79話 昼から酒盛り?
大人数のパーティーが無事に32階層入り口近くにたどり着く。すぐに野営の準備が始まる。食事の準備は昼食の準備だが、晩酌の受付はもう始めた。食事がいき渡ったところで、僕は皆にお願いした。
「皆さん、今日のシャワーは昼食後にしていただけますか?私も深酒したいので」
すると皆が大笑いしながら了解と言ってくれた。
食事が終わって、後片付けも終わる。僕はシャワー希望者を募ると今日は少ない。もう多くの人が飲む気満々なのだろう。希望者にきてもらって、早速シャワーを浴びてもらった。今回は1組だけで終了。女性の手伝いに行く。女性のシャワーが終われば、僕もシャワーを浴びる。さっぱりして戻ると、もう酔って眠り込んでる人もいる。リサさんと相談して、夕飯は希望者の分だけ作ることにした。2回目の晩酌受付をすると、大勢の人が希望した。この後に飲むお酒が無くなっても知りませんよ!
アスカとお酒を飲むか話して、昼間はお菓子とお茶にすることにした。晩御飯の支度がまだ残っているからだ。お酒を飲むのは夕飯の後にすることにした。アスカに申し訳ない気持ちもあったので、僕が買ってきた大きなチョコレートケーキを出すことにした。フォークを2つだして、ちょこちょこつまみながらお茶を飲む。ダンジョンとは思えない優雅な時間。そう考えるとちょっとビビってサーチの魔法で確認してみた。周りに何も見えなくて安心。ケーキを頬張る。
僕はダンジョンに来てすっかりサボっていた、ダイヤモンドを育てる作業をすることにした。小さなダイヤモンドを左手に持ち、右手に複製を作る。あれ、屋敷で複製を作ったときはあんなに苦労したのに、ここでは魔力を全然使わない。僕は2つの小さなダイヤモンドを魔法で溶かして1つにしてしまう。そして1つにしたダイヤモンドを複製。うん、魔力をあまり使わない。ダンジョンの中にはダイヤモンドがあるということなのか?
「アスカ、ダイヤモンドって石を知ってる?」
「聞いたことはあります。固い石なんですよね」
「うん、どうもダンジョンの中にはダイヤモンドがあるようなんだ」
「ダイヤモンドは何かの役に立つのですか?」
「エコで調べても、詳しいことは分からなかった。でも、杖についている石と性質が似ているらしいんだ。だから屋敷で複製を作っていたのだけど、とても魔力量を使って大変だった。でも、ダンジョンで同じことをしたら、ほとんど魔力量を使わないで済む。ダンジョンは魔法にかかわることが多いみたい」
「旦那様はダイヤモンドで何か作るのですか?」
「杖の石と同じような性質なら、自分用の杖を作りたいと思っているよ。それもダイヤモンドだけでできた杖。魔法なんて使いたい放題になるかもしれないよ」
アスカと久しぶりにのんびり話せて楽しかった。でも、そろそろ晩御飯のしたくをしないと。
「アスカ、そろそろ晩御飯の支度を始めようと思うのだけど」
「皆さん、のんびりされているので、私がお手伝いします」
「ありがとう、それじゃ今夜は2人で支度しようか」
僕とアスカは立ち上がり、晩御飯を食べるか聞いて回る。ほとんどの人が食べないとのこと。夕食を食べるのは僕たちを含めて5人だけ。かまどを2つ出す。スープを温めだして、メイン料理の鍋から5人分だけ取り出し、すぐにリュックにしまってしまった。メイン料理をフライパンで温めて、お皿に乗せていく。パンをお皿に2つずつ乗せていき。スープが温まったところでスープをよそう。これで料理の準備は終了。
料理を食べる人が5人だけなので、テーブルで5人で食べることになった。セルシスのガノさんは料理担当も引き受けてくれた男性。同じくセルシスのアサさんはパーティーの時に挨拶に来てくれた女性だ。そしてLHのガンダさん。LHの副リーダーではないかと思う。今回のダンジョン攻略は食事も豪華で、おまけに自分たちの好きな物をいくつでも持ってこれて、本当に快適だと喜んでくれた。お酒を飲まない人はダンジョンで間が持たなかったとも話してくれた。魁は少数精鋭でササっと行ってササっと帰ってくるスタイルのダンジョン攻略だけど、他のクランは大勢の人が物資を運んで、何日もかけて安全を確認しながらダンジョンを進んで行くそうだ。なので、お金もかかれば期間も長くなる。下層の攻略は年に1度するかしないかだそうだ。33階層のボスを倒して戻ってくるのを35日の予定で組んでいる今回の攻略が、最初は冗談だと思っていたらしい。
食事が終わったので、僕とアスカは紅茶とケーキを、食事をご一緒した皆さんにご馳走することにした。皆はダンジョンでの紅茶とケーキに驚きながらもとても喜んでくれた。機会があれば、またダンジョンでお茶会をしましょうと言って別れた。
僕とアスカは食器の後片付けをして、今夜の作業は全部終わった。少しだけお酒を飲むことにして、おつまみにチーズを出した。お酒はいつものワインにした。アスカは僕と会う前はワインをほとんど飲まなかったと聞かせてくれた。僕がワインばかり飲むのが意外だったようだ。でも、今ではアスカもすっかりワイン党になってしまったらしい。僕は僕の知らないアスカを知れて嬉しかった。僕はテーブルの下で、こっそりアスカの手をつなぐ。アスカは驚いた顔をしたけど、にっこり嬉しそうにしてくれた。
「ごめんね、アスカ。どうしても手をつなぎたくなっちゃった」
「いいですよ、私も旦那様と手をつなぎたかったですから」
しばらく手をつないだまま、ワインを飲んでおしゃべりしていた。でも、きりがないので、もう寝ることにした。ダンジョン攻略中だものね。おやすみ、アスカ。




