私の細剣とうり二つですね」


「アスカ、まっすぐ立ってくれる」



 アスカは編み物の道具をかごに戻すと、僕の言うとおりに立ってくれる。僕もベッドから立ち上がり、アスカの背後からアスカを抱きしめた。



「旦那様、どうされたのですか?」


「アスカ、まずは刀身を光らせてみようか。きっと最初は何をすればいいか分からないかもしれない。でも刀身は光るとだけは信じ続けていて。では、剣を構えてみようか」



 アスカが構えてくれたので、アスカの体内に流れる魔力を感じように、アスカにピタリとくっついてみる。魔力は感じない。ただ、魔力と違う何かは感じる。魔法士と違って流れている感じではなく、全身からにじみ出るようにゆっくりと湧き上がる感じ。僕はもう一度アスカを後ろからしっかり抱きしめなおす。なるべく体を密着させて、アスカの湧き上がる何かをもっと感じてみることにした。そして僕はようやく理解した。この湧き上がったものを魔力のように集めて体内に流せばいいんだな。



「アスカ、刀身が光るよ。信じて。僕のことも信じて。今のアスカの願いを裏切るものは何もない。心は信じて、体は感じて。いくよ」



 僕はアスカの全身から湧き上がるものを、全身から1か所に集めるように誘導する。アスカの場合は右手がいいだろう。そして、右手から剣にそれを流す。しかし、まだ光らない。初めての魔法だからね。でも、大丈夫。僕は自分の魔力をアスカに少しだけ流す。アスカの体が一瞬、小さく震えるのを感じる。僕の魔力とアスカの何かを1つにするように右手に流し、そして剣の刀身へ流す。剣は光り出した。



「旦那様、光りました。気を一点に集めて剣に流すのですね」


「魔法士は魔石から魔力が出てくるけど、アスカの場合は全身からくまなく出てくる感じだった。だから右手に集めてみたんだよ。アスカの中では気と言うんだね、エコは気力と言っていた」


「はい、旦那様。剣士はこの気を込めて攻撃をしたり、お父様のように早く走ったりします」


「なるほど。身体の強化に使っているんだ。それらな僕にもできそうだ」


「旦那様も剣を振ってみてください」


「今の僕には無理だよ、右腕が動かないのだから。それよりも、アスカが試してごらん。きっと今までの自分を超える動きができるはず」



 僕はまた、アスカに後ろから抱きついて、なるべく密着する。アスカの耳元でささやく。



「アスカは気の流れを意識できるようになったんだ。それは全身から湧き出た気を右手に集める感覚。でも、剣士として体の強化をするには、全身に薄く均等に気で体を包み込む感じにするんだ。今のアスカになら理解できるはずだよ」



 アスカが気の流れを意識的に変えたのが伝わってくる。



「アスカ、いい感じ。気を薄い膜にして、その膜で全身を包んでしまえばいいよ。やってみて」



 アスカの体の気が全身、均等に張り巡らされたのを感じる。僕はゆっくりアスカから離れる。アスカは身構えて剣を振る。もうそれは神技と思えるほどだった。何せ、体を動かしているアスカ自身が驚いているのだから。



「アスカは戦闘の中で気の消費を気にして戦っているんだよね?気が枯渇すると倒れたり、最悪は死に至ったりするかもしれない」


「はい、旦那様。でも、ご心配には及ばないと思います。剣士は気の枯渇は体力の枯渇と同じものです。疲れて体が動かなくなります。魔法士の人とはそこは違うようです」


「なるほど。そうなると、剣士の方が魔法士に向いている気もするけど」


「剣士の誰もが気を大量に放出できるわけではありません。なので、そこは魔法士の人と同じです。ただ、剣士は体を鍛えることで、気を出す量は増やせますけど」


「それで、アスカも父上も、日々剣を振り続けていたんだね。では、最終目的のエコとの会話をしてみようか」



 僕は久しぶりにエコをリュックから取り出す。



『エコ、今からアスカにエコの使い方を教えてみる。アスカの声が聞こえたら教えて』


『了解しました』



「アスカ、エコの上に手を置いてくれる」



 アスカが僕に従ってエコの上に手を置く。少し気を持っていかれて、ぞわっとなったようだ。



「アスカ、頭の中でエコに話しかけてみて。エコ、ごきげんようでいいよ」



『エコ、どうかな?』


『何も感じません』



 僕はアスカの手の上に僕の手を乗せる。アスカの手に気が集まっているのが分かる。



「アスカ、気はちゃんと右手に集められている。恐れず右手から少し外へ流してみよう。それが魔法を使うってことなんだ」



 アスカの緊張が伝わってくるようだ。でも、えい!って感じでドバっと気がエコへ流された。



『エコ、ごきげんよう。私の声が聞こえますか?』


『アスカ、やっと話せました。グランを通して見たり聞いたり感じたりはしていましたが、やはり直接話せるのはいいものです』


『私もエコから、いろいろ教えてもらえたりできるのですか?』


『グランからいろいろ聞かされているですか?今さら隠してもしかたがありません。教えられることは教えましょう』


『ありがとう、エコ。これから末永くよろしくお願いします』


『エコ、アスカにもメッセージや連絡がきたことを伝えられそう?』


『それは大丈夫です。それよりも、アスカが触れずに気力を送れるようにしてあげてはいかがです?慣れの問題でしょうけど。それと、アスカほどの気力を持っていれば、ブレスレット?は不要です。直接問いかけが可能です。グランにも今後は直接問いかけをします』


『分かった。ありがとう、エコ。これからアスカの手を離してみるね』



 僕はアスカの手を握って、エコから離す。アスカとエコの接続が切れたのを感じる。



「アスカ、触ってなくても気は流せるよ。エコを見ながら人差し指の先からエコに気を流すイメージで、エコに声をかけてみて」



『エコ、聞こえますか?』


『アスカ、聞こえます』


『アスカ、僕の声も聞こえるよね。次は目を閉じて、それでも、エコに気を送ってあげて』


『はい、大丈夫です。エコと繋がっていることが感じられます』


『では、アスカ。最後にエコを僕のリュックにしまうよ。それでも、エコと3人で話せるか確認しよう』



 僕はエコをリュックにしまう。それでも、会話は途切れることなく続いていた。



『旦那様、エコ、これからはいつでもお話しできそうです。ありがとうございました』


『アスカ、分からないことがあれば、何でも聞いてください。少なくとも、グランよりは物知りですから(笑)』




 こうして、アスカも魔法もエコも使えるようになりました。次にアスカに教える魔法は、冷やす魔法とシャワーの魔法が最優先かな(笑)


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