75話 20階層のボス
ダンジョン攻略2日目の朝食。調理担当の人に鍋を渡して固形燃料に火をつける。調理をお願いしたら、僕とアスカはテントとベッドの片付けに向かう。今回の野営は快適なのと、その分を裏方が忙しそうにしているのが認識されたのか、手伝いを申し出てくれる人が増えた。王国最強のアスカが裏方として忙しくしているのもあるのかも。天幕の片付けもお願いできて助かりました。
水差しの水を入れ替えて、各テーブルに置いて行く。調理担当はテーブルに持って行くのをやめて、名前を呼んで取りに来てもらう方法に変更したようだ。皆が食べ始めたのを見て、僕は空の寸胴鍋をいくつか置いた。そして、皆にゴミはこの鍋の中に捨ててくださいとお願いした。ダンジョンの中でもゴミのポイ捨てはダメ!
食事が終わると、前衛の人たちは防具を着けたり準備をはじめた。僕は鍋や食器を洗って乾燥までした。終わったものは調理担当に渡して、個人ごとの袋に入れてもらった。その間にテーブルとイスが片付けられてきて、後はリュックに詰めていくだけだ。アスカにも自分の支度を始めてもらう。僕は荷物を次から次へとリュックにしまう。忘れ物がないか確認して、野営は無事に終了。アスカも軽装を着けて戦闘準備完了のようだ。
僕とアスカが父上のところに行くと、サーチと遠隔攻撃をセルスさんとランゼンさんにも見せておきたいと言われ、昼食前はランゼンさん。昼食後はセルスさんが同行することとなった。アスカは僕の護衛らしい。
「ランゼンさん、よろしくお願いします。肩を借りますね」
「グラン、アスカ、よろしくな」
「はい、よろしくお願いします」
こうして2日目がスタートした。
予定では20階層入り口近くの19階層で昼食の予定だったが、昼食を食べるには早すぎる時間に到着してしまった。休憩だけしてこのまま進むことになった。僕は水差しに水をいれ、水が欲しい人にはマグカップを用意してもらった。アスカも手伝ってくれて、2人で水を注いで回る。僕とアスカも水を飲んで一息ついた。自分の水筒に水を入れたいという人が何人かいたので、僕は魔法で水筒に水を満たして返した。
僕とアスカが前の方へ移動すると、今度はセルスさんが同行するようだ。
「セルスさん、よろしくお願いします」
「よろしくな、グラン。肩を貸せばいいんだな」
「はい、手を乗せさせていただきます」
出発の号令で進み始めた。20階層に降りてしばらくすると、大きな光が見えた。たぶんボスだ。僕は指さす。
「セルスさん、アスカ、たぶんボスがいます」
セルスさんとアスカはまだ認識できないようで、もう少し先へ進んだ。そして見えてきた。やはりボスだった。
「どうします?3人で戦いますか?目くらましなら使えますけど」
「セルスさんと2人なら、問題はありません」
「ああ、では倒してしまおうか」
僕の目くらましの魔法をきっかけに、2人がボスに切り込んでいく。僕も顔を狙って糸の攻撃を続ける。幸いあっさり両目を潰せた。そしてアスカの突きで魔石も破壊完了。2人が戦利品を拾って戻ってくるので、僕はリュックに戦利品をしまう。
「魁はいつもこんな感じか?」
「私は父上とアスカと3人でダンジョンに来ただけなので、詳しくはしりませんが、私が参加したときにはそうでした」
「クランによって、戦い方も様々なんだな」
僕たちはそのまま先へ進むことになった。その後も発見と討伐を繰り返し、昼食は22階層入り口近くの21階層で取ることとなった。
皆さんが昼食はイスとテーブルはいいよと言ってくれて、負担を軽減してくれる。僕はかまどと鍋と固形燃料、それと調理用の道具を出してかまどに火をつける。調理に使う分のテーブルだけをだして、皆の食器と水差しもだし、水差しには水を満たした。そして最後に食器の片付け用の鍋とゴミ捨てようの鍋を置く。
名前が呼ばれはじめて、徐々に食事がいきわたる。皆が地面に座ったり、石に腰かけたりしながら昼食を食べていた。僕とアスカも平らな地面に腰かけて昼食を食べ始めた。
「20階層までは近衛兵団がボスを討伐するんだよね?」
「はい、ですから冒険者が討伐した場合、近衛兵団へ報告する意味で杭をさしてきます。近衛兵団の方は魔道具を使うと、その杭がフロア内にあるかどうか知ることができるようです。今回はセルスさんが立ててくれました」
「冒険者は皆、その杭を持っているの?」
「いいえ、杭を持っていない人が討伐すると、近衛兵団の人を探して報告する必要があります。ですので、杭を持っていない人は、ボスに手を出しません」
食事を終えて後片付け。鍋とかまどを先にリュックにしまっってしまう。食器を片づけますと皆に宣言して、食器を洗い始める。乾燥までして調理担当へ渡す。調理担当の人は個人ごとの袋に食器をしまい、すべてをしまった袋は僕の近くのテーブルに置いてくれた。僕はその袋をリュックにしまっていく。この辺も効率よく改善されてきた。最後に鍋とテーブルをリュックに入れれば昼食終了。
出発まではもう少し時間があるようなので、僕とアスカは座って休憩。前衛の人はごつごつした鎧を着始めて大変そうだ。魔法士は楽ちんです。
皆がそろそろと立ちあがり始めたので、僕とアスカも最前列に歩いて行った。セルスさんが待っていてくれた。ホバーの魔法をかければ準備完了。出発です。




