71話 別荘見学
僕とアスカは忙しいながらも平穏な日々を過ごしていた。ダンジョンに行くための準備はもう僕の手を離れて、人が動いてくれたものの確認が主となっていた。そんなある日、マイルさんの店の人が伝言を伝えに屋敷にやってきた。都合のよいときに店に来て欲しいとのことだ。僕は明日の午前中に伺いますと伝えてもらった。
そして翌朝、僕とアスカは朝食を済ませると、早速マイルさんの店に行くことにした。
店に入るとマイルさんが待ち構えていた。
「別荘を建てるにあたり、実際の物件を見て欲しいと言われました。同じ物件を貸別荘として使っているそうなので、1泊無料で貸し出すので見てきて欲しいと頼まれました。いつなら行けそうですか?」
僕はアスカと相談して、日程を決める
「マイルさん、早速ですが明日に行かせてもらいたいです」
「はい、明日なら大丈夫です。これが地図で明日の入室許可はだしておきますから、そのまま行って利用してください」
「はい、ありがとうございます」
こうして明日は別荘に行くことになった。問題は明後日のキキさんへの食材の納品。キキさんと相談して決めますか。僕たちは市場へ寄って、明日の別荘での食料を調達してからリイサさんの店に向かった。いつものようにキキさんと倉庫へ行って、料理の受け取りと食材の納品を済ませた。
「キキさん、明後日はこちらに来れなくなったのですが、明日は2日分の食材をお渡ししてもいいですか?」
「はい、それで問題ないです。しかし、いつもお2人は忙しいですね」
「いえいえ、今回は半分遊びみたいな気楽なお出かけなので」
僕とアスカはランチを食べてから屋敷に戻った。セリエさんを探して、明日から別荘地に行って1泊してくると伝えた。
この日はこの後のんびり過ごすことにして、明日に備えて早めに就寝となった。
翌朝もいつものように過ごし朝食を済ませ、すぐに外出した。いつもより早い時間だけど、キキさんのところへ行って料理の受け取りと2日分の食材の納品をした。
これでいよいよ別荘地に出発。アスカが門の近くで馬を借り、門で守衛さんに挨拶をしてから馬にまたがり出発した。
今日は少し急いでいた。明るいうちにたどり着いて、まずはガデンさんの別荘を見せてもらうためだ。お昼の休憩も、馬に水をやって僕たちも食事をとるだけで、すぐにまた移動を始めてしまった。そのおかげで、かなり早い時間に別荘地に到着。ガデンさんから受け取った地図をアスカに渡し、道案内をお願いしながら道を進む。そして僕とアスカは少し不安になってきた。はっきり言って高級別荘地なのだ。どの別荘も敷地も建物も立派だ。ちょこんと庶民向けの別荘が建っているとはとても思えない。
そしてようやく地図に書かれていた場所にたどり着く。やはり周りの別荘と比べても遜色ない、立派な別荘がそこにあった。庭は途中からなだらかな下りになっていて、そのまま湖畔につながっている。きっと湖畔までがここの敷地なのだろう。
2人で馬を降りて、とりあえず建物の周りを1回り歩いてみた。外見は建て替えるほどの古さを感じなかった。では、中に入ってみよう。ドアは何事もなく開いた。中に入ると玄関は広い。右側に居間があり、さらに先に食堂がありと高級住宅仕様だ。食堂の先の厨房も広かった。そしてその先に倉庫があった。僕たちは玄関に戻って今度は左側、がらんとした広い部屋だ。きっと趣味の部屋なのだろう。その先はお風呂だった。お風呂も湯船がとても大きい。僕はここまでくるとうすうす感ずいている。この作りは母さんと住んでいた静養所にそっくりな作り。ということは、ガデンさんはお貴族様出身!静養所と同じ3階建てということで、2階は使用人のフロアで、3階がお貴族様家族の専用フロアという形式か?行ってみると僕の予想のままだった。そして肝心の3階は、大きな部屋ばかりだった。どの部屋も同じ作りの部屋で、もちろん隣の部屋はお金持ち仕様のクローゼット部屋がある。
僕とアスカはとりあえず建物の外に出た。そして改めて建物を見る。
「アスカ、はっきり言って、このままで十分使える。それにこの別荘は僕の予想だとお貴族様仕様の別荘だ。まずは僕たちがここを自分たちの別荘にしていいのかから確認した方がいいかも」
「そうですね、この立派な建物を壊して、庶民の別荘を建てるのは、無理だと私も思いました」
「すべてはガデンさんと話してからだね。今日泊まる貸別荘に行こうか」
「はい、旦那様」
僕たちは再び馬に乗る。アスカに地図を見てもらって馬を走らせた。アスカの見立てによると、距離がかなりあるらしい。周りに人がいない場所では、馬は走らせたままにしよう。
馬を急がせていたからかアスカの指示によると別荘までもうすぐなようで、僕たちはようやく馬をのんびり歩かせた。ガデンさんの別荘とは違って、こちらは一般のお金持ち用の別荘といった感じ。大きい建物もあれば、小さな建物もある。敷地も大小さまざまだ。そしてアスカのここですの声で馬を止めた。普通にいい感じのこじんまりした別荘だ。僕のイメージしていた別荘は、もちろんこちらに近かった。
馬を降りて、馬を馬小屋に連れていく。水とエサをたっぷりあげて、僕とアスカは別荘の中にはいった。玄関を入って右の廊下。ソファーが置かれている居間があり、その隣が食堂。そして隣が厨房。玄関に戻って左側に進むとがらんとした部屋と先にお風呂があった。もちろんどれもこじんまりとしている。2階に上がると部屋が6つあった。どの部屋もベッドとちょっとしたテーブルが置かれていた。
「どの部屋も同じだね。階段近くの部屋でいいかな?」
「はい、そうしましょう」
僕とアスカは、まずは着替えてからということにした。




