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名もなき少女から始まった、魔法士の系譜  作者: みや本店
3章 夢を紡ぐ2人編
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83話 続くボス戦

 第1目標の33階層のボスを倒したことで3人のリーダーが話し合い、フロア内の探索は行わずどんどん下層へ降りていくことを選択した。歯が立たないボスのいる階層からは逃げ戻り、その後にボスを倒せた階層の探索を行うこととなった。


 休暇明けにも関わらず、皆の表情はピリッとしていた。それもそのはず、世界で誰も立ち入ったことがない階層。そこにこれから向かうからだ。出発を前に父上が話し始める。



「これから34階層に進む。人類で俺たちが初めて立ち入る。そして34階層のボスも倒す。俺たちがやることすべてが人類初になり歴史に残る。歴史書にたっぷりと書いてもらうよう、ガンガン進んでいくぞ」


「おう!」



 僕とアスカが最前列に行く。皆の準備も整う。



「出発!」


「おう!」



 ついにパーティーは34階層へ進み始めた。




 34階層でもやることはコの字形の進行。ボスを見つけては討伐だ。34階層のボスは昆虫のようだった。口から糸のようなものを吐き出す。これは僕の魔法で口を凍らせて塞いだ。でも、足を何本か切り落としても、倒れることもなく、討伐には長い時間がかかった。


 翌日の35階層は34階層のボスの赤い版だった。口を凍らせるのは前日と同じだが、今日は試しに顔中凍らせてみた。たまたま触角も凍ったおかげで、ボスの動きがおかしくなる。僕は糸の攻撃で触角を撃ち落とす。ボスがよろよろし始めて、前衛の全力攻撃となった。35階層も無事に討伐を完了した。


 無事にボスを討伐したとはいえ、初めてのボスと2日連続で対戦し、皆も少し疲れた様子だった。リーダーたちの判断で翌日は休養日になる。どうも今後はこのペースで進むようだ。




 1日休養して皆はすっきりした顔をしていた。気力も充実しており、やる気がみなぎっている。36階層にもなると、普通の魔獣も誰も見たことがないものばかりのようだ。それでもこれだけのメンバーがそろっている。後れをとることはない。ボスらしき光をみつけ、魔法の射程まで近づく。また昆虫型で巨大なクワガタみたいだ。どこを攻撃するか迷ったので、前回同様の触角を凍らせてみる。動きがぎこちなくなる。さらに糸の攻撃をするが、これはダメージを与えられなかった。魔法で有効なのは凍らせることのようだが、それでも大した支援にならない。


 仕方がないので、僕は右足の関節を凍らせる。ヒナノさんには左足の関節に火の玉をぶつけてもらった。凍らせた関節はしばらく動けなくなるようで、少しは助けになるようだ。しかし、火の玉は効果がないようだ。僕は左足の関節を凍らせていく。



「ガンズさん、思いっきり関節を叩き割ってください」


「了解!」



 ガンズさんの大剣は、魔獣の足を叩き割った。



 僕は次の足を凍らせる。



「ガンズさん、次をお願いします」


「了解!」



 僕は最後の足を凍らせる。ガンズさんはすぐに叩き割ってくれた。これで左側の足がなくなり、左の半身が地面に落ちてきた。



「ガンズさん、右側の足もお願いします。父上、左の触角を切り落としてください。アスカは左の目を突いてみて」


「了解!」



 皆が僕の指示で動いてくれる。父上は触角の切り落としに成功したが、アスカの目への突きは効果がなかった。ガンズさんは右足を叩き割ってくれた。


 僕は次の関節を凍らせ、ガンズさんがそれも叩き割ってくれた。


 魔獣が前のめりで倒れる。父上が右側の触角も切り落とす。魔獣が動かなくなったが、まだ光って消えてくれない。父上が刃が通りそうな関節部分を探し、剣を突きさす。僕はサーチで確認すると、父上の攻撃している部分で間違いないようだ。



「父上、その先に魔石があります。攻撃を続けてください」


「了解」



 僕も魔獣に近づいた。父上の攻撃で小さいながらも隙間が見えている。僕はその隙間から糸を出して、魔石を突き崩す。ようやく光の粒となり消えてくれた。前衛の人たちはたちはもうぐったりだった。


 僕は後衛の人全員に水差しを渡し、取り急ぎ皆に1杯ずつ配ってもらった。


 アスカが歩いて僕のところへ戻ってきた。ポーションで回復したとはいえ、アスカの服はボロボロに千切れ血もついていた。僕はそんなアスカの姿をみて、涙が出て止まらなくなった。



「ごめん、アスカ。守ってあげられなくて……」



 アスカは何も言わずに僕の頭を抱いて撫でてくれた。そんな僕たちの姿を見て男性たちは。



「グラン、お前はよくやっている」



 女性たちは。



「私も結婚したい」



 と言って通り過ぎていった。



「旦那様、皆がお腹を空かせて待っていますよ。お昼ご飯の支度を始めましょう」



 僕は涙を拭いて、皆の集まるところへアスカと歩き始めた。




 翌日は37階層。ボス戦は予想通り赤いクワガタ。対策としては右側は父上とアスカ。中央がセルスさんとマルスさん。今日の父上は大剣を持っていた。


 戦闘が始まると僕は触角を2つとも凍らせる。その間にガンズさんと父上は関節を攻撃するが破壊することはできていなかた。


 僕は左足の関節を凍らせ、ガンズさんが叩き切ることでようやく関節が壊せた。僕は左、右と関節を凍らせていく。そして、すべての足を破壊した。ただ、僕は短時間で魔力を大量消費して立っていることもできないほど疲弊してしまった。


 後衛の皆が駆け寄ってきて、僕を横に寝かせる。チャミさんが魔力回復の魔法をかけてくれ、リサさんがダイヤモンドを僕の胸元にあててくれた。しばらくすると頭がふらふらする症状が治まり、ようやく座ることができるまで回復した。ボスはもう討伐されていた。リサさんに思いっきり怒られた。



「あんなに魔法を連発して、命取りになるでしょ。いくらアスカを守りたいからって、自分が死んだら意味ないの!」


「ごめんなさい。どうしても昨日のようなアスカの姿は、もう見たくなくて……」



 そんな僕を見て、ヒナノさんとチャミさんが言った。



「私も結婚したい」



 明日の休養日を使って、しっかり回復しておかないと!


昨夜「聖女として召喚された私が、いつのまにか森の魔女と恐れられている!」の3話を登録しました。よろしければ「名もなき少女から始まった、魔法士の系譜」と合わせてお読みください。

随分と冬らしい気温になってきました。皆さまもくれぐれもご自愛ください。

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