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23話 事件の証言とご褒美

 私は国王陛下が苦慮していることを感じた。しばらく考えてみて、国王陛下に一礼した後、発言することにした。



「国王陛下、事件当事者の私に事件当日の真実をお話しすることをお許しくださいませんか?少々事実と異なる部分があるようですので……」



 皆は驚きながら私に注目する。国王陛下は、「真相を語ることを許す」と応じられた。



「事実はもっとシンプルで、侯爵家を巻き込んでなどは、おふざけもほどがあるフィクションです!」



 そう、発言した後、大きく息を吸い込んで、一気にまくし立てる。



「事件の真相は、学生寮近くの茂みに賊が潜んでいるのを私が発見し、不用意にも大声でグリム様へお伝えしてしまったのです。すると賊は私に狙いをつけて魔法を発動しました。それは私の右腕に当たりこのような姿になりました。ただ第2射を発動する前にグリム様が賊を切り伏せていただいたので、私もフィーネ様も事なきを得ました。そして、グリム様が赤い信号弾を上げ、事件は終了です。賊の目的は魔法学校の貴重な文献だったのでしょう。長年司書を務めてきた私には、その貴重さは他国も渇望するものだと知っておりましたので。わざわざ休校日を選んだのもそのためでしょう。リズ様については、学校内でも奇行は誰もが知るほどでした。それを国王陛下の御前で行ってしまわれたら、ラズル侯爵様も責任を取らざるを得なくなったのでしょう。グリム様、フィーネ様、私の証言に記憶違いがあれば訂正してください……」



 2人はうつむいてしばらく考え込んだが、2人とも「証言に記憶違いはございません」と答えた。



「事件当事者の3名の証言が一致しているのであれば、真相は間違いないのだろう。今回の証言で世間に公表する。ラズル侯爵についても証言の内容で公表する。ラズル侯爵家は侯爵順位を10位に落とすが、長兄を次期ラズル侯爵とし存続させる。事件当事者への恩賞は皇太子に任せるゆえ、この後に受け取るように。予からは以上だ、皆大儀であった」



 そう言い残し、国王陛下は退室されていった。




 皇太子様の、「ここからの話しは内密だ、よいな」に、全員が「かしこまりました」と返答。



「アグリ、グリム、フィーネ、本当にこれで良かったのだな。特にアグリ、お主は第1功労勲章も授かれるほどの功績を棒に振ったのだ。授与すれば当代貴族待遇すら得られたものを……」


「皇太子様、滅相もございません。私が貴族など王国の汚点になります!ご勘弁くださいませ」


「王国としてはそちの功績に報いないわけにはいかない。何か希望を述べよ」



 私はちらっとお父様を見ると、お父様は首を縦に振られた。



「皇太子様、お言葉に甘えてお願いをさせてください。まず私はこのような体になってしまいましたので、世の中のお役に立つのが難しくなりました。これからは1人でひっそりと生きていきたいと思いますが家を持っておりません。田舎に余生を送る家をご提供いただけると幸いです。それと、私はテリト領ホメト村の孤児院出身です。魔法学校に通えたのは領主様と村人の長年の支援のおかげでした。私はこの姿となりご恩をお返しすることができなくなりました。国王陛下から領主様と村に感謝状とご褒美をお与えください。私からは以上です」


「アグリ、そのようなものでは今回の働きに報いているとはとても思えんが、本当にそれで良いのか?」


「はい、もう十分過ぎるくらいのご褒美だと感謝しております」


「分かった。まず領主と村への感謝状と褒美は国王陛下と儂と双方から送っておく。それと家のことだが、以前、母上が静養に使用した静養所が国王直轄領内にある。そこで良ければ修繕と生活用具一式を揃えてアグリに授ける。それまでは今までどおり、グリス侯爵家で厄介になってくれ。それで良いか?」


「はい、ありがたく頂戴したいと思います」


「グリムは何を所望する?お主も賊を切りフィーネを守ったのだ、勲章でも授与することは可能だが……」


「滅相もございません、私はアグリ様をお守りすることができませんでした。勲章などとんでもございません。もし希望を聞いていただけるのなら、このままアグリ様の護衛騎士を続けさせてください」



 その言葉を聞いて私は驚いた。そして反論する。



「お待ちください。私は一般市民で護衛騎士をつけていただけるような身分も価値もございません。おまけに田舎で余生を過ごす身です。護衛騎士は必要ありません!」



 皇太子様は困ったような顔をされたが、苦々しい顔でご指示された。



「双方分かった。グリムはアグリの護衛騎士を続けよ。ただし、アグリが静養所に着き、つつがなく生活ができると判断したところで、アグリがグリムの護衛騎士の任をとけ。その後のグリムの任務については、王都に戻ってから考えることとしよう。それとこれだけは受け取れ、これは将来の妻を助けてもらった、儂からの個人的な感謝の品だ」



 皇太子様は腰に着けていた短剣を取り、グリムさんに向けて突き出した。グリムさんも恭しく受け取った。



「はい、謹んでお受けします」


「フィーネについては、特になくて良いな?」


「はい、私は何もしておりませんので」


「それとグリス侯爵、そちはフィーネが入城の際に侯爵順位が上がるので、それで我慢しておいてくれ。それとアグリの世話を引き続き頼む」


「かしこまりました」



 これで難しいお話しはお終いです。まだ皇太子様の御前ではありますが、フィーネさんの将来の旦那様すものね、緊張より親近感です(笑)


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