77話 魔法士大活躍?
翌朝も食事と片付けを終えたところで、皆の出発準備が整う。いよいよ出発となってところで父上が皆に確認を始める。
「皆のボス戦の経験について確認させてくれ。32階層のボス戦を未経験な者は手を上げてくれ」
何人かの手が上がる。
「では、31階層のボス戦を未経験な者は手を上げてくれ」
まだ、何人かの手が上がっている。
「では、30階層のボス戦を未経験な者は手を上げてくれ」
これは誰も手を上げていない。いえいえ、僕1人だけです(汗)
「今日は進めるだけ進む予定だ。よろしく頼む」
「了解!」
父上の指示通り、先を進むことを優先したサーチになっている。それでも僕の視界に入った魔獣とは戦い倒して進む。
昼食の指示が出たのは28階層入り口近くの27階層。もう僕と調理担当の間で阿吽の呼吸のような物ができていた。調理も片付けもどんどん時間短縮がされている。おかげで僕とアスカの負担はかなり改善されてきた。今日は昼食後の休憩もそこそことれていた。
午後も先へ進むことを目標にしていたが、28階層のボスと遭遇。ただ、皆はラッキーと思っているようだ。このボス戦をきっかけに、前衛チームも全チームが戦闘に参加することになる。僕は魔法士の人たちと合流し、アスカは父上とチームを組んで前衛中央を担当している。
リサさんが目くらましの魔法を発動した後、僕とヒナノさんは頭部への攻撃魔法を繰り返し発動した。あまりダメージを与えているように見えない。僕はしばらく魔獣の動きを観察する。
「リサさん、土を溶かす魔法いけますか?」
「ええ、詠唱する?」
「リサさんが左足で、私が右足。範囲を狭く、その代わり深くでお願いします。私が合図を出します」
僕は敵の動きを見て、力を溜める動作を見切った。
「リサさん!」
僕とリサさんが同時に土を溶かす魔法を詠唱。ボスは体のバランスを崩すことで、溜めた力を失う。前衛の数人からナイスとお褒めの言葉が出る。これをきっかけに前衛チームも攻撃チームもラッシュをかける。ボスが光り消えていく。ランゼンさんが戦利品を届けてくれて、ナイス支援と後衛チームを褒めてくれた。
僕とアスカは水差しを持って皆に水を配って回った。そして僕とアスカも地面に座ってひと休み。
「旦那様の魔法は効果的でしたよ」
「アスカと立ち会っていたからか、どのタイミングで魔法を詠唱すると効果的か分かったんだ」
「この後のボスは剣士のような動きをするので、旦那様の訓練の成果が出せますよ」
休憩が終われば、また進み始める。敵と戦いながらも順調に進み29階層に降りた。サーチで確認すると、またボスだと思われる光。おまけに離れてはいるものの、普通の魔獣も見えた。
「父上、アスカ、魔獣が2体見えますが、その内の1体はボスのようです」
僕はその方向を指さす。
「こちらがボスです。たぶんボスの方が遠いです」
そしてもう一方を指さす。
「こちらが普通の魔獣です」
「了解、近い方から片付ける。皆、進むぞ」
「了解」
見立てのとおりで魔獣だった。いつもの手順で戦闘を始める。あっという間に倒してしまう。戦利品を受け取る。
「次はボス戦だ。ポーションの確認をしておけ」
「了解」
すぐにボスへ向けて進みだした。だんだん姿が見えてくる。やはりボスだった。ここでも手順に従い戦闘を始める。リサさんが目くらましの魔法を詠唱。ヒナノさんは火の玉を放つ。あれ、燃えてないか?それなら弱点の辺りを燃やしてみよう。僕はサーチで魔石の位置を確認。
「ヒナノさん、魔獣の心臓の辺りに火の玉をお願いします」
「了解」
ヒナノさんは指示通りに胸のあたりを燃やしてくれた。そして、僕が魔法の手の糸を詠唱。少しずつ魔力を込めると30%程度の魔力量の消費で魔石を壊せた。前衛の皆は突然魔獣が消えて驚いていた。リーダーの3人が後衛のところに走ってきた。
「何をした?」
「今のボスは火に弱かったんです。なので、魔石に近い位置をヒナノさんの魔法で燃やしてもらって、私の遠隔攻撃で倒せました」
「おいおい、大発見だぞ。29階層のボスは討伐が簡単だってな」
後衛の皆でやったぜ!と大喜びした。
僕とアスカは水を配って回る。そして僕とアスカも水分補給。
「旦那様、大手柄でしたね」
「後衛の人たちが優秀だから、後衛も攻撃のレパートリーが豊富なんだよ。僕も火の玉の魔法は練習しておかないと」
休憩が終わって、前進が再開される。29階層は敵との遭遇がほとんどなく、30階層入り口にたどり着いた。また、リーダー3人が相談していたけど、今夜はここで野営になった。
いつものように食事とシャワーを済ませる。最後の預かり荷物の手渡しが終わり。後衛チームとアスカが集合。今日の活躍を祝して乾杯した。皆さんがいい気分でお酒を飲んでいたせいか、かなり酔っているようだ。魔法士の待遇が悪いとか酷いとか愚痴り出した。それも大きい声で。僕とアスカは困った顔をしながらお酒を飲んでいた。愚痴を聞いているなら早寝したい!
僕とアスカはつまみを取りに行くふりをして逃げだした。何と前衛の人たちもかかわりあうと面倒だと思ったのか、このテーブルの周りは誰もいなかった。もしかして、皆さん慣れっこなのかな?僕とアスカはようやくテント入り口まで逃げてきて、おやすみと言い合いながらお互いのテントの中に入っていった。




