81話 33階層のボス。あっさり討伐完了
いよいよ33階層のボスとの対戦。皆の気合が入りまくりだ!リサさんの顔色も良くなっている。でも念のため、父上に話しておくことにした。
「父上、少しお話しいいですか?」
「ああ、どうした?」
「昨日、リサさんが魔力不足で体調を崩されました」
「今日の討伐に影響がありそうか?」
「今朝はいつも通りでした。問題ないと思います。ただ、今日ボスを討伐したら、明日は休養日にしてもらえませんか?」
「そうだな、そろそろ休みを取るにはいいタイミングだ。明日は休養日にする。リサにもそう伝えて、今日を乗り切ってもらってくれ」
「はい、父上。リサさんに伝えてきます」
僕は後衛チームのところへ戻り、皆に明日は休養日だと伝えた。皆が大喜びで、ますますやる気になっていた。
「皆さんに確認なんですけど、32階層のボス戦は、皆さんは以前にも経験があったのですよね?」
すると、リサさんが代表して答えてくれた。
「ええ、後衛の皆も、もちろんアスカも経験済みよ。何か聞きたいの?」
「はい、昨日の戦闘でボスは火を吹いていませんでしたよね」
「言われてみれば確かにそうね。火を吹かれるのが厄介なボスなのに……」
皆が確かにという顔をしていた。
「今回は、戦闘開始と共に顔を3つとも凍らせてしまおうと思ってます。そして魔石のある心臓の辺りも凍らせるので、アスカはその凍っている辺りの攻撃もしてみてくれると嬉しい」
「分かりました、旦那様」
「リサおばちゃんの体調を気にしての作戦?」
リサさんがおちゃめな顔をして聞いてくる。もちろんそうなのだが、そのまま口にすることはできない。
「いえいえ、火に弱いボスがいたのですから、寒さに弱いボスがいてもおかしくないと思ったので」
「まあいいわ。今日はグランの作戦でいきましょう」
「了解です!」
作戦も決まったことで、僕とアスカは先頭に向かう。皆の準備が整って、いよいよ出発だ。父上が前にでる。
「いよいよボスの討伐だ。まだ、誰も倒したことがないボスを俺たちが倒す。歴史に名を残しに行くぞ!」
「おう!」
こうして今日もコの字形進行が始まった。
普通の魔獣もかなり強い。アスカと朝の訓練をしていなかったら、目がついていけなかっただろう。リサさんには目くらましの魔法だけお願いしている。目くらましの魔法なら僕でもと言ったのだけど、僕の魔力はボス戦に温存しておけだそうだ。
魔獣と闘いながらもいつものように進めている。皆も緊張しつつも落ち着いている。そして、そろそろ向かい側の壁という頃、僕は強く光る魔獣を見つける。いつものように指を指す。
「父上、アスカ、ボスのようです」
「了解。ボス発見だ。準備の最終確認をしてくれ。何かミスると命を落とすぞ」
「了解」
魔法の射程圏内、チャミさんの魔法を受けて。皆が配置に着く。父上の合図で戦闘開始。
僕は早速3つの頭を凍らせる。動きが鈍ったようだ。今のうちにと心臓付近も凍らせる。これも効果があるようだ。隙をみてアスカが連続突きを打つ。驚いたことにボスは光の粒となり消えてしまった。あまりのあっけなさに、喜ぶどころか皆が唖然として何も言えない。なんだか僕は悪いことをしてしまった気分。
戦闘後の休憩?そんなもんいらない!という雰囲気の中、僕とリサさんは水を配る。配り終えたところでアスカの隣に腰かける。
「アスカ、討伐おめでとう」
「はい、ありがとうございます。旦那様。でも少々気が抜けてしまいました」
「何言っているんだアスカ!33階層のボスなんて倒して当然じゃない。王国内のこれだけの人が集まって、苦戦してたら恥ずかしいでしょ。まだまだ下の階層に行くのが目的なんだから、気合を入れてもらわないと困るよ!」
僕はわざと大声でアスカに気合を入れる。もちろん皆に聞こえるように。周りの皆も確かにそのとおりだなとなって、少しはやる気を取り戻してくれた。父上も立ち上がって話し出す。
「グランのいう通りだ。俺たちが32階層のボスと33階層のボスはザコだと証明したんだ。まだ手こずってる他の国にも教えてやって、感謝されればいい」
父上の言葉で、皆も納得した。
「ただ、33階層のボスを始めて倒した祝いはしない訳にはいくまい。明日は休養日とする。さっさと野営地まで移動して、休暇を楽しんでくれ」
これには皆も大喜びだった。
皆が気が抜けているようなので、ここで昼食になった。いつものように準備して、皆が食事を食べ始める。僕とアスカも適当なところに腰かけて食事を始めた。気になったので、リサさんの様子を見ると、普通に食事をしているようだった。
「旦那様、どうかされましたか?」
「リサさんの体調はどうかなと思ったから。普通に食事はしているようだから、大丈夫みたいだね」
「確かに心配ですね。リサさんが体調を崩すなんて初めてのことですから」
「明日はゆっくり休んでもらって、体調を万全にしてもらおう」
食事を終えた僕はダイヤモンドを複製して、1つをリサさんに預けておくことにした。
「リサさん、この石持っていてください。魔力の回復や魔力の流れに良さそうですから。心配しなくても同じ石をもう1つ持っているので、僕の分もあります」
僕はリサさんに自分の石も見せる。リサさんはしばらくどうするか迷ったようだけど、素直に受け取ってくれた。
「うん、2つあるなら1つ借りておく。王都に戻るまで借りておくわね。その代わり、杖の方はばっちり教えてあげる」
「はい、楽しみにしてます」
やはり、リサさん。かなり悪いようだ。気になる。




