73話 将来はどうなる?
キキさんから最後の料理を受け取った。キキさんにお願いしてリイサさんにお店に降りてきてもらった。リイサさんに支払いを済ませ僕とアスカは2人にお礼を伝えた。厨房の人たちにもお礼を言って、店内のテーブルに座る。キキさんがランチとケーキとお茶を持ってきてくれた。特別なおまけですね!
「アスカ、ずっと僕の手助けをしてくれてありがとう。これですべての準備は完了。食事を終えたら父上のところに報告に行くよ」
「旦那様、お疲れさまでした。すごく頑張られていましたね」
「うん、これでアスカとバトンタッチ。いよいよダンジョンだ。アスカが頑張って、僕がサポートする番だ」
食事を終えて父上の屋敷に向かう。門をとおり玄関を開ける。
「こんにちは。父上はご在宅ですか?」
「ああ、居間に来てくれ」
僕とアスカが居間に行くと、父上は報告書を書いていた。
「どうした、2人そろって」
「父上、ダンジョンへ行く準備がすべて整いました」
「そうか、グランもアスカもご苦労だったな。セルスとランゼンにも伝えておこう」
「お父様、いよいよ33階層のボスが倒せます」
「ああ、今回は間違いなく倒せる。何階層まで進めるか楽しみだ」
アスカも父上もテンションを上げてきているようだ。僕は戦うより野営の作業が円滑に進むかの方が心配なんだけどね。
「父上、教えていただきたことがあります」
「ああ、何でも聞いてくれ」
「もし、私とアスカがダンジョンから戻ってこれなかった場合、セリエさんはその後、どう生活されていくのでしょう?」
「うむ、グランはそんなことまで考えていたのだな。俺の場合について話しておこう。俺が死んだ場合、俺の財産は、アスカ、兄上、孤児院、セイラさんに4分の1ずつ渡るようにしている。これは国務院に死後のことを登録しているからだ」
するとお茶を入れてきてくれたセイラさんも話しを聞かせてくれた。
「グリムさんに何かあったときには、このお屋敷からは出ていくことになります。王都に住むと思いますが、家を借りるか買うかします。セリエは一緒に住むことになるでしょう。グリムさんからはそのくらいのお金は残していただけると聞いています」
「父上でも、アスカでも、私でも、誰かしら生き残れば、セイラさんもセリエさんも困らせることはしません。3人に何かあっても困らないと思っていていいのですね?」
「はい、私もセリエも生活していけます。心配はいりませんよ」
「私もアスカも登録しておいた方がいいですか?」
「お前たちはこれから家族も増えていく。そんなに急ぐ必要はないだろう」
「孤児院のことも心配です」
「グラン、そう焦らなくてもいい。俺が細々支えていたが、グランも協力を申し出てくれた。善意の人が必ず現れて、子供たちを守ってくれる。人を信じるんだ。それにグランは子供たちが自分たちで食べていける道筋を作ろうとしているのだろう?ヒビキさんからお礼を言われたぞ」
「私は将来、孤児院から仕入れたものを販売する店を開けたらと思ってます。その手始めに働けば報酬を得られ、孤児院の生活が安定したり豊かになったりすることを知って欲しかったのです。まずはダンジョン攻略の仕入れの一部を孤児院から仕入れられるようにパンを焼くことを覚えてもらうことにしました」
「俺も協力した方がいいか?」
「いいえ、父上は父上のできることで孤児院を支えてください。私は私のやり方でやってみます。何かしらでも軌道にのれば、それだけ孤児院が安定するでしょうから」
「アスカは頼りになる旦那を見つけてきたな」
父上の屋敷を出て屋敷に戻る。ダンジョンに行くまでの間は休暇にするつもりだったので、僕はエコで調べ物をすることにしていた。アスカは編み物がしたかったらしく、セリエさんとライザさんのところへ行っていろいろ買ってきていた。居間のテーブルに2人で座って、僕はペンと紙でメモを取り、アスカは黙々を編み物をする。たまにセリエさんがアスカの様子を見にきて、いろいろアドバイスをしてくれていた。
『エコ、白結晶石に似た性質の石はある』……『いいえ、白結晶石は俗称で、石を特定できません』
ええっ、白結晶石が俗称。では杖の石は何?
僕は杖を手に持ち、石をじっと見た。
『エコ、僕の見ている石を鑑定して』……『はい、ムーンストーンです』
『エコ、ムーンストーンと魔力量の関係について書かれている文献はある』……『いいえ、該当しません』
『エコ、ムーンストーンについて書かれている文献はある』……『いいえ、該当しません』
おかしい。文献がないのになぜムーンストーンと認識できているんだ?
『エコ、ムーンストーンについて書かれている文献は削除されたの?』……『はい、削除されました』
『エコ、ムーンストーンに性質が似ている石はある?』……『はい、ダイヤモンドです』
『エコ、ダイヤモンドについて書かれている文献はある』……『1ページ該当しました。見終える時は終了と送ってください』
頭の中にページのイメージが浮かび上がる。これは鉱石について書かれた解説書かな?色は様々だけど、無色透明が高価らしい。固くて加工ができない。王国内でも少量取れる。
『終了』
僕はリュックの中を確認すると……あった!しかし、取り出してみるととても小さい。僕は複製してみることにした。何とか複製することができた。ただ、魔力量を大量に使う。ミスリルどころの話しではない。これはコツコツ大きくしていくしかないな。
こうして、効果のほども分からないけど、石を大きくすることも日課に加わりました。




