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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
3章 夢を紡ぐ2人編
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87話 助けたい

 夜になり、キツカ様が病室に見舞いに訪れた。キツカ様はいくつかの魔道具を持ち込んでくれた。



「アスカさん、グリムの言うことでは詳しいことが分からなかったんだ。説明してくれるかい?」


「キツカ様、私も詳しくは分からいのですが、ことによると魔石を体内に取り込んだのだと思います」


「アスカさん、もしかしてサンストーンか?」


「はい、おそらくは……」


「グランは意識を戻せば、何かしらの対応ができるのかな?」


「はい、旦那様はダイアモンドで杖を作ると言われて、多くのダイヤモンドを集められていました」


「分かった。体内の魔力を減らしてみる。まずは魔道具で体内の魔力を吸い出させてみよう」


「お願いいたします」



 キツカ様とアスカはグランの様子を確認する。



「侯爵家の杖とダイヤモンドかな?魔力の調整をさせていたようだ。応急処置としては完璧だ」



 キツカ様はグランの足首に何かのベルトを巻きつける。そして足の横に黒い箱を置いた。箱のボタンを押し込むと、ギューンと音がした。



「アスカさん、グランの様子を見ていてくれるかい。この魔道具で魔力を吸収しているところだ」


「はい、分かりました」



 キツカ様は病室の外へ向かい俺を呼ぶ。2人で病室を出る。



「キツカ様、グランのために来ていただき、感謝しております」


「グリムは知らなかったかもしれんが、俺とグランは研究の情報交換をしていて、たまに顔も合わせていた。それでグランの状況だが、今のままでは危険だな。放出する魔力量が多すぎる。意識を取り戻すには、侯爵家の杖レベルの魔道具が必要だろう。兄上にも問い合わせたのだが、侯爵家にはもうそれらしい魔道具はないそうだ」


「キツカ様、グランを助ける方法はありませんか?」


「もう、フィーネを頼るしかないかもしれん。俺からも連絡をとってみるが、もう時間はあまり残っていないと思う」



 2人で病室に戻る。アスカがキツカ様を手招きし、キツカ様がグランの様子を見る。



「アスカさん、グランに変化があったかい?」


「はい、何やら動こうとされているようです」


「体を動かそうとしているのなら、魔力の軽減がされて体の負担が少なくなったのだろう。いい傾向だ」



 すると、グランがウーッと小さくうなった後、かすかな声でしゃべった。



「アスカ、生きてるかい?」



 アスカはグランの右手を掴み。問いに答える。



「旦那様、私は無事です」


「……」


「旦那様、旦那様!」



 その後はまた、眠りについてしまった。




 病院のスタッフが俺に病室に人をいれていいか確認に来た。どうもリサが来てくれたようだ。俺は病室に通してもらうようにお願いした。


 リサが病室に入ってくる。ダンジョンへ行った時の服装のままで、直接ここにきたのだろう。リサはグランの様子を見たり、首のあたりを手で触ってみたりしていた。そして自分の持っていたダイヤモンドもアスカに渡した。



「アスカ、グランの肌に直接触れるようにつけてあげなさい」


「はい」


「キツカ様、お話しをさせてください」


「リサさん、でしたね。お久しぶりです。俺も詳しい話しを聞きたかったのです」


「はい、お話しします。グランはサンストーンを飲み込み、自分の魔石と融合させたようです。血を吐き痙攣しながらも、杖に縋りつきながら何とか意識を保っていました。そしてボスに対して、私も知らない魔法を詠唱して、ボスを討伐しました。その後は意識を失い、それでも魔力だけはあふれ出すようでした。それで杖と石を体につけて地上に向かわせたのです。貴族街の病院なら何かしらの治療が可能だと思ったのですが、どうも治療方法はないようですね」


「リサさん、詳しく聞かせてくれてありがとう。俺も魔道具を持ち込んで魔力を吸い出すことをしているのだが、いかんせん魔力の量が多すぎる」


「キツカ様、もうフィーネ様に頼る以外はありませんか?」


「俺もそのように考えていた」


「グリム、伯爵様にお願いして、フィーネ様と大至急面会できるよう手配して。キツカ様も同席していただけますか?」


「もちろん」


「アスカ、しばらく1人でグランを見ていてくれる?これから皆でグランを助けに行ってくるから」


「はい、お任せください。旦那様をどうかお助けください」



 アスカは深々頭を下げていた。




 3人は伯爵家の屋敷に向かう。兄上はすぐに俺たちに会ってくれた。フィーネ様への面会の件を引き受けてくれて、リサには風呂に入って着替えるよう指示する。


 リサが風呂に入り、王宮へ出入りできる支度を侍女に整えてもらう。リサが皆のところへ戻る頃には、皆も着替えを済ませていた。皆がそろったところで王宮へ向かうことになった。


 王城の門で受付を済ませ王宮へ向かう。王宮の玄関にはバストンが待っていた。4人はすぐにフィーネ様のいるお部屋へ案内された。部屋には国王陛下とフィーネ様、護衛の兵のみがいた。皆は臣下の礼をとりだしたが、リサは立ったまま叫ぶように話し始めてしまう。



「フィーネさん、無礼は許して。もう時間がないの。グランが死にそうなの。これじゃアグリさんに顔向けできない!」



 辺りが騒然となるが、フィーネ様が制止する。



「リサさん、詳しく教えてください」



 こうしてフィーネ様との面会が始まった。


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